人口の健康・疾病構造の変化にともなう複合死因の分析手法の開発とその妥当性の評価のための研究

文献情報

文献番号
202002006A
報告書区分
総括
研究課題名
人口の健康・疾病構造の変化にともなう複合死因の分析手法の開発とその妥当性の評価のための研究
課題番号
20AB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の死亡統計である『人口動態統計』は、死亡診断書に記載された複数の死因をもとに、WHOが定める方法により「原死因」を一つに特定し、これを掲載している。しかし現代では同時に幾つもの疾病を罹患していることは珍しくなくなっており、死因を一つに限定することで疾病・死因間の関連など逆に見えなくなる情報も存在する。こうした複数の死因(複合死因)に関する人口ベースのマクロの研究は、データが得られなかったこともあって我が国ではほとんど行われていない。本研究は、原死因を決定する以前の死亡診断書データ(死亡個票データ)を用い、そこに記載されている各死因を用いた分析手法を探るとともに、分析結果の妥当性について評価し、長寿化を進展する要因を複合死因の視点から分析を試みる。
研究方法
死亡診断書に記載されている各死因等の情報は、既存の死因統計などによって公表されていない。そこでこれら死因情報等を得るため、統計法に基づき人口動態統計の死亡票および死亡個票(死亡診断書を転記したデータ)について二次利用申請を行った。提供されたデータのうち死亡票はクリーニングされコード化されているが、死亡個票データは厚生労働省にオンライン登録された時点におけるテキストデータとなっている。このため、死亡個票データのうち「死亡の原因」欄と「発症から死亡までの期間」欄の2種類について独自にクリーニングを施したのち、各死因欄はICD-10対応標準病名マスターで定義されている病名交換用コードおよびICD-10コードに、期間欄は日数に変換を行った。
結果と考察
コード化した複合死因データを死亡票とマッチングを行った結果、オンライン登録が始まった2003年では9%弱にとどまっていたが、オンライン登録の広がりとともに割合も上昇して2007年には50%を超え、2019年には死亡票の99%とマッチングを行えた。また死因欄別の記載状況は、特に直接死因であるⅠ欄アでは空欄の件数が極めて低いことから、多くの死亡において少なくとも一つの死因は分かる状況といえる。死亡票とマッチングさせた死亡個票における各死因欄のデータを見ると、死因欄には複数の死因が記載されているケースも見られた。死因欄に関係なくコード化された死因が2つ以上ある死亡の割合を求めると、全年次とも47~56%であり、全体の約半数について何らかの複合死因分析が可能である。原死因を含めた複合死因を用いて隣接行列を作成した結果、他の死因と深く関係している死因と、そうではない死因がみられた。前者は腎不全、糖尿病や敗血症、高血圧性疾患であり、後者は悪性新生物や肝疾患などである。また、心疾患や老衰は、他の原死因の複合死因となることが多いことが示された。血管性認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病は老衰、肺炎、誤嚥性肺炎を複合死因に持つことが多く、一つの複合死因関連パターンを形成していた。レビューの結果、近年ではネットワーク分析を応用した複合死因間の関係分析研究が始められていることから、ネットワーク分析の概要についてもレビューを行った。死因のコード化には病名マスターを利用しているが、カバーされない病名表記は独自の変換表を用意して対応した。この結果、全ての年のデータについて、95%以上の死亡個票についてⅠ欄に少なくとも1つのICD-10コードが付与された。しかしこのマスターと変換表でもまだカバーできていない範囲があり、今後改善が必要である。
結論
コード化された死亡個票データを死亡票とマッチングさせたところ、コード化された死因が2つ以上ある死亡の割合は5割ほどであり、したがって死亡全体の約半数について何らかの複合死因分析が可能となる。本研究では、ICD-10対応標準病名マスターで定義されている病名交換用コードおよびICD-10コードに、期間欄は日数に変換を試みた。入力されているデータが複雑であるが、これらのデータを効率的に活用できるような方法をさらに検討したい。複合死因研究は国際的にもまだ開発途上であり、本研究の進展が貢献できる余地は小さくないといえよう。本研究を進めることにより、死亡診断書データのさらなる有効活用や人口動態統計の集計表の充実や分析の高度化など、将来的な公的統計に関する企画・立案に貢献できるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2021-10-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-10-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202002006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,700,000円
(2)補助金確定額
3,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,341,064円
人件費・謝金 326,800円
旅費 0円
その他 33,000円
間接経費 0円
合計 3,700,864円

備考

備考
自己資金:864円

公開日・更新日

公開日
2021-10-20
更新日
-