文献情報
文献番号
202002003A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国におけるICD-11コーディング導入に関する問題点の抽出と解決及び先進国における疾病統計に係る情報分析
課題番号
19AB1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
末永 裕之(一般社団法人日本病院会執行部)
研究分担者(所属機関)
- 須貝 和則(国立国際医療研究センター 医事管理課)
- 住友 正幸(徳島県立三好病院)
- 瀬尾 善宣(社会医療法人医仁会 中村記念病院 診療部 脳神経外科)
- 高橋 長裕(公益財団法人ちば県民保健予防財団総合健診センター)
- 塚本 哲(日本保健医療大学 保健医療学部 看護学科)
- 牧田 茂(埼玉医科大学)
- 松本 万夫(埼玉医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
【ICD-11に係わる研究】
本研究は、まず、わが国におけるICD-11に係わる教育に必要な教材の基礎ができることに意義がある。ICD-11の詳細はWHO-FICのホームページ等で概略は示されているが、一般的に医療従事者の十分な理解を得るまでに至っていない。ICD-11自体も不確定要素が残存しているといわれているが、その基本的構造と利用のコンセプトが決定され、2019年5月のWHO総会で承認された。令和元年度は、この時点での内容をもとに教育的資料を作成したが、3年研究においてブラッシュアップを図る。次に、2017年ICD-11β版フィールドテストが実施されたが、その際には参加者へは事前にICD-11の十分な知識と理解が少なく実施された経緯があった。本研究では、ICD-11をより理解したうえで、より実際的な場面で再検討することが可能であり、ICD-11で新たに導入されるV章、エクステンションコードの有用性を検証することができる。またWHOのICD-11アップデートに寄与することができる。
【先進国における疾病統計に係る研究】
令和元年度はオーストラリアとカナダにおける疾病統計に関する取り組みの現状を調査し報告した。今回、令和2年度研究では対象を他の国々にも広げ、世界における疾病統計の現状とICD-11の導入の準備状況に関する調査分析を行なった。本実態調査は世界レベルの実態調査であり、本邦における疾病統計運用とICD-11導入において寄与することが期待される。
本研究は、まず、わが国におけるICD-11に係わる教育に必要な教材の基礎ができることに意義がある。ICD-11の詳細はWHO-FICのホームページ等で概略は示されているが、一般的に医療従事者の十分な理解を得るまでに至っていない。ICD-11自体も不確定要素が残存しているといわれているが、その基本的構造と利用のコンセプトが決定され、2019年5月のWHO総会で承認された。令和元年度は、この時点での内容をもとに教育的資料を作成したが、3年研究においてブラッシュアップを図る。次に、2017年ICD-11β版フィールドテストが実施されたが、その際には参加者へは事前にICD-11の十分な知識と理解が少なく実施された経緯があった。本研究では、ICD-11をより理解したうえで、より実際的な場面で再検討することが可能であり、ICD-11で新たに導入されるV章、エクステンションコードの有用性を検証することができる。またWHOのICD-11アップデートに寄与することができる。
【先進国における疾病統計に係る研究】
令和元年度はオーストラリアとカナダにおける疾病統計に関する取り組みの現状を調査し報告した。今回、令和2年度研究では対象を他の国々にも広げ、世界における疾病統計の現状とICD-11の導入の準備状況に関する調査分析を行なった。本実態調査は世界レベルの実態調査であり、本邦における疾病統計運用とICD-11導入において寄与することが期待される。
研究方法
【ICD-11に係わる研究】
研究分担者と作問協力者9名により外科系・内科系のコーディングに適したサマリー問題を作成し、令和元年度の講習会を受講した診療情報管理士112名の協力を得て、同問題をICD-10と11にてコーディングを行い評価し、コーディング上の問題点を検証した。また、ICD-11の理解を深めるためウェブ講習会(基礎編のICD-11研修会Ⅰ、応用編のICD-11研修会Ⅱ)を積極的に実施し、それぞれ約1,700名の受講者を受付け、普及啓発を行った。
【先進国における疾病統計に係る研究】
「死亡と疾病統計の現況とICD-11導入計画の各国調査」として調査票を作成し、WHO-FIC、IFHIMA関連の30か国にウェブ方式で調査を実施した。
研究分担者と作問協力者9名により外科系・内科系のコーディングに適したサマリー問題を作成し、令和元年度の講習会を受講した診療情報管理士112名の協力を得て、同問題をICD-10と11にてコーディングを行い評価し、コーディング上の問題点を検証した。また、ICD-11の理解を深めるためウェブ講習会(基礎編のICD-11研修会Ⅰ、応用編のICD-11研修会Ⅱ)を積極的に実施し、それぞれ約1,700名の受講者を受付け、普及啓発を行った。
【先進国における疾病統計に係る研究】
「死亡と疾病統計の現況とICD-11導入計画の各国調査」として調査票を作成し、WHO-FIC、IFHIMA関連の30か国にウェブ方式で調査を実施した。
結果と考察
【ICD-11に係わる研究】
診療録からの病名抽出において、外科系にくらべ内科系において正確度が低く、また、様々な表現が見受けられた問題については、今後何らかの病名の整理と標準化が必要であると思われた。
ICD-10コードの一致率は、内科系にくらべ外科系において正確度が高かった。内科系よりも外科系はより具体的な診断がなされることがその要因と思われた。
【先進国における疾病統計に係る研究】
16か国から回答があった。回答のあった国はベトナム、フランス、ネパール、ラオス、タイ、韓国、ブータン、スウェーデン、インド、ナイジェリア、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、タンザニア、フィリピン、バルバドスであった。
診療録からの病名抽出において、外科系にくらべ内科系において正確度が低く、また、様々な表現が見受けられた問題については、今後何らかの病名の整理と標準化が必要であると思われた。
ICD-10コードの一致率は、内科系にくらべ外科系において正確度が高かった。内科系よりも外科系はより具体的な診断がなされることがその要因と思われた。
【先進国における疾病統計に係る研究】
16か国から回答があった。回答のあった国はベトナム、フランス、ネパール、ラオス、タイ、韓国、ブータン、スウェーデン、インド、ナイジェリア、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、タンザニア、フィリピン、バルバドスであった。
結論
【ICD-11に係わる研究】
ICD-11コードの一致率は、ICD-10コードの一致率と比べて内科系外科系ともに低かった。その理由としてICD-11ではステムコードが多様であり、ステムコード選択に難渋したこと、ポストコーディネーションの付与に対する回答者の理解不足と、ポストコーディネーションの項目選択ルールの不完全さがその原因として挙げられた。
V章に関してはいまだ十分な理解が得られていないことが示された。また症例によるV章コード選択の標準化など診療録記載標準書式の改善が必要であると思われた。
【先進国における疾病統計に係る研究】
疾病統計について、大多数の国で全国的、毎月(一部毎年)ベースの疾病統計が存在する。ICD-11の導入に際しては、ICDの現在使用版からICD-11への切り替えに際してのデータの引継ぎ、及びこれに伴う費用などが各国共通の問題としてあげられる。ICD-11の導入に関わる情報提供、教育などの方針については大多数の国で、未定ないしは計画されていない状況であり、今後の課題である。今回のICD-11が大前提の一つとしてコンピューターベースであり、各国共通してこれらのシステムを整備・保守・管理する上でのガバナンスに非常に大きな課題が指摘される。
ICD-11コードの一致率は、ICD-10コードの一致率と比べて内科系外科系ともに低かった。その理由としてICD-11ではステムコードが多様であり、ステムコード選択に難渋したこと、ポストコーディネーションの付与に対する回答者の理解不足と、ポストコーディネーションの項目選択ルールの不完全さがその原因として挙げられた。
V章に関してはいまだ十分な理解が得られていないことが示された。また症例によるV章コード選択の標準化など診療録記載標準書式の改善が必要であると思われた。
【先進国における疾病統計に係る研究】
疾病統計について、大多数の国で全国的、毎月(一部毎年)ベースの疾病統計が存在する。ICD-11の導入に際しては、ICDの現在使用版からICD-11への切り替えに際してのデータの引継ぎ、及びこれに伴う費用などが各国共通の問題としてあげられる。ICD-11の導入に関わる情報提供、教育などの方針については大多数の国で、未定ないしは計画されていない状況であり、今後の課題である。今回のICD-11が大前提の一つとしてコンピューターベースであり、各国共通してこれらのシステムを整備・保守・管理する上でのガバナンスに非常に大きな課題が指摘される。
公開日・更新日
公開日
2021-10-20
更新日
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