食品中に含まれるアレルギー物質の検査法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200734010A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中に含まれるアレルギー物質の検査法開発に関する研究
課題番号
H17-食品-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部)
  • 塩見 一雄(東京海洋大学海洋食品科学科)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部)
  • 田辺 創一(広島大学大学院生物圏科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定原材料に準ずる20品目の加工食品中アレルギー物質の検知法(検知法)を開発する。適切かつ分かりやすい表示にするための科学的知見を得る。
研究方法
1、検知法;ELISA法とPCR法の開発
2、科学的根拠に基づいたアレルギー物質食品表示法(表示法)に関する研究
1) 水産加工食品中の甲殻類タンパク質の定量、2) エビアレルギー患者に対するアンケート調査、3) アレルゲン分析、4) 乳糖・微量牛乳経口負荷試験、5) アレルギー物質含有食品交換表作成
3、消費者に分かりやすい表示のためのアンケート
結果と考察
1、検知法
1)イカ、サバ、 イクラ、ダイズ、キウイ、クルミ、バナナ、豚肉、牛肉、ゼラチンのELISA法を開発した。エビ、ダイズ、クルミはバリデ-ションでも良好な結果を得た。
2)エビ(カニと区別可能)、カニ、サケ、サバ、ダイズ、キウイ、クルミ、バナナ、牛肉、豚肉、鶏肉に対するPCR法を確立した。
2、科学的根拠に基づいた表示法に関する研究
1)水産加工食品305検体中137検体(海苔、いわし稚魚、すり身、二枚貝)から甲殻類由来のタンパク質が検出された。
2)原材料に甲殻類が使われていないが甲殻類タンパク質が検出される水産加工食品を摂取することで症状を呈するエビ・カニアレルギー患者がいる。
3)アレルゲン分析
魚肉パルブアルブミンは高次構造IgEエピトープが重要である。魚肉トランスフェリンが交叉反応性に関与する症例が存在する。ブラックタイガーのSCP、クロアワビのパラミオシンもアレルゲンである。イクラ、タラコなど魚卵間には交叉反応性が存在する。
4)乳糖・微量牛乳経口負荷試験
牛乳アレルギー患者31人中1人が乳糖負荷試験陽性となった。陽性となる最低量は36μg乳タンパク質量であった。
5)アレルギー物質含有食品交換表作成の試み
クッキー・ビスケットの牛乳タンパク質含量でランクに分けた。交換表は食物アレルギー患者が食べられる加工食品を見つけるために有用なツールとなる。
3、表示法に関するアンケート
表示法の有用性が認められていた。表示義務の変更希望が強い食品としてエビとカニは上位であった。判りづらい表示があるという回答も多かった。
結論
1、検知法の開発が進んだ
2、適切な表示法とするための知見が得られた
3、表示法の有用性が認められていた

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200734010B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中に含まれるアレルギー物質の検査法開発に関する研究
課題番号
H17-食品-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部)
  • 塩見 一雄(東京海洋大学海洋食品科学科)
  • 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部)
  • 田辺 創一(広島大学大学院生物圏科学研究科)
  • 松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー物質の検知法(検知法)を開発する。適切かつ分かりやすい表示にするための科学的知見を得る。
研究方法
1、検知法;ELISA法とPCR法の開発
2、科学的根拠に基づいたアレルギー物質食品表示法(表示法)に関する研究
1) 水産加工食品中の甲殻類タンパク質の定量、2) エビアレルギー患者に対するアンケート、3) アレルゲン分析、4) 乳糖・微量牛乳経口負荷試験、5) アレルギー物質含有食品交換表作成
3、消費者に分かりやすい表示のためのアンケート
結果と考察
1、検知法
1)甲殻類、イカ、サバ、 イクラ、ダイズ、キウイフルーツ、クルミ、バナナ、豚肉、牛肉、ゼラチンのELISA法の開発。エビ、ダイズ、クルミはバリデ-ションでも良好な結果を得た。
2)エビ(カニと区別可能)、カニ、サケ、サバ、ダイズ、キウイ、クルミ、バナナ、牛肉、豚肉、鶏肉に対するPCR法の確立。
3)水晶発振子バイオセンサー法による食物アレルゲン簡易測定法開発
2、科学的根拠に基づいた表示法に関する研究
1)エビ類同士のIgE結合能交叉反応性は十脚目以外の甲殻類と比べると強かった。
2)水産加工食品(海苔、いわし稚魚、すり身、二枚貝)から甲殻類由来タンパク質が検出された。
3)原材料に甲殻類を使わないが甲殻類抗原が検出される水産加工食品の摂取によって症状を呈するエビ・カニアレルギー患者がいる。
4)アレルゲン分析
魚肉パルブアルブミンは高次構造IgEエピトープが重要。魚肉トランスフェリンが交叉反応性に関与する症例が存在する。ブラックタイガーのSCP、クロアワビのパラミオシンもアレルゲンであった。イクラ、タラコなど魚卵間には交叉反応性が存在した。ピーナッツアレルギー患者のIgEはピーナッツ・ナッツ類抗原の比較的固有のアレルゲン成分を認識した。

4)乳糖・微量牛乳経口負荷試験
牛乳アレルギー患者31人中1人が乳糖負荷試験陽性となった。陽性となる最低量は36μg乳タンパク質量であった。
5)アレルギー物質含有食品交換表作成の試み
クッキー・ビスケットの牛乳タンパク質含量でランクに分けた。交換表は食物アレルギー患者が食べられる加工食品を見つけるために有用なツールとなる。
3、表示法に関するアンケート
1) Webサイトを利用したアンケートでは欄外一括表記法が最も望まれていた。
2)表示法の有用性が認められていた。表示義務へ変更することが望まれる食品としてエビとカニは上位にあった。判りづらい表示があるという回答も多かった。
結論
検知法の開発が進んだ。表示法に関する有用な知見が得られた。表示法の有用性が認められていた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200734010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1、食品中のアレルギー物質検査法開発(ELISA法、PCR法)が進んだ。
1)甲殻類、イカ、サバ、 イクラ、ダイズ、キウイフルーツ、クルミ、バナナ、豚肉、牛肉、ゼラチンのELISA法の開発。エビ、ダイズ、クルミはバリデ-ションでも良好な結果を得た。
2)エビ(カニと区別可能)、カニ、サケ、サバ、ダイズ、キウイ、クルミ、バナナ、牛肉、豚肉、鶏肉に対するPCR法の確立。
1)甲殻類、魚類、魚卵、ピーナッツ・ナッツ類の交差反応性の程度やそれに関与するアレルゲンに関して新知見が得られた。
臨床的観点からの成果
1、水産加工食品(海苔、いわし稚魚、すり身、二枚貝)から甲殻類由来タンパク質が検出された。原材料に甲殻類を使わないが甲殻類抗原が検出される水産加工食品の摂取によって症状を呈するエビ・カニアレルギー患者がいる。
2、乳糖負荷試験陽性となる牛乳アレルギー患者が存在した。
3、アレルギー物質食品表示法に関するアンケートでは、表示法の有用性が認められた。表示義務へ変更することが望まれる食品としてエビとカニは上位にあった。判りづらい表示があるという回答も多かった。
ガイドライン等の開発
平成19年3月23日 第32回 食品の表示に関する共同会議
平成20年2月27日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会表示部会
その他行政的観点からの成果
1、エビ、カニの表示義務化にあたり、表示の範囲を決定するエビデンスを提供した。
2、「アレルギー物質を含む食品表示に関するQ&A」の改訂にあたり本研究班で得られた成果が反映された。
その他のインパクト
シンポジウム 食品安全への取組み(平成18年度厚生労働科学研究 食品の安心・安全確保推進研究事業)日時:平成19年2月9日 (神戸市)

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
65件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計14件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsuge I, Kondo Y, Tokuda R, et al
Allergen-specific helper T cell response in patients with cow's milk allergy: Simultaneous analysis of proliferation and cytokine production by carboxyfluorescein succinimidyl ester dilution assay
Clin Exp Allergy , 36 , 1538-1545  (2006)
原著論文2
Akiyama H, Sakata K, Yoshioka Y, et al
Profile analysis and allergenecity of wheat protein hydrolysates
International Achives.Allergy Immnology , 140 , 36-42  (2006)
原著論文3
Teshima R, Okunuki H, Sato Y, et al
Effect of oral administration of CpG ODN-OVA on WBB6F1-W/Wv mice
Allergology International , 55 , 43-487  (2006)
原著論文4
Watanabe T, Akiyama H, Maleki S,et al
A Specific Qualitative Detection Method for Peanut (Arachis hypogaea) in Foods using Polymerase Chain Reaction
J. Food Biochemistry , 30 , 215-233  (2006)
原著論文5
Matsuda R, YoshiokaY, Akiyama H, et al
Interlaboratory evaluation of two enzyme-linked immunosorbent assay kits for the detection of egg, milk, wheat, buckwheat, and peanut in foods
JAOAC , 89 , 1600-1608  (2006)
原著論文6
Tsuge I, Okumura A, Kondo Y, etal
Allergen-specific T-cell response in patients with phenytoin hypersensitivity; simultaneous analysis of proliferation and cytokine production by carboxyfluorescein succinimidyl ester (CFSE) dilution assay
Allergol Int , 56 , 149-155  (2006)
原著論文7
柴原裕亮、岡 道弘、富永桂、他
サンドイッチELISA法を用いた食品中の甲殻類アレルゲンの検出
日本食品科学工学会誌 , 54 , 289-295  (2007)
原著論文8
森山達哉, 光山英由, 矢野えりか, 他
食物アレルゲンタンパク質の近赤外蛍光標識プローブによる検出
日本食品科学工学会誌 , 54 , 468-476  (2007)
原著論文9
Seiki K, Oda H, Yoshioka H, et al
A reliable and sensitive immunoassay for the determination of crustacean protein in processed foods
J. Agric. Food Chem. , 55 , 9345-9350  (2007)
原著論文10
Motoyama K, Suma Y, Ishizaki S, et al
Molecular cloning of tropomyosins identified as allergens in six species of crustaceans
J. Agric. Food Chem. , 55 , 985-991  (2007)
原著論文11
Suma Y, Ishizaki S, Nagashima Y, et al
Comparative analysis of barnacle tropomyosin: divergence from decapod tropomyosins and role as a potential allergen
Comp. Biochem. Physiol. B Biochem. Mol. Biol. , 147 , 230-236  (2007)
原著論文12
Yamakawa H, Akiyama H, Endo Y, et al
Specific Detection of Soybean Residues in Processed Foods Using Polymerase Chain Reaction
Biosci Biotechnol Biochem , 71 , 269-272  (2007)
原著論文13
Yano T, Sakai Y, Uchida K, et al
Detection of walnuts residues in processed foods by polymerase chain reaction
Biosci Biotech Biochem , 71 , 1793-1796  (2007)
原著論文14
Yamakawa H, Akiyama H, Endo Y, et al
Specific detection of wheat residues in processed foods by polymerase chain reaction,
Biosci Biotechnol Biochem , 71 , 2561-2564  (2007)
原著論文15
Taguchi H, Watanabe S, Hirao T, et al
Specific detection of potentially allergenic kiwifruit in foods using polymerase chain reaction
J Agric Food Chem , 55 , 1649-1655  (2007)
原著論文16
Tanabe S, Miyauchi E, Muneshige A, et al
PCR Method of Detecting Pork in Foods for Verification of Allergen Labeling and for Identification of Hidden Pork Ingredient in Processed Foods
Biosci. Biotechnol. Biochem , 71 , 1663-1667  (2007)
原著論文17
Tanabe S, Hase M, Yano T, et al
A Real-Time Quantitative PCR Detection Method for Pork, Chicken, Beef, Mutton, and Horseflesh in Foods
Biosci. Biotechnol. Biochem , 71 , 3131-3135  (2007)
原著論文18
Sakai, S, Matsuda, R, Adachi R,et al
Interlaboratory Evaluation of two enzyme-linked immunesorbent assay kits for the determination of crustacean protein in processed foods
Journal of AOAC International , 91 , 123-129  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-