公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価及びその活用方法等に関する研究

文献情報

文献番号
202001015A
報告書区分
総括
研究課題名
公的医療保険における外科手術等の医療技術の評価及びその活用方法等に関する研究
課題番号
20AA2004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 川瀬 弘一(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
  • 宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
  • 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療の効率化の推進等、将来のあるべき姿を踏まえた技術評価のあり方及び具体的な評価手法を検討することにある。特に外科手術の評価方法について、外保連において議論された新たな評価軸に沿った評価方法や施設症例数を含む医療機関の特性などと医療の質の関係を踏まえた評価の可能性などに着目した。研究班では、データベースなどに記録された情報を用いて実証的に示すことのできる指標を念頭に議論を行い、具体的な実証検討の対象として、2018 年に保険償還されたロボット支援手術における医療の質の評価、そして施設要件と関連する術者経験症例数と手術アウトカムとの関係を選択した。
研究方法
2018-19 年に胃癌・直腸癌・食道癌に対して実施されNational Clinical Datbaseに登録されたロボット手術症例を対象に、術者の経験症例数ごとに患者背景や腫瘍因子との関係を評価した。症例ごとに術者を同定し、術者ごとに手術日の若い順に、1 症例目から最大で177 症例目まで、執刀時の当該手術を含む経験症例数を同定した。経験症例数はその分布を参考に 1-3 症例目、4-6 症例目、7-10 症例目、11-15 症例目、16-25 症例目、26 症例目以上の 6 群にカテゴリー化し、患者背景や術中情報の評価に用いた。一方、アウトカムの評価については、施設基準に基づいて、胃癌と大腸癌では 10 症例、食道癌では 5 症例をカットオフに、それ以下とそれよりも大きい経験症例群との
間で比較を行った。解析では、術者による症例のクラスタリングを考慮に入れ、術者をランダム切片においた階層化ロジスティックモデルで、基準症例以下の経験症例数での手術とそれ以上での経験症例数での手術の成績の CD3a 以上合併症のオッズ比を算出した。
結果と考察
患者年齢やASA-PS といった背景因子については、経験症例数との明確な関連はない一方、胃癌・直腸癌の症例については経験症例数が少ない時期においてはより難易度の高くない術式の割合が多く、また腫瘍径が小さく、リンパ節転移のない症例の割合が多かった。手術時間の中央値は経験症例数とともに明確に減少していった。周術期の死亡は頻度が極めて低く、経験症例数との関連は評価が困難であった。Clavien Dindo 3a 以上の術後合併症を主要な評
価指標とした所、いずれの癌腫に対する手技についても、患者・腫瘍因子を調整する前の発生頻度は、経験症例数が基準値に満たない群とそれ以上の群との間に有意な違いを示さなかった。術者のロボット手術開始早期の症例が適切な患者選択などを通して、一定の安全性のもと実施されていることが示唆された。
結論
学会が主導するプロクター制度、施設認定、その他の認定条件及び症例登録制度などが存在する状況においては、保険診療上の施設基準のみならず、学術団体の取組みなどとの組み合わせで、新たな手術手技の安全性が確保されている。新規に承認をうけた手術手技の安全性を確保する上では、このような複合的なアプローチを議論するとともに、大規模で信頼性の高いデータを用いて適切に評価・調整を行うことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-02-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202001015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,589,479円
人件費・謝金 6,586,501円
旅費 0円
その他 286,020円
間接経費 2,538,000円
合計 11,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
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