食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究

文献情報

文献番号
200734005A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究
課題番号
H17-食品-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 金城 政孝(北海道大学大学院 先端生命科学研究院)
  • 岡田 洋之(独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 村山 裕一(独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 横山 隆(独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 古岡 秀文(国立大学法人帯広畜産大学 畜産学部)
  • 石黒 直隆(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 山本 裕介(北海道立畜産試験場 基盤研究部)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院獣医学研究科)
  • 大西 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院医学系研究科 創生応用医学センター)
  • 山河 芳夫(国立感染症研究所 細胞化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
140,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品を介したBSEの人への健康影響レベルについては不明な点が少なくなく、食品安全対策を検討するうえで困難を来している。そこで、本年度は、食品を介するBSEリスクの解明を目的とした研究として、最新のBSE診断および検査技術に関する研究、BSEリスクの解明に関する研究、佐世保非定型BSE例に関わる研究を行った。
研究方法
分担研究者の詳細な研究方法は分担研究者の報告書に譲る。
結果と考察
新しい病理・免疫組織化学法であるImmunoAT-tailing法のoligo(dA-dT)標識抗体の物性評価と調整法の標準化を行い10倍から100倍の感度増加がみられた。PETブロット法の改良方法が完成した。小型全自動蛍光相関分光法測定装置でQ-dotを用いることで従来のWB法と同程度の感度が得られた。PMCA法でジギトニン法やphase shift法を用いることによりBSEプリオンの増殖が可能となったが100倍程度にとどまった。Tgマウスは8系統得られたが、脳内でウシプリオンの発現は見つからなかった。BSEプリオンのハムスターとのキメラマウスへの伝達試験の結果、一部のアミノ酸変異が種の壁への関与することが考えられた。rMPrPをウシ回腸ループ内に投与し、粘膜固有層のマクロファージの細胞質内に小顆粒状から凝集塊として濾胞間に分布した。プリオン接種マウス脳内に軸索伸長に関わる欠失型CRM-2を見いだした。BSEプリオンの脳内接種牛は発症前8ヶ月で脳幹部にプリオンを検出できた。2頭のサルの髄液中の14-3-3蛋白はサルの神経症状出現100日まえから検出できた。N2a細胞株を用いて異常型プリオン蛋白質の分解に関与する宿主因子、および異常型プリオン蛋白質産生やその阻害に関与する複数の宿主因子の遺伝子を明らかにした。B細胞およびマクロファージ前駆細胞株がプリオン蛋白質を発現保持する能力を持っていた。Hsp90がin vitroでプリオンタンパク質の構造変換を促進することを見出し、これを指標にプリオンタンパク質の一次代謝産物、およびプリオンの産生を抑制する化合物を見いだした。BSEJP24(169ヶ月令の非定型BSE)の種々の動物への伝達試験はいまだ途中経過であるが、従来BSEプリオンよりも短い潜伏期間を示している。
結論
食品を介するBSEリスクの解明に関わる研究の進捗がみられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200734005B
報告書区分
総合
研究課題名
食品を介するBSEリスクの解明等に関する研究
課題番号
H17-食品-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐多 徹太郎(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 金城 政孝(北海道大学大学院先端生命科学研究院 細胞機能科学分野)
  • 岡田 洋之(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 村山 裕一(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 横山 隆(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所プリオン病研究センター)
  • 古岡 秀文(国立大学法人帯広畜産大学 病態獣医学講座)
  • 石黒 直隆(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 扇  勉(北海道立畜産試験場 畜産工学部)
  • 山本 裕介(北海道立畜産試験場 畜産工学部)
  • 堀内 基広(北海道大学大学院 獣医学研究科)
  • 大西 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
  • 堂浦 克美(東北大学大学院 医学系研究科 創生応用医学センター)
  • 山河 芳夫(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 金子 清俊(東京医科大学 医学部)
  • 鈴木 達夫(東京都芝浦食肉衛生検査所)
  • 月川 由紀子(東京都芝浦食肉衛生検査所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品を介したBSEの人への健康影響レベルについては不明な点が少なくないので、 異常プリオンタンパク質の高感度検査法、BSE感染牛由来材料を用いた感染発症機構、牛由来の特定部位の除去および廃棄方法等、めん羊等へのサーベイランス、非定型BSE、牛肉の消費に関する意識調査を行うことにより、食品を介するBSEリスクの解明を目的として研究を行った。
研究方法
分担研究者の詳細な研究方法は各年度の総括分担研究報告書に記載した。
結果と考察
全工程6時間以内で終了する新しい病理・免疫組織化学法を確立し、PETブロット法も確立した。ImmunoAT-tailing法はウシ病理検体での検討が残った。小型全自動蛍光相関法測定装置でQドットをプローブとする方法でWB法と同程度の感度が得られた。PMCA法によってBSEプリオンの増殖は非特異凝集体の形成によって阻害されることが判明したが、完全解決には至らなかった。BSEプリオンのマウスハムスターキメラTgマウスへの伝達性を規定するアミノ酸変異を明らかにした。わが国で摘発されたBSE例で、マウス伝達試験が行えた例は非定型および若齢型BSE以外では伝達が成功した。ウシ回腸からリンパ濾胞間までのプリオンの移動が明らかとなった。PrP結合タンパク質を質量分析で同定し細胞内タンパク質が同定できた。発症したウシ型Tgマウスの脾臓由来のB220+/CD21+細胞群にプリオンが陽性となった。ウエスタンブロット法にUnfoldinを使うことでプリオンの検出感度を上昇させることができた。BSEプリオンの脳内接種ウシは10ヶ月でプリオンの沈着を認め、18ヶ月で発症した。BSEプリオン接種サルはvCJD様の所見を示した。枝肉処理方法や部位による汚染状況を考慮した方法を実施することで、脳脊髄組織汚染を防御できた。代替法として試行した電気による不動化は導入に問題はないと考えられた。舌扁桃の分布を明らかにし、舌扁桃の除去は粘膜固有層を除去することで可能であることを検証した。非定型BSEは潜伏期間が短いことを示唆する所見を得た。牛肉に関する意識調査を行った。
結論
プリオン診断検査技術の開発と高感度化とともに、種々の動物へのBSEプリオン伝達試験で多くの知見が得られた。と畜行程における汚染防止対策が可能となった。非定型BSEに関わる知見が得られた。牛肉の消費に関する意識調査で今後の対策に資することができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200734005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
最新のBSE診断および検査技術に関する研究では、6時間で終了する免疫組織化学法のほか、多くの方法で進展があった。BSEリスクの解明に関する研究では、実験動物への伝達試験で多くの成果が得られた。脳・脊髄組織による枝肉等の汚染防止対策のSSOPを作成した。めん羊サーベイランスの結果が得られ、佐世保非定型BSE例の解析も進んだ。総じてユニークな学術的成果が得られた。
臨床的観点からの成果
BSEのリスク解明を目的としており臨床的観点とは意義が異なる。
ガイドライン等の開発
脳・脊髄組織による枝肉等の汚染防止対策のSSOP案を食肉衛生検査所に配付した。舌扁桃の除去法を科学的に検証した。
その他行政的観点からの成果
BSE-8の23ヶ月非定型例、BSE-9の21ヶ月若齢牛、そして判定保留の神奈川例については、伝達試験が不成功に終わったことについては、中間報告として食品安全委員会プリオン調査会で報告された。また最終年度には牛肉の消費に関する意識調査を行った。
その他のインパクト
前述したマウスへの伝達試験の中間報告結果が朝日新聞の1面、読売新聞等で報道された。

発表件数

原著論文(和文)
46件
原著論文(英文等)
98件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
117件
学会発表(国際学会等)
51件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hayashi HK, Yokoyama T, Takata M他
The N-terminal cleavage site of PrPSc from BSE differs from that of PrPSc from scrapie.
Biochem Biophys Res Commun , 328 , 1024-1027  (2005)
原著論文2
Iwata N, Sato Y, Higuchi Y他
Distribution of PrP(Sc) in cattle with bovine spongiform encephalopathy slaughtered at abattoirs in Japan.
Jpn J Infect Dis , 59 , 100-107  (2006)
原著論文3
Hagiwara K, Yamakawa Y, Sato Y他
Accumulation of mono– glycosylated form–rich, plaque–forming PrPSc in the second atypical bovine encephalopathy case in Japan.
Jpn J Infect Dis , 60 , 305-308  (2007)
原著論文4
Fujii F and Kinjo M
Detection of antigen protein using fluorescence cross-correlation spectroscopy and quantum-dots labeled antibody.
Chem Bio Chem , 8 , 2199-2203  (2007)
原著論文5
Fujii F, Horiuchi M, Ueno M他
Detection of prion protein immune complex for bovine spongiform encephalopathy diagnosis using fluorescence correlation spectroscopy and fluorescence cross-correlation spectroscopy.
Anal Biochem , 370 , 131-141  (2007)
原著論文6
Masujin K, Matthews D, Wells GAH他
Prions in the peripheral nerves of bovine spongiform encephalopathy-affected cattle.
J Gen Virol , 88 , 1850-1858  (2007)
原著論文7
Yokoyama T, Shimada K, Masujin K他
Both host prion protein 131-188 subregion and prion strain characteristics regulate glycoform of PrPSc.
Arch Virol , 152 , 603-609  (2007)
原著論文8
福田茂夫
牛への脳内接種法の確立とBSEプリオン実験感染牛を用いた研究
臨床獣医 , 25 , 15-18  (2007)
原著論文9
Furuoka H, Yabuzoe A, Horiuchi M他
Species-specificity of a panel of prion protein antibodies for the immunohistochemical study of animal and human prion diseases.
J Comp Pathol , 136 , 9-17  (2007)
原著論文10
Uryu M, Karino A, Kamihara Y他
Characterization of prion susceptibility in Neuro2a mouse neuroblastoma cell subclones.
Microbiol Immunol , 51 , 661-667  (2007)
原著論文11
Kawasaki Y, Kawagoe K, Chen CJ他
Orally administered amyloidophilic compound is effective in prolonging the incubation periods of animals cerebrally infected with prion diseases in a prion strain-dependent manner.
J Virol , 81 , 12889-12898  (2007)
原著論文12
Kato K , Sawada Y
Distribution of the Lingual Tonsils of Cattle Designated as Specified Risk Materials.
J Vet Med Sci , 70 , 251-254  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-