文献情報
文献番号
202001007A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護のデータの利活用の推進のための、NDB・介護DBの連結可能性および活用可能性の評価に関する研究
課題番号
19AA2006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学 医学部附属病院診療報酬センター)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 知宏(国立大学法人 京都大学 医学研究科)
- 植嶋 大晃(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
- 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
- 杉山 雄大(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター医療政策研究室)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
22,415,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、匿名レセプト情報等データベース(NDB)、および匿名要介護認定情報・匿名介護レセプト等情報(介護DB)の両者のデータ連結について技術的検証及び利用可能性の検証を行うことを目的とするものである。まず、NDB・介護DBの連結可能性の評価と、連結データの利用可能性の評価という2つの課題に取り組むべく、介護DBの概要と構成要素について整理を行い、これまでの医療・介護データの連結解析の議論や、先行研究を参考に、NDBデータと介護DBデータの連結解析を容易にするデータ構成を検討し、新しいテーブルの作成を行った。次に、利用可能性の評価として、作成したデータマートを用い、先行研究を再現する形式で簡単なレベルの試行集計を行った。その際に、どの程度の作業時間を要したかについても、確認を行った。
一方で、NDBそのものの価値を向上させることを目的として、NDBレセプトデータを用いて死亡を予測する深層学習モデル(deep learning model)の開発及びバリデーションを行った。また、医療レセプトと要介護認定情報・介護レセプト情報とを連結解析した事例そのものがまだ非常に少ないという現状を鑑み、NDBのみで実施でき、かつ今後のNDB・介護DB連結解析で取り上げられて展開していく可能性の高い、高齢者の介護の課題に直結する個別研究も2題行った。
一方で、NDBそのものの価値を向上させることを目的として、NDBレセプトデータを用いて死亡を予測する深層学習モデル(deep learning model)の開発及びバリデーションを行った。また、医療レセプトと要介護認定情報・介護レセプト情報とを連結解析した事例そのものがまだ非常に少ないという現状を鑑み、NDBのみで実施でき、かつ今後のNDB・介護DB連結解析で取り上げられて展開していく可能性の高い、高齢者の介護の課題に直結する個別研究も2題行った。
研究方法
今回の研究では、2014年度、2015年度分のNDBデータ、介護DBデータを利用し、連結解析を行うためのデータマート構築を実施した。NDBを用いた2題の個別研究も、このNDBデータを用いて行った。また、在院死亡予測モデルの開発に際しては、DPCデータ調査研究班のDPCレセプトデータにおいて2010年7月-2017年3月の期間に退院した全患者データを用いた。
結果と考察
介護に関連する各種データを用いた先行研究では、得られた情報を患者のアウトカムとして使用したり、対象者の状態像を示す情報として使用する事例が多くみられた。これらの情報は要介護認定情報に含まれことが少なくないが、レセプト情報とは異なり、要介護認定情報は認定時にしか情報が格納されない。そこで、要介護認定情報を各月ごとに参照できるテーブルを新たなテーブルとして作成した。こうして作成したデータマートを用い、医療レセプト、要介護認定情報、介護レセプト情報間で連結解析を行っている2つの先行研究に着目し、その再現を試みた。集計は合計3通り実施し、全数レベルでNDB・介護DBの連結解析を実施することができた。深層学習モデルを用いたモデルでは、全症例のAUCを評価したところ、結果は0.954 (95% 信頼区間: 0.9537-0.9547)と高く、急性心筋梗塞・心不全・脳卒中・肺炎の4疾患について既存の重症度指標を用いたモデルも作成して比較したところ、4疾患のいずれにおいても、メインモデルの方がAUCの値は高値であり、高い精度の在院死亡の予測を得られることが確認できた。NDBを用いた個別研究では、高齢者のリハビリ、在宅医療の実態をNDBだけでも相当程度明らかにできることを示すことができた。
結論
要介護認定情報から各月ごとの情報を入手できるテーブルを新しく導入し、介護DBデータにランダムに付与したIDで連結し、試行集計を実施した。これらの研究を通じて、NDBと介護DBの全数レベルでの連結解析が実施可能であることを明らかにした。これによって今後のNDB・介護DB連結解析を実施できる基盤の有効性を確認することができた。また、入院初日の治療内容情報を用いて在院死亡を予測する深層学習モデルを構築し、既存の重症度指標に比べて在院死亡の予測精度が高いことを明らかにした。これは、今後のNDB・介護DB連結解析を推進する上で、利用者にとって有用なツールとなることが期待される。最後に、個別研究の結果からは、今後NDBと介護DBの連結解析が容易になれば、患者像の評価に資する情報が付加されることから、得られる知見の幅が広がりうることを確認することができた。今後、NDBと介護DBの連結解析を行う基盤が整えられていく見込みであることから、本研究で示したような連結解析に関する必要な知見が、利用者間で更に共有されていくことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-11-14
更新日
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