新しいチーム医療等における医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究

文献情報

文献番号
202001006A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいチーム医療等における医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究
課題番号
19AA2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 左和子(奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 内藤 祐介(奈良県立医科大学 医学部 麻酔科学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 東が丘・立川看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革実行計画については、2024年4月から時間外労働上限規制が実施される。それまでに克服しなければならない医師の長時間勤務の課題は多いが、1つはタスク・シフト/シェアが十分に進んでいない医療現場の環境がある。医師の多職種へのタスク・シフト/シェアではどのような業務が委託・移管可能なのか、さらにその業務がどの程度の時間短縮効果があるのかなどを調査し、2019年度は「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」において「現行制度上実施可能な業務」の内、「特に推進する44業務」が取りまとめられた。
本年度(2020年度)は、「特に推進する44業務」について、医療機関がタスク・シフト/シェアの取り組みの参考にでき、実行可能性が高い好事例を調査、収集し、なおかつ医療現場に受け入れられる項目を整理することを目的とした。
研究方法
今年度は、職能団体から前年度までに提案されたタスク・シフト/シェア可能な業務を44業務に添った絞り込みを目的としたアンケート調査と、それを受けて医療現場で実行可能で医師の時短が認められるかを確認する医療機関へのアンケート調査を実施した。また、タスク・シフト/シェアされる業務を受け入れる職能(看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、医師事務作業補助者、日本版Nurse Practitioner (NP))と在宅医療・介護に関する先進的且つ横展開の推奨に値する事例の視察・インタビュー調査により、取り組みの詳細な背景や運用方法の実際、課題などを確認した。
 また、奈良県立医科大学付属病院の重症COVID-19病床において、特定行為看護師の医師の時短への効果について調査研究を実施した。
海外で予定していた病院から介護職へのタスク・シフト/シェアについては、コロナ禍のため実施できなかった。
結果と考察
職能団体が推進したいタスク・シフト/シェアが可能な26業務について、合計85事例の好事例を収集した。四病院協議会の協力の下、20病院に調査依頼をし、10病院から85事例のうち71事例が、実際に現場でもタスク・シフト/シェアが一般的であり、好事例である確認が得られた。その内10事例を実行している病院からも、医師の時短に効果が高いことを確認した。看護師・助産師に関する好事例は、医療機関から102事例の好事例を収集できた。
各職能への視察・インタビューの結果、診療放射線技師は、医師の指示の下、画像下治療(IVR)の補助を実施していた。この地域では300床ほどの病院はどこも救急患者の受け入れが必須であり、診療放射線技師のIVR補助で医師の時短が可能になり、地域の救急医療を支えていた。
臨床検査技師については3件の医療機関の視察・インタビュー/ウェブインタビュー調査を実施した。地域性に足して、各職能の活躍できる場を見直すことで、医師の時短を促進していた。検査を必要としている病棟や救急室に常駐し、入院患者の採血などを担うことで医師のみならず看護師の時短にも貢献していた。技術部門を統括して医療技術部とすることで、医師、看護師、薬剤師と並ぶ技術職の部門が確立。技士・技師らが院内で発言しやすくなる、互いに技術を教えあう、各職能が新たな技術を身につける、職能を越えて同じ要望を持つスタッフが協力し合える等、各職能のモチベーションの向上と連携が良くなることで医師が別々に指示を出す手間が省けるなど、新たな医師の時短への提案が確認できた。
日本版NPは個人のたゆまぬ努力に足して、地域を支える国立病院の意向と医療現場の医師との関係性がうまく構築されており、それによって医師の時短や看護師の仕事を円滑に進めることに貢献していた。医師事務作業補助者は、医師の時短への貢献が高いが、役職の成り立ちや病院の規模、地域によってタスク・シフト/シェア範囲が異なっていた。医師の予診については、条件の整備でさらに活躍の可能性が伺えた。
在宅医療では、ICTの活用によって情報共有できるシステムを構築することで、医師の時短と他職種連携の強化が実現し、それによって緊急対応を要する回数や時間が減少した。
重症COVID-19病床において、特定看護師の勤務時と不在時では、医師が呼ばれる回数(1日1.2回と2.2回)に有意に低減できていた。
結論
職能団体の先進的かつ横展開の推奨に値する取り組み事例の視察調査・インタビューの結果、医師の時短を実現できる度合いと業務の種類などは、地域性が強いことが分かった。各職能の業務や各職能の体制を見直すことで、まだわかっていない医師の時短への貢献や各職能の職域を広げる可能性があることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202001006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,540,000円
(2)補助金確定額
20,540,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,661,922円
人件費・謝金 3,076,434円
旅費 2,013,239円
その他 8,748,405円
間接経費 4,040,000円
合計 20,540,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
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