児童虐待対策における行政・医療・刑事司法の連携推進のための協同面接・系統的全身診察の実態調査及び虐待による乳幼児頭部外傷の立証に関する研究

文献情報

文献番号
202001003A
報告書区分
総括
研究課題名
児童虐待対策における行政・医療・刑事司法の連携推進のための協同面接・系統的全身診察の実態調査及び虐待による乳幼児頭部外傷の立証に関する研究
課題番号
19AA1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山田 不二子(東京医科歯科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 毎原 敏郎(兵庫県立尼崎総合医療センター 小児科)
  • 丸山 朋子(大阪急性期・総合医療センター 小児科)
  • 高橋 英城(東京医科大学 小児科・思春期科学分野)
  • 田上 幸治(神奈川県立こども医療センター 総合診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,857,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
性虐待やAHT(虐待による乳幼児頭部外傷)のように、体表外傷が生じにくく、被害児本人から被害内容の開示を得ることが難しい虐待の場合、その立証は困難を極める。そこで、本研究は、虐待を立証するための方法論を確立し、児童虐待防止対策に資することを目的とする。
研究方法
テーマ1:協同面接の実施実態を把握するため、性虐待被害児で協同面接を実施しなかった事例を含めて調査票調査を実施して、協同面接をより円滑に実施するための方策について検討し、児童相談所と医療機関との連携の実態についても調査する。
テーマ2:乳幼児の頭部外傷症例に関する医療情報の検討を行い、その中で、刑事確定訴訟記録になっている症例が特定されれば、医療者と警察・検察との連携等に関してもさらに詳細な事例検証を行う。調査結果に基づいて、『AHT診断アルゴリズム(手引き)』を作成するとともに、刑事訴訟で論点になる問題点を抽出し、刑事司法との連携のあり方についての提言をまとめる。
テーマ3A:硬膜下血腫を受傷した乳幼児から脳脊髄液と血液を採取し、脳脊髄液と血漿のケミカルメディエイターとバイオマーカーを分析するとともに、メタボローム解析を用いて、回転性加速減速運動による脳実質損傷に特異的なバイオマーカーを特定する。
テーマ3Bでは、3Aとは異なる症例も含めた30症例について、MRSを施行し、受傷部位の脳代謝にどのような変化が生じているかを分析して、『AHT診断アルゴリズム(手引き)』の策定に活かす。


結果と考察
テーマ1:【結果】2020年度は「協同面接・性虐待と系統的全身診察および医療機関との連携に関する実態調査」を実施した。この実態調査には、児童相談所等の現状を把握するための調査(所票)、協同面接を実施した事例の調査(個票1)、児童相談所が性虐待として受理したが、協同面接を実施しなかった事例の調査(個票2)の3種類があるが、所票の回答が得られたのは、児童相談所215か所のうち130か所(回収率60.4%)、協同面接実施民間団体4か所のうち3か所(同75%)であった。「協同面接を実施した事例の調査」(個票1)については計775事例(1か所からの報告数は0〜46事例、平均5.8事例)、「性虐待で協同面接等を実施しなかった事例の調査」(個票2)については計684事例(1か所からの報告数は0〜39事例、平均5.2事例)の回答が得られた。【考察】子ども虐待への適切な対応のためには、医療機関・児童相談所・警察・検察など、子どもに関わる全ての機関の対応能力を向上させることと、円滑な多機関連携が重要である。特に性虐待は、子どもへの心理的負担に配慮しながら被害事実を立証するための手立てが必要であり、各機関が十分な役割を果たすために、協同面接や系統的全身診察を量的・質的に充実させていくための一つの方策として、実施のための手引きを作成して関係機関に周知を図ることが重要である。
テーマ2:【結果】共同研究施設として倫理審査が承認された医療機関は22か所であった。これら22医療機関に症例調査票の記入および画像データの提供を依頼した。AHT医療情報調査は、症例群 15医療機関 296例(画像データ 253例)、対照群 13医療機関 100例(画像データ 98例)の回答があった。また、AHT司法連携調査のための調査票は77例の回答があり、最高検察庁に問い合わせのうえ、事件が特定されたものは25例であり、そのうち公判記録の謄写可能と回答をいただいたのは15例、係争中・無罪確定・廃棄等により謄写不可能と回答頂いたのは10例であった。【考察】『AHT診断アルゴリズム(診断の手引き)』を作成するうえで、現場の医療資源、価値観から乖離することなく、全国のAHT診断・診療に関する精度の向上を図るための『AHT診断アルゴリズム(診断の手引き)』を作成し、被虐待児への適切な支援につなげることが大切である。
テーマ3:【結果】テーマ3Aの研究対象として収集された献体は1検体(1症例)であり、現在、冷凍保存されている。テーマ3Bの共同研究施設は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応のため、外傷症例の受入れが抑制されていて、症例が集まっていない。【考察】小児頭部外傷において、虐待か否かは、司法においても論争の的であるが、医学的に証明できないことが多い。この研究で大きな進展があれば、被害児の治療方針や法廷論争に大きく貢献する可能性があり、社会的な経費の削減にも繋がる。
結論
性虐待やAHTの立証は困難を極めるが、本研究を通して、性虐待やAHTを立証するための方法論を確立し、『協同面接と系統的全身診察の手引き』および『AHT診断アルゴリズム(診断の手引き)』を策定することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2021-08-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-08-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202001003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,013,000円
(2)補助金確定額
5,013,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 227,913円
人件費・謝金 1,481,731円
旅費 233,790円
その他 1,913,566円
間接経費 1,156,000円
合計 5,013,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-31
更新日
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