石綿ばく露による健康障害リスクに関する疫学調査の開発研究

文献情報

文献番号
200733016A
報告書区分
総括
研究課題名
石綿ばく露による健康障害リスクに関する疫学調査の開発研究
課題番号
H18-労働-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 謙(産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 東 敏昭(産業医科大学産業生態科学研究所作業病態学研究室)
  • 大瀧 慈(広島大学原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野)
  • 寶珠山 務(産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室)
  • 井手 玲子(産業医科大学産業生態科学研究所作業病態学研究室)
  • 名取 雄司(医療法人社団ひらの亀戸ひまわり診療所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民にわかりやすい国段階の対策評価に資する以下の個別課題を実施する。石綿ばく露・健康リスクに関する疫学調査についての既存知見を整理し、知見の総体として要約する。国際比較に基づきわが国の実態を計る記述疫学指標を開発する。中皮腫の将来予測に新規手法を適用する。今後需要の高まりが予測される石綿リスク・コミュニケーションの確立を目指す。
研究方法
1)総説研究では石綿曝露と健康障害リスクに関する既存疫学研究の調査法および知見に関する文献的要約・考察を行う。2)国際比較的に石綿ばく露と同関連疾患に関する各国別のマクロデータを分析し、国段階とグローバルな実態に関する指標の開発を含む記述疫学研究を行う。3)国内実態調査研究(新規追加)では個人の客観的ばく露評価を目的に詳細な職務ばく露連関表に基づく問診システムを構築する。4)国内中皮腫将来予測研究では既報された将来予測モデルの長短所を分析し、わが国の実情に即した独自の緻密な予測モデルを構築する。5)リスク・コミュニケーション研究では窓口相談事例と国内のリスク・コミュニケーション事例を収集・分析し、リスク・コミュニケーション・マニュアルを作成する。
結果と考察
欧米先進国とわが国では、石綿使用・法規制・疾病流行の各側面において10-15年の時相の差がある。欧米先進各国で中皮腫の増加傾向は明らかであり、将来の増加予測もほぼ確実と言える。わが国は全/胸膜中皮腫の死亡水準は諸外国に比べて中位だが、両疾患群ともに統計的有意の増加を示している世界で唯一の国である。国際比較研究では、禁止措置の導入により石綿使用の削減速度が2倍となり、禁止措置の購入により一定期間を経た後に中皮腫リスクの低減が期待できる。国内実態として、社会問題化とともに石綿外来が急速に拡大し、経験年数の少ない担当医が関連の診療を担っているが、曝露歴の問診に困っている。受診者側では1回限りの受診になる場合が多い。将来予測モデルでは、これまで類例のない多段階発がんモデルの新規構築に展望があり、開発を開始した。リスク・コミュニケーションでは、434件の相談事例を収集し、60歳代男性が含有建材を含む環境曝露についての相談が典型的である。
結論
わが国の疫学調査は分析および記述疫学研究の質・量ともに不足している。開発中の国際比較可能な指標、中皮腫予測に関する新規モデル、リスクコミュニケーション事例の記述研究などが国民に対するわかりやすい疫学的知見の提供に資することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
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