破断面から破断荷重を推定するための定量解析システムの開発

文献情報

文献番号
200733013A
報告書区分
総括
研究課題名
破断面から破断荷重を推定するための定量解析システムの開発
課題番号
H17-労働-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山際 謙太(独立行政法人労働安全衛生総合研究所産業安全研究所機械システム安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 信介(東京大学工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
事故調査において,疲労破壊の特徴であるストライエーションが観察される場合は応力推定を行うことが可能であるが,実機の場合は圧縮の荷重がかかることで破断面が押しつぶされ,ストライエーションが観察されないこともある.このような場合,表面粗さを用いることで応力推定を行う研究が行われている.本研究では,1)溶接構造用圧延鋼材SM490Aの平滑丸棒試験片を用いて回転曲げ疲労試験を実施し,2)破断面の粗さと応力の関係について検討を行った.
研究方法
回転曲げ疲労試験片はJIS Z2274に準拠した平滑丸棒試験片を用いた.試験条件は室温大気中,正弦波,R=-1,とした.試験片の本数は15本である.
破断面の観察にはレーザー顕微鏡を使用した.破断面の3次元形状を計測した.次に粗さ解析ソフトウェアを用いて,3次元形状の算術平均粗さ(Ra: B0601-2001)求めた.
結果と考察
未破断と発熱した3本のデータを除き最小自乗法によるStromeyer型に近似し求めた疲労限強度は10^10サイクルと仮定した場合275MPaと推定される.
 破断面の巨視的観察を行ったところ,応力振幅が低い場合,破断までの繰り返し数が大きく,破断面が平坦であった.一方,応力振幅が高い場合は,繰り返し数が少なく,破断面の凹凸が大きい.
Raと応力振幅の傾向には応力が低いと粗さが高くなる傾向がみられた.これは応力振幅が高い場合,破断面に圧縮応力が作用したとき破断面が反対側と接触して破損するケースが,応力振幅が低い場合と比較して大きい.そのため,応力振幅が低い破面ではストライエーションがよく観察され,応力振幅の高い破断面ではあまり観察されなかった.そしてストライエーションは破断面上の微細な凹凸であることから,応力振幅が低くストライエーションが観察されやすい場合に,粗さが大きくなる傾向があると考えられる.
結論
本研究では,SM490Aの受け入れ材について回転曲げ疲労試験を行った.疲労限は275Mpaと推定される.
次に,粗さと応力についての関係を求めた.応力レベルが低い場合,圧縮応力による破断面の損傷が少ないためストライエーションが観察されることが多く,その結果粗さ(Ra)が大きくなる傾向があることがわかった.

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733013B
報告書区分
総合
研究課題名
破断面から破断荷重を推定するための定量解析システムの開発
課題番号
H17-労働-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山際 謙太(独立行政法人労働安全衛生総合研究所産業安全研究所機械システム安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 信介(東京大学工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
破断面は,機械構造物の破壊の履歴を示す唯一の証拠であり,その厳密な解析なくしては,正確な事故原因究明は行うことができない.
本研究では,破断面に数値解析手法を導入し,解析初心者でも簡単に,かつ迅速に破断荷重が評価できるデータベースシステムを開発する.これにより,定量的な破断荷重の評価と解析に関する知見の共有が可能になり,正確な事故解析に寄与することが可能となる.
研究方法
破断面には様々な特徴があり,これらから破断荷重に関する情報を引き出すことができる.本研究では以下のパラメータに着目した.
1)二次元局所Hurst数を用いたストレッチゾーン幅の計測
2)ランレングスを用いたディンプルの大きさの計測
3)算術平均粗さを用いた疲労破断面の評価
次に,一般的に用いられている粗さに着目し,破断面の特性化をおこなうための破断面データベースの設計と構築を行った.
結果と考察
二次元局所Hurst数を用いてストレッチゾーンの幅を計測した結果,目視で同定した領域と合致した領域を抽出することができた.つまり,これまで観察者の経験を元に判断していた領域を数値解析により判断できるようになった.
ディンプルの大きさの計測に関しては,温度に対応してランレングスの一つであるLREが大きくなる傾向が得られた.従ってLREを用いることでディンプルの大きさを評価することが可能であることが確認された.
粗さによる疲労は断面の評価は,Raと応力振幅の傾向に相関があり,応力振幅が小さくなると破断面の粗さが大きくなった.応力振幅が低い場合,破断面の損傷が小さく破断面上の微細な凹凸であるストライエーションがよく観察され,粗さが大きくなる傾向がある.
破断面データベースシステムは,検索機能としては,フリーキーワードによる検索と,項目を指定して検索する機能を備えている. もう一つは,データベースと破面解析支援プログラムの連携である.ユーザが,画像データあるいは三次元形状を投入すると特徴量を計算して類似画像を返してくれるシステムである.
結論
破断面の様相から破断荷重を推定するための技術について研究を実施した.また,粗さに着目したうえで,破断面に関する情報を効率的に収めるデータベースを構築した.このデータベースを利用することで解析熟練者の知見を残し,初心者に対する解析支援に貢献することが可能である.

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
破断面の様相から画像処理を用いて破断荷重を推定するための技術について研究を実施した.次に、それらの技術と画像データベースを組み合わせた破断面解析システムを構築し、破断面に関する情報を効率的に収める仕組みを確立した.このデータベースを利用することで解析熟練者の知見を残し,初心者に対する解析支援に貢献することが可能である.
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高梨正祐,山際謙太,泉聡志,et al.
定量フラクトグラフィに基づいた破面解析支援データベースシステムの構築
圧力技術 , 44 (1) , 3-11  (2006)
原著論文2
K. Yamagiwa, et al.
Method for quantitative evaluation of stretched zone width using two-dimensional local Hurst exponent
Strength, Fracture and Complexity , 3 (2) , 81-87  (2005)
原著論文3
山際謙太,高梨正祐
破断面解析支援データベースの試作
検査技術 , 11 (12) , 1-8  (2006)
原著論文4
山際謙太,高梨正祐
破断面解析支援データベースの試作
ボイラー研究 ,  (343) , 16-24  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-