輸入農産物の分析・試験法等に関する研究

文献情報

文献番号
199700398A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入農産物の分析・試験法等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
外海 泰秀(国立医薬品食品衛生研究所・大阪支所食品試験部長)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HPLC及びGCを用いる各種農薬の一斉分析法を作成することにより、残留農薬の広範囲なモニタリングを可能とする。また検査の効率化を目指して、分析の自動化のためにSFE装置及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の導入を行う。着色料については国ごとに使用許可状況が異なるため、しばしば問題となる。我が国で指定外となっている着色料についてHPLCでの保持時間を系統的に調査し、不許可着色料の判定を容易にする。酸化防止剤については我が国での許可4種と諸外国での許可5種の同時分析法を作成する。またサイクラミン酸のGCによる簡便な分析法、GC/MSによる確認法を作成し、輸入食品中の含有量調査を行う。1998年2月メルボルンで開催されたFAO/WHO合同国際食品規格委員会、第6回食品輸出入検査及び認証部会の内容を調査した。
研究方法
穀類中の各種農薬をSFEで同時抽出し、Extrelut2+CI8カートリッジで脱脂、GPC及びSep-pak2 フロリジルでクリーンアップし、これにより得た試験溶液をHPLC及びGCに注入し、一斉分析した。検出されたピークはフォトダイオードアレイ検出器またはGC/MSで確認した。比較的検出頻度の高い指定外着色料29種を選び、公定法によるHPLC条件下での保持時間を求め、許可着色料との相関性を求めた。酸化防止剤9種を酢酸エチルで試料から同時抽出し、Sep-pak2シリ力でクリーンアップし、HPLCで測定した。サイクラミン酸を強酸性条件下で次亜塩素酸と反応させ、生じたN,N-dichlorocyclohexylamineをGCで分析し、GC/MSで確認した。
結果と考察
結果=玄米、小麦、大麦、ライ麦、そば、とうもろこし等輸入穀類の実態調査を行った結果、小麦、とうもろこしなどからマラチオン、クロルピリホスメチル、フェニトロチオン、ピリミホスメチル等を検出した。公定法によるHPLCで指定12種、指定外29種着色料の保持時間を求めた。着色料のピークを検出した場合、保持時間とフォトダイオードアレイの併用により、指定外着色料の推定が可能となった。酸化防止剤分析法をチーズクラッカーに適用し、良好な結果を得た。サイクラミン酸の簡易GC分析法により実態調査を行った結果、輸入乾燥果実51検体のうち話梅、カンラン、アンズ等15件からサイクラミン酸を検出した。
考察=SFE抽出法は従来の有機溶媒抽出法に比して操作が簡易であるとともに、抽出されてくる脂質の量も少ないことが判明した。またSep-pak2フロリジルからの溶出を3画分にすることは、妨害成分の多い試料の場合には農薬の判定を容易にした。フォトダイオードアレイによる確認は特徴的な吸収を持たない農薬もあるため、必ずしも決定手段とならない場合がある。我が国でフェノール系酸化防止剤は4種しか許可されておらず、また我が国では不許可で諸外国で使用されている着色料は多くあり、これらの分析法と標品を準備することは今後のモニタリングにおいて重要である。サイクラミン酸は我が国では指定取り消しとなった添加物であるが、EU諸国、中国、台湾等では現在もその使用が認められているため、輸入食品の監視においてはしばしば問題となる。
結論
近年における農薬の使用状況では、ボストハーベスト農薬も含めて親水性農薬の使用される傾向にあり、従来のGC法のみでは検出困難なケースもある。しかし、本法を検討したことにより今後はより広範囲に、かつ効率的なモニタリングが可能になるものと思われる。そのためには確認手段としてのLC/MS装置の早期導入が必須と考えられる。食品添加物のモニタリングにおいては、各国の使用許可状況を把握するとともに、我が国における指定外添加物についても分析法を整備し、熟練する事が好ましい。また、輸出入食品の検査及び認証制度に関するCODEXの規格基準やその他の国際規格に関する情報を、いち早く入手することも重要と思われる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)