リスクマネジメント教育の有効性評価に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200733011A
報告書区分
総括
研究課題名
リスクマネジメント教育の有効性評価に関する総合的研究
課題番号
H17-労働-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 伸之介(大阪大学 大学院人間科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 一光(大阪大学 大学院人間科学研究科)
  • 山田 尚子(甲南女子大学 人間科学部)
  • 神田 幸治(名古屋工業大学 大学院工学研究科)
  • 中村 隆宏(独立行政法人 労働案遠泳性総合研究所)
  • 和田 一成(平安女学院大学 短期大学部)
  • 村上 幸史(神戸山手大学 人文学部)
  • 太刀掛 俊之(大阪大学 安全衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臼井ら(2005)はリスク教育を効果的に実施するツールとして、不安全行動誘発・体験システムを提案した。本年度は前年度研究までに作成された体験プログラムが不安全行動体験として妥当であるか、またその具体的手続きやユーザビリティ評価等を検討するとともに、体験プログラムの教育的効果について確認した。
研究方法
主にA-Eの5グループにより研究を行った。
A.中断により誘発されるエラー体験プログラムのシステム適用:作業の中断によるエラー誘発課題をベースに、妥当性のあるプログラム作成へと展開させた。B.変化の見落としと注意の偏りを誘発するエラー体験プログラムの有効性評価:注意の偏り及び意識的注意の問題を体感させるエラー体験プログラム仕様を実験的に検討した。C.課題遂行コストの効果を利用した違反行動誘発プログラムの概要:違反行動誘発プログラム内容を再検討した。D.日常的注意経験質問紙の診断化に向けて:日常的注意経験質問紙および失敗傾向質問紙をシステムに組み込み、体験者の注意・失敗傾向を自動的に診断可能なシステム作りを図った。E.不安全行動誘発・体験システムにおける災害事例の展開例:システムの体験後にその危険性理解を促進する災害事例および効果的な提示シナリオについて検討した。
結果と考察
A.中断の予期のない条件でのパフォーマンス低下が顕著であり、システムにはその体験および解説が有効であることがわかった。B.コンテンツとして、change blindness課題とメーター課題が有効であり、また体験プロセスは教示、体験フ、解説の3つのフェーズでの構成が体験者の理解に有効であることがわかった。C.違反生起の心理的問題性を効果的に体験可能とするプログラムを確立した。D.質問紙と実際の作業パフォーマンスに関連のあることが示され、質問と回答をすべてコンピュータ上で行い、集計・結果の解釈を自動的に算出し、その内容をコンピュータ上でフィードバックする一連のプログラムを作成した。E.体験後に提示する2つの災害事例の選定と、その提示シナリオおよびイラストを作成した。
結論
研究の成果物として、「中断体験」「注意の偏り体験」「違反体験」「注意・失敗傾向」の4つのメニューから構成される「エラー体験プログラム」と称するソフトウェアを開発した。本ソフトを用いた安全教育を実施することにより、職場の安全性向上が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733011B
報告書区分
総合
研究課題名
リスクマネジメント教育の有効性評価に関する総合的研究
課題番号
H17-労働-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 伸之介(大阪大学 大学院人間科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 一光(大阪大学 大学院人間科学研究科)
  • 山田 尚子(甲南女子大学人間科学部)
  • 神田 幸治(名古屋工業大学 大学院工学研究科)
  • 中村 隆宏(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 和田 一成(平安女学院大学 短期大学部)
  • 村上 幸史(神戸山手大学 人文学部)
  • 太刀掛 俊之(大阪大学 安全衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臼井ら(2005)はリスク教育を効果的に実施するツールとして、不安全行動誘発・体験システムを提案した。本研究では不安全行動の体験という本システムの妥当性、具体的手続き、ユーザビリティ評価等を検討し、個人が無理なく不安全行動を体験、理解可能とするプログラムソフトの完成を目指すとともに、その教育の有効性を確認することを目的とする。
研究方法
主として以下にあげるA?Dの4グループにより研究を行った。
A.中断により誘発されるエラー体験プログラムのシステム適用:作業の中断によるエラー誘発課題をベースに、エラー体験として妥当性のあるプログラム課題作成へと展開させた。B.変化の見落としと注意の偏り現象を再現する新たなエラー体験システムの構築と有効性評価:注意の偏り及び意識的注意の問題を体感させるエラー体験プログラム仕様を実験的に検討した。C.課題コストの効果を利用した違反行動誘発プログラムの開発:課題遂行のコストを強制的待機時間で操作した違反行動誘発プログラムの手順見直しとその妥当性を検証した。D.日常的注意経験質問紙の診断化に向けて:日常的注意経験質問紙および失敗傾向質問紙を不安全行動誘発・体験システムに組み込み、体験者の注意傾向、失敗傾向を自動的に診断できるシステム作りを図った。
結果と考察
A.実験の結果、中断の予期のない条件でのパフォーマンス低下が顕著であり、システムにはその体験および解説が有効であることがわかった。B.コンテンツとして、change blindness課題とメーター課題が有効であり、また体験プロセスは教示フェーズ、体験フェーズ、解説フェーズの3つのフェーズでの構成が体験者の理解に有効であることがわかった。C.コンテンツとして、コストの効果に主眼をおいたプログラムが体験課題として妥当であることがわかった。D.質問紙と実際の作業パフォーマンスに関連のあることが示され、質問と回答をすべてコンピュータ上で行い、集計・結果の解釈を自動的に算出し、その内容をコンピュータ上でフィードバックする一連のプログラムを作成した。
結論
研究の成果物として、「中断体験」「注意の偏り体験」「違反体験」「注意・失敗傾向」の4つのメニューから構成される「エラー体験プログラム」と称するソフトウェアを開発した。本ソフトを用いた安全教育を実施することにより、職場の安全性向上が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
不安全行動の生起メカニズムを、ヒューマンエラーについては作業の中断と注意の偏りの側面から、違反行動についてはコストとリスクの側面から明らかにした点、また注意機能の個人差を質問紙により測定可能とした点に学術的成果がある。さらに作業者の安全傾向を高めるため、得られた知見をまとめた成果物として、エラー体験とそのフィードバックという手順から構成される教育的プログラムソフトを開発した点に専門的成果がある。
臨床的観点からの成果
本研究の成果物として作成されたエラー体験プログラムソフトは、作業遂行時に生起する作業者の心理面での危険性について、比較的簡便に体感、理解できるツールとなっている。
平成17-18年度において、病院看護師を対象に、本ソフトのコンテンツを題材としたリスク教育を実施し、教育前後の行動、意識調査等から、教育の有効性をある程度確認することが出来た。その結果については、平成18年度総括・分担研究報告書および平成17-19年度総合研究報告書にまとめられた。
ガイドライン等の開発
特に研究の成果がガイドライン等に反映されていないが、今後さらに研究開発を推進すれば、例えばリスクアセスメント等から必要とされるトレーニングや安全教育の一つの手段として活用される可能性は考えられる。
その他行政的観点からの成果
第11次労働災害防止計画の「9.計画における労働防止対策」では「自主的な安全衛生活動の促進」「安全衛生管理対策の強化」が謳われている。本研究の成果物であるエラー体験プログラムソフトは、作業者の心理面での危険性について、比較的簡便に体感、理解できるツールとなっている。そこで各事業場に導入すれば、職場の安全性向上に資するものとなる。またパーソナルコンピュータ購入費程度の比較的安価な設備投資で実施可能なため、限られた予算で安全活動を実施せざるを得ない中小企業にとっても有効な支援ツールとなる。
その他のインパクト
平成17年3月に開催された中央労働災害防止協会主催の講演会「ヒューマンファクターを考える(厚生労働科学研究費補助事業)」にて、約350人の安全担当者を対象に本研究成果を発表した。日本心理学会第69回大会(平成17年9月、於慶應義塾大学)にて、ワークショップ「新たな簡易注意機能測定法の開発と適用可能性」を開催し、本研究成果を発表した。第80回日本産業衛生学会(平成19年4月、於大阪国際会議場)にて「ヒューマンエラー・違反防止の心理学的接近」と題して、本研究成果を発表した(招待講演)。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
安達悠子、臼井伸之介、篠原一光 et al.
看護業務における違反事例の収集とその心理的生起要因に関する検討
労働科学 , 83 (1) , 7-23  (2007)
原著論文2
篠原一光、山田尚子、神田幸治 et al.
日常生活における注意経験と主観的メンタルワークロードの個人差
人間工学 , 43 (4) , 201-211  (2007)
原著論文3
和田一成、臼井伸之介、篠原一光 et al.
違反行動誘発課題における課題遂行コストとリスク認知について
電子情報通信学会技術研究報告 (安全性) , 107 (204) , 5-8  (2007)
原著論文4
Nakamura T., Usui S., Shinohara K. et al.
Consideration about Psychological Factors in Labour Accidents in Japanese Construction Work
PROBABILISTIC SAFETY ASSESSMENT AND MANAGEMENT , 132 , 1-6  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-