精神障害者の一般就労と職場適応を支援するためのモデルプログラム開発に関する研究

文献情報

文献番号
200733005A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の一般就労と職場適応を支援するためのモデルプログラム開発に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 雅明(東北福祉大学 総合福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 順一郎(国立精神・神経センター 精神保健研究所 社会復帰相談部)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 松為 信雄(神奈川県立保健福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は,精神障害者のための就労支援プログラムである「個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用プログラム(IPS)」の日本における定着可能性を検討することである。計画3年目の本年は,包括型地域生活支援プログラム(ACT)と地域活動支援センター(市川)における無作為割付方式による対照群をおいた介入の援助効果と,市川・宇和島のプログラムでの人材育成プロセスについて検討結果を報告する。
研究方法
ACTでのIPS研究では,平成17年11月から18年10月までの期間に国立精神・神経センター国府台病院精神科病棟に入院した者のうち,年齢,診断,居住地,過去の精神科サービスの利用程度,社会生活機能の5項目を考慮した加入基準を満たし研究参加に同意した30名を無作為に介入群15名と対照群15名に割り付け,ベースラインから1年を経過した者を分析の対象にした。市川の地域活動支援センターでのIPS研究では,平成18年8月よりウェイティングリスト法によるRCT介入評価研究を開始した。センター利用登録者596名のうちACTと同等の加入基準を満たした109名を対象として研究への参加を呼びかけ,同意が得られた37名にプログラム開始順位を無作為に割り当て,毎月3名ずつプログラムへの導入を行った。同意取得後6ヶ月以内にIPSを開始する対象者を介入群(18名),7ヶ月以降に開始する対象者を対照群(19名)とした。また,市川・宇和島では,人材育成に焦点を当てたスタッフへの聞き取り調査を実施した。
結果と考察
ACTでの介入研究では,1年間で介入群では2名,対照群では3名が一般就労していた。有意に介入群で過去2年間の精神医療利用頻度が高いなど,二群属性間の違いが大きいこと,サンプルが少ないことから援助効果の検証に課題を残した。一方で,市川・センターのIPS介入研究では,IPS開始6ヶ月後の一般就労率をみると,介入群は44.4%に及び,10.5%の対照群と比較して有意に高い就労率を実現していた。人材育成調査では,就労支援の経験がないスタッフでも専門家の適切なスーパーヴィジョンを受けること,チームアプローチとこまめな情報交換,成功事例を重ねることにより,就労支援の援助効果をあげるだけでなく,包括的な視点で利用者とかかわることができるようになることが明らかとなった。
結論
IPSをモデルとしながらも地域活動支援センターなど既存資源に採り入れて実践した結果,一般就労率が高まること,人材育成が比較的短期間でも可能であることから,このモデルを今後の障害者雇用施策に反映させる価値が高いと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733005B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害者の一般就労と職場適応を支援するためのモデルプログラム開発に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 雅明(東北福祉大学 総合福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 松為 信雄(神奈川県立保健福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は,精神障害者のための就労支援プログラムである「個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用プログラム(IPS)」の日本における定着可能性を検討することである。そのために(1)一般就労率向上などIPSの援助効果について実証的研究を行い,(2)我が国の文化にあったモデル開発に向けて試行的取り組みについてのプロセス研究を実施した。
研究方法
1)ACTでのIPS研究では,平成17年11月から18年10月までの期間に国立国府台病院精神科病棟に入院した者のうち,年齢,診断,居住地,過去の精神科サービスの利用程度,社会生活機能の5項目を考慮した加入基準を満たし研究参加に同意した30名を無作為に介入群15名と対照群15名に割り付け,ベースラインから1年を経過した者を分析の対象にした。市川の地域活動支援センターでのIPS研究では,平成18年8月よりウェイティングリスト法によるRCT介入評価研究を開始した。センター利用登録者596名のうちACTと同等の加入基準を満たした109名を対象として研究への参加を呼びかけ,同意が得られた37名にプログラム開始順位を無作為に割り当て,毎月3名ずつプログラムへの導入を行った。同意取得後6ヶ月以内にIPSを開始する対象者を介入群(18名),7ヶ月以降に開始する対象者を対照群(19名)とした。2)市川,宇和島で,人材育成に焦点を当てたスタッフへの調査を実施した。またIPSモデル・ツールキット開発の目的で,米国『EBPツールキット・プロジェクト』の用具類を翻訳した。
結果と考察
1)市川・センターのIPS研究では,IPS開始6ヶ月後の一般就労率をみると,介入群は44.4%におよび,10.5%の対照群と比較して有意に高い就労率を実現していた(Fisher直接検定,P=0.029)。ACTのIPS研究では,1年間で介入群2名,対照群で3名が一般就労していた。介入群で有意に過去2年間の精神医療利用頻度が高いなど二群属性間の違いが大きいこと,サンプルが少ないことから,短期間での援助効果の検証には課題を残した。2)人材育成調査では,就労支援経験がないスタッフでも専門家の適切なスーパーヴィジョンを受けること,チームアプローチとこまめな情報交換,成功事例を重ねることにより,支援の援助効果をあげるだけでなく,包括的な視点で利用者とかかわれるようになることが明らかとなった。また,米国のツールキット翻訳物を参考に作成した企業・行政向けのパンフレットの実用性が確認された。
結論
IPSを既存資源に採り入れた支援モデルを,今後の障害者雇用施策のなかで活用していく価値が高いと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
諸外国で援助効果が立証されている「個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用プログラム(IPS)」を国内で初めて試行し,既存社会資源と統合したモデルの無作為比較化試験において,介入群は対照群と比して有意に高い一般就労率を実現し,わが国でのこのモデルでの適用可能性を示唆した。
臨床的観点からの成果
IPSモデルのわが国での援助効果を立証する一方で,就労支援の経験がないスタッフでも専門家の適切なスーパーヴィジョンを受けること,チームアプローチとこまめな情報交換,成功事例を重ねることにより,就労支援の援助効果をあげるだけでなく,包括的な視点で利用者とかかわれるようになることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
米国のEBPツールキット翻訳物を参考に,企業・行政向けのパンフレットを作成した。
その他行政的観点からの成果
IPSをモデルとしながらも地域活動支援センターなど既存資源に採り入れて実践した結果,有意に一般就労率が高まること,就労支援の経験がなくとも適切な工夫をすることで人材育成が比較的短期間でも可能であることから,この支援モデルを今後の障害者雇用施策に反映させる価値が高いことを明らかにした。
その他のインパクト
平成20年4月に本研究関連の臨床プログラムがNHK教育テレビの「福祉ネットワーク」で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成20年2月に都内で研究成果発表会を開催し、多数の専門家の参加を得た。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-