過重労働等による労働者のストレス負荷の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200733004A
報告書区分
総括
研究課題名
過重労働等による労働者のストレス負荷の評価に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 明純(産業医科大学実務研修センター)
  • 尾崎紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 福土 審(東北大学大学院医学研究科)
  • 大平英樹(名古屋大学大学院環境学研究科)
  • 岩田 昇(広島国際大学心理科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過重労働等による労働者のストレス負荷を定量的に評価し、その脳内メカニズムを明らかにし、1)医師・産業保健スタッフが過重労働の可能性のある労働者の保健指導に使用できる「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」および2)客観的評価法を含んだ「過重労働等による労働者のストレス負荷評価テストバッテリー」を開発する。
研究方法
1.労働者の大規模コホートの追跡調査データを活用して、脳・心臓疾患およびうつ病リスクを算出する「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」を開発し、現場で試行した。2.(1)24名のボランティアを対象として、仕事の要求度-コントロール・モデルによる高ストイン群と低ストレイン群との間で大腸伸展刺誘発に対する前部帯状回吻側部(BA32)の活性を比較した。(2)確率学習課題によるストレス負荷検査システムを過重労働群と非過重労働群に実施した。(3)長時間労働者17名に24時間心拍変動測定を実施し、抑うつ群と正常群で自自律神経機能を比較した。3.ストレス反応、過重労働状況などの側面を同時に測定できるコンピュータ型の簡易システムを開発した。この測定システムを労働者391名に実施した。
結果と考察
1.現場における試行をもとに予知チャートに修正を加え,同活用マニュアルおよび予知チャート最終版を完成した。2.(1)高ストイン群は、低ストレイン群に比べて、大腸伸展刺誘発に対して前部帯状回吻側部(BA32)における活性が増大した。(2)過重労働群では課題成績が低く、状況の変化に対応する能力が低下していること、それは脳の前頭領域機能の低下によることが示された。(3)抑うつ群では正常群にくらべてHF-bandの就寝-覚醒時間帯平均値比及びLF/HF値の覚醒-就寝時間帯平均値比が低下していた。3. CATの項目提示は12項目程度までで収束しており、特にうつレベルの高い群では1/3程度の項目に答えるだけで、うつレベルが推定できることが明らかとなった。
結論
本研究事業で作成された過重労働等ストレス健康リスク予知チャートは日本人を対象とした疫学的根拠の上に作成され,過重労働による脳・心臓疾患およびうつ病の発症予防のための医師面接に活用できる。CATを利用した新しい調査票は、より少ない質問数で高い精度の測定が可能である。過重労働等によるストレスは前頭領域の機能低下を生じていることが明らかとなり、脳画像あるいは24時間心拍変動測定を利用した過重労働等によるストレスの客観的測定が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200733004B
報告書区分
総合
研究課題名
過重労働等による労働者のストレス負荷の評価に関する研究
課題番号
H17-労働-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 明純(産業医科大学実務研修センター)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 福土 審(東北大学大学院医学研究科)
  • 大平 英樹(名古屋大学大学院環境学研究科)
  • 岩田 昇(広島国際大学心理科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過重労働等による労働者のストレス負荷を定量的に評価し、その脳内メカニズムを明らかにし、客観的評価法を含んだ過重労働等による労働者のストレス負荷評価法を開発するために、以下の3つのテーマに関する研究を実施した。
研究方法
1.過重労働等ストレス健康リスク予知チャートの開発:1)3つのコホート研究および1つの症例・対照研究を実施した。2)過重労働の医師面接の実態に関する事業場調査を行った。3)コホートのデータを活用して、「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」を開発し、現場で試行した。2.過重労働等によるストレス負荷に関連する脳内メカニズムの解明とストレス評価法の開発:1)過敏性腸症候群患者およびボランティアを対象として、高低職業性ストレス群で大腸伸展刺誘発に対する前部帯状回吻側部の活性を比較した。2)確率学習課題によるストレス負荷検査システムを開発し、過重労働群に実施した。3)長時間労働者に対する24時間心拍変動測定による検査システムの有用性を検討した。3.過重労働等によるストレス負荷評価のための新しい調査票の開発:過重労働状況を複合的に測定する評価システムを開発し試行した。
結果と考察
1-1)仕事の要求度が高い場合に虚血性心疾患が、仕事の不安定さが高く、仕事上のコントロールが低い場合に脳血管疾患が、仕事のコントロールが低い場合に精神障害および自殺の危険度が高かった。労働時間は有意な関連性を示さなかった。2)事業場調査では、短時間で実施でき、事後措置につながる医師面接の方法が求められていた。3)産業医ヒアリングおよび現場における試行をもとに修正を加え、予知チャート最終版を完成した。2-1)職業性ストレスが高い群において前頭前野BA32における活性が増大していた。2)過重労働群では課題成績が低く、状況の変化に対応する能力が低下していること、それは脳の前頭領域機能の低下によることが示された。3)長時間労働下における抑うつ群ではHFおよびLF/HF値の就寝・覚醒比が低下していた。3.新しい評価システムは、少ない質問数で高い精度の測定が可能であった。
結論
本研究で作成された過重労働等ストレス健康リスク予知チャートは過重労働による脳・心臓疾患およびうつ病の発症予防のための医師面接に活用できる。過重労働等によるストレスは大脳前頭領域の機能低下を生じており、脳画像あるいは24時間心拍変動測定を利用した客観的測定が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2008-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200733004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
仕事の要求度・コントロールモデルが、虚血性心疾患、脳血管疾患、精神障害(うつ病を含む)による疾病休業、自殺に関連することが明らかとなった。
過重労働等によるストレスは大脳前頭領域の機能低下を生じていることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
本研究事業で作成された過重労働等ストレス健康リスク予知チャートは日本人を対象とした疫学的根拠の上に作成され,過重労働による脳・心臓疾患およびうつ病の発症予防のための医師面接に活用できる。また、脳画像あるいは24時間心拍変動測定を利用した過重労働等によるストレスの客観的測定が可能となった。
ガイドライン等の開発
過重労働による脳・心臓疾患およびうつ病の発症予防のための医師面接に活用できる「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」を開発した。
その他行政的観点からの成果
「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」は短時間で労働者の健康障害を予測できるため、中小規模事業場などでの長時間労働者の医師面接に活用できる。
その他のインパクト
「過重労働等ストレス健康リスク予知チャート」はHPで公開予定である(http://www.jstress.net)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsunaga M, Isowa T, Kimura K et al.
Associations among central nervous, endocrine, and immune activities when positive emotions are elicited by looking at a favorite person
Brain Behav Immun , 22 , 408-471  (2008)
原著論文2
Ohira H, Isowa T, Nomura M et al.
Imaging brain and immune association accompanying cognitive appraisal of an acute stressor
Neuroimage , 39 , 500-514  (2008)
原著論文3
井上彰臣,川上憲人,廣 尚典,宮本俊明,堤 明純
新指針に基づいた事業場におけるメンタルヘルス対策の状況,および改正労働安全衛生法に基づいた長時間労働者への医師面接の実施状況-事業場規模別による比較検討-
産業ストレス研究 , 15 (2)  (2008)
原著論文4
Tabuse H, Kalali A, Azuma H, et al.
The new GRID Hamilton Rating Scale for Depression demonstrates excellent inter-rater reliability for inexperienced and experienced raters before and after training.
Psychiatry Res , 153 (1) , 61-67  (2007)
原著論文5
Isowa T, Ohira H, Murashima M.
Immune, endocrine and cardiovascular responses to controllable and uncontrollable acute stress.
Biol Psychol. , 71 , 202-213  (2007)
原著論文6
Watanabe S, Fukudo S.
Abnormal relationship between dissociation and hypnotic susceptibility in irritable bowel syndrome.
Scand J Gastroenterol , 41 , 757-758  (2006)
原著論文7
Fukudo S, Saito K, Sagami Y, et al.
Can modulating corticotropin releasing hormone receptors alter visceral sensitivity?
Gut , 55 , 146-148  (2006)
原著論文8
Isowa T, Ohira H, Murashima M
Immune, endocrine and cardiovascular responses to controllable and uncontrollable acute stress
Biol Psychol , 71 (2) , 202-213  (2005)
原著論文9
Kimura K, Isowa T, Ohira H
Temporal variation of acute stress responses in sympathetic nervous and immune systems
Biol Psychol , 70 (2) , 131-139  (2005)
原著論文10
Kanazawa M, Endo M, Yamaguchi K, et al.
Classical conditioned response of rectosigmoid motility and regional cerebral activity in humans
Neuro- gastroenterol Motil , 17 , 705-713  (2005)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-