バイオテクノロジー応用食品等の安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
199700396A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテクノロジー応用食品等の安全性評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大谷 明(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 井上達(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 加藤順子(三菱化成安全科学研究所)
  • 鎌田博(筑波大学)
  • 熊谷進(国立感染症研究所)
  • 河野陽一(千葉大学)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 義平邦利(東亜大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 食品衛生調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バイオテクノロジーを応用した食品等の製造開発が急速に進められているため、これら食品の安全性評価の確認およびそのための方法を構築することが必要とされている。既に、組換えDNA技術応用食品・食品添加物のうち組換え体自体を食さない場合であってかつ新規性がない場合に関しては、製造指針および安全性評価指針が定められ運用されており、組換え体を食す場合でかつ新規性がない場合についても種子植物を対象とした安全性評価方法を示した。しかしその他のバイオテクノロジー応用食品等については、その安全性評価の方法の確立が急がれているが未だ十分な検討が行なわれていない。また、組換え作物の安全性に関しては、それを裏付けるさらなるデータが望まれている。本研究の目的は、これら指針策定の基礎となる知見を得るとともに、バイオテクノロジー応用食品等の安全性確保のための要件を究明することにある。
研究方法
1)遺伝子組換え植物の後代交配種の安全性評価のあり方について検討を加える。
2)後代交配種の構成成分および導入遺伝子の分析を行なうことによって、後代交配種の安全性に関する基礎データを作成する。また導入遺伝子のモ二夕リング方法を検討する。
3)バイオテクノロジー応用微生物食品を食する場合、とくに細換えDNA微生物そのものを食する場合の安全性評価に焦点を当てて研究を行なう。
4)新規導入蛋白のアレルゲン性評価に関し、現行のアレルゲン検出法を調査整理する。
5)バイオテクノロジー応用食品のための安全性試験のあり方について、調査研究を行なう。
6)国内外のバイオテクノロジー応用食品に対するバフリックアクセフタンスの状況を調査し、それに基づいて今後の対応策を構築する。
結果と考察
研究結果・考察・
1)後代交配種において遺伝子組換え植物に固有な問題については検討する必要がある。そのようなものとして、導入遺伝子とその産物の安定性、導入遺伝子が酵素として発現する場合の植物体内における反応生成物の安全性、摂取量・食用部位・加工法等の変更に伴う安全性の変化が考えられた。導入遺伝子とその産物の安定性については、導入遺伝子の構造・位置および遺伝子産物の発現量・発現場所等が変化していないことを確認することによって保証できるであろうこと、導入遺伝子が増酵素として発現する場合の植物体内における反応生成物の安全性については亜種レベル以上異なる品種と交配する場合にとくに綿密に確認する必要があるであろうこと、摂取量・食用部位・加工法等に大幅な変更を加える場合には安全性を再度確認するひつようがあることが考えられた。
2)大豆からDNAを抽出後、除草薪師村性遺伝子であるCMEPSPSおよびそのフロモーターであるP‐E3SSの部分を含むフライマーを用いてPCRを行ないゲJK電気激動で検索する方法を検討した結果、0.1 %の細換え大豆混入率を検知できることがわかった。組換え大豆と非細換え大豆を滋合し、豆腐を作り、その豆腐から同じ方法で検出を試みたところ、亀気泳動で試料を展開後峰E抗体でアレルゲンを検感度上、測定法に検討の余地があることが分かり、出する方法、リンパ球幼若{燈試験による抗原刺激に現在続行中である。この方法で市販豆腐15件を調査した結果、国産大豆100%使用豆腐3検体のうち1検体から無表示豆腐6検体中2検体から組換え大豆の混入が確認できた。 今後、さらに簡便なDNA抽出法、PCR法、ゲノミックサザンによる検出法、抗体を用いる蛋白検出方法などを検討し、簡便で高感度の検出方法を求める。
3)セルフクローニングの系またはナチュラルオ力レンスを示す近縁関係にある種を用いた遺伝的改変については、遺伝子供与体である微生物の由来について、従来の微生物利用食品の製造において使用微生物の由来について払われてきたのと同程度の配慮が払われるならば、すなわち宿王と著しく異なる環境由来の同種微生物の遺伝子を移入遺伝子として使うのでないかぎりは、従来技術で製造された食品同様に特段の安全性評価のための措置は必要とされないであろうと考えられた。しかしそうでない場合には、セルフクローニングの系またはナチュラルオカレンスを示す近縁関係にある種を用いた遺伝的改変よりも、異種のDNAを使用する組換えDNA技術の方が、安全性評価においてより慎重な考慮が必ず必要であるということはなく、安全性を評価するために必要な情報の量も多いとは限らないことが考えられることから、こうした遺伝的改変が食品分野に応用されたことのない新技術である間は食品としての安全性への慎重な配慮が必要であろうと考えられた。組換えDNA微生物そのものを食する場合の安全性評価に関しグルーフディスカッションにより妥当な判断を追及している。宿主については、種菌として意図的に食品に利用されてきた微生物、偶発的にフ口-ラの構成菌として食品に入り込んできた微生物、食経験のない微生物によって、また組換え体については挿入遺伝子の機能と由来、ベクターやマーカー遺伝子の存否、挿入遺伝子の位置等によって必要とされる安全性の確認事項が異なるであろうことが考えられている。遺伝子の伝達の可能性とその結果としての安全性については、伝達に関わる遺伝子が組換え体に挿入されていないこと、挿入遺伝子の挿入位置、挿入遺伝子が微生物として食されてきたかどうかなどから判断できるであろうことが考えられている。さらに具体的な安全性評価に必要な項目については現在検討中である。
4)アレルケン等の検出法として、アレルゲンを固相としたアレルゲン特異的IgE抗体の検出方法、電気泳動で試料を展開後IgE抗体でアレルゲンを検出する方法、リンパ球幼若化試験による抗原刺激に対する反応性評価、Th2細胞のサイトカイン産生試験によるアレルゲンに反応するT細胞の機能評価、抗塩基球からのヒスタミン遊離試験や抹消白血球からのロイコトリエン遊離試験によってアレルゲンを検索する方法などのin vito試験、皮膚試験やアレルゲン負荷試験などのin vito試験が使用されていることがわかったが、これら、試験に用いる食品蛋白アレルゲンの均一化がされていないこと、これら方法はいずれも未知の蛋白分子のアレルゲン性を検査するためのものではないことなどの問題点があることがかんがえられた。  
5)OECDワークショップ「新規食品の毒性学的ならびに栄養学的試験」における検討結果により、食品丸ごとや複合物の毒性試験の場合、構成栄養素に由来する問題、混合物に由来する複数の要素に起因する問題k、十分なレベルの感受性を得られ難いという問題などの認識があることがわかった。また、ヒトと試験動物種との相異点を克服するためにヒトでの試験を含む種々のin vito試験やin vito試験を組合せることが有効であろうこと、慢性毒性に対して早期に観察されるようなバイオマーカーを見いだすこと、バイオアベイラビリティ測定法法を追及することなどが今後必要であるとの認識があることがわかった。
6)表示に対する各国の対応を調査した。米国においては連邦控訴院が消費者の強い関心と知る権利のためにのみに、組換えウシソマトトロビンを投与したウシ由来の乳製品について情報公開をすべきことを示した。ヨーロッパ連合では、遺伝子改変生物を含む食品のみならず、遺伝子改変生物由来の成分を含む食品であって既存の食品や食品成分と同等とみなされない場合、特定の人口集団に健康への重大性をもち得る場合、倫理的な懸念を生じる場合には表示が必要であるとしている。カナダにおいては、健康上、安全上の懸念がある場合には強制表示を行う点でコンセンサスがある。
結論

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)