歯科医療における院内感染対策の評価指標の開発と有効性の検証

文献情報

文献番号
200732077A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医療における院内感染対策の評価指標の開発と有効性の検証
課題番号
H19-医療-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
泉福 英信(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 公文裕巳(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科泌尿器病態学)
  • 高柴正悟(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科歯周病態学)
  • 狩山玲子(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科泌尿器病態学)
  • 小森康雄(東京医科大学 口腔外科学)
  • 苔口 進(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科口腔微生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
唾液や血液が飛び散る可能性の高い歯科医療において、全身感染症を有する患者が来院した場合、院内感染が起り、感染者が広がる可能性がある。しかし、歯科においてはどのような院内感染指標のもと、医療を提供していけばよいか明確な基準が示されていない。そこで本研究では、歯科医療における院内感染対策の評価指標を開発し、その有効性を病院歯科および一般歯科院において検証していくことを目的とする。
研究方法
1. 歯科診療における院内感染対策の意識、知識、行動調査とその分析を利用した院内感染の評価指標の確立
2. バイオフィルム形成菌および形成指標の開発 
3. 院内感染における薬剤耐性菌の評価指標の開発
4. 歯周病診療における院内感染の評価指標の開発とその有効性
5. 院内感染の評価指標の細菌学的検証(分子生物学的手法に基づく歯科給水系の細菌汚染状況調査)
上記5項目の研究について検討を行った。
結果と考察
経済的な余裕のある若い歯科医師は院内感染対策を取り入れやすく、高齢の歯科医師は院内感染対策の取入れが難しいことが明らかとなった。現状の中でもとりこめる院内感染対策として12項目(防護メガネ、マスクの着用、問診票の作製、患者ごとのタービンヘッドの交換、スタンダードプリコーションのスタッフへの教育など)の評価指標を確立した。
在宅療養患者の口腔および気管内吸引カテーテルから薬剤耐性菌が検出された。専門的口腔ケアによる薬剤耐性菌の制御の必要性が示唆された。
院内感染対策のための細菌学的評価には,培養法,クローンライブラリー法,そしてT-RFLPなどを応用した細菌叢の解析が必要であることが明らかになった。
日常の歯科診療終了時、CDC;米国疾病予防管理センターが推奨する従属栄養細菌数500CFU/mL以下の基準に、給水系の3分の2が達していなかった。
結論
12項目の評価指標の院内感染対策を導入していくためには、経済的に負担の少なく手間の係らない評価項目からその対策を始め、高齢の歯科医師に対しては長期的な研修および実習が必要であることが明らかになった。また経済的に余裕のある若い歯科医師に対しては、評価項目の導入が容易であることが示唆された。在宅療養患者や易感染者の歯科治療における口腔および医療器具に付着した薬剤耐性菌を含む細菌叢の評価ならびに歯科ユニット給水系の細菌学的評価が院内感染対策の評価項目として重要であることも明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
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