医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究-患者ハラスメントに焦点をあてて-

文献情報

文献番号
200732071A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究-患者ハラスメントに焦点をあてて-
課題番号
H19-医療-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(国立大学法人三重大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,724,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は患者ハラスメント(以下PH)を「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力(セクシャルハラスメントも含む)」と定義の上、その実態を把握し効果的な発生防止対策と発生時の対処方法の提言を目的とし、最終的には医療安全の推進と医療崩壊に歯止めをかけることを目指す。
研究方法
19年度は全国の16施設に収集を依頼した。アンケート方式ではなく、原則として主任研究者が直接出向いて、安全管理責任者等に面談し、PHの内容だけでなく、その発生背景や、加害者の精神状態、病状、被害者の受けた影響や転帰についても情報提供を求めた。
結果と考察
116事例について情報が得られ、その解析からPH加害者は86%が患者本人であり、73%が男性で、40歳代が最も多かった。被害者は78%が女性であり、単独では女性看護師、次いで男性医師、事務系職員が多かったが、複数の職種に及ぶ事例が25%にみられた。PHの69%はまったくの言いがかりであると思われたが、31%はサービス面の不備や軽微な医療ミスが契機となった。言いがかりと思われる事例の中でも33%は原疾患や病状による精神的な状態が関与していると推測され、全体としてPHの55%に、医療特有の問題が関与していた。PH被害者は、一過性の暴言、暴力やセクシャルハラスメントにおいては恐怖や不快感、怒りを覚えたが、長期にわたるハラスメントや“死んだときの責任は?”などという事例は厭世的な気分が優位となった。このような事例に対処するには多大な人的な資源を必要とした。
結論
把握できたPH事例数は想定よりも少なかったが、これは実数を反映しているとは考えがたく、医療提供者がPHを報告しなければいけないという認識に乏しいこととPH事例を一元化して収集するシステムが未整備であることが影響していると考えられ、医療関係者にPHを組織全体で把握することの重要性を啓蒙することが必要なことが明らかになった。さらに、PHの半分以上が患者の状態やサービスの不備、軽微な医療ミスといった医療特有の問題が原因となっていることが明らかになり、現場での対応を困難にさせている理由であると考えられた。また、PHの形態として一過性型と長期型とは異なった対応が必要とも考えられ、さらに事例を積み重ね、具体的な発生防止策や発生時の対処方法を検討していく必要性が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-02-04
更新日
-