「医療事故対応100選:事故の確定・原因究明・患者への説明(ないしは和解)における具体的な作業手順」の作成に関する研究

文献情報

文献番号
200732070A
報告書区分
総括
研究課題名
「医療事故対応100選:事故の確定・原因究明・患者への説明(ないしは和解)における具体的な作業手順」の作成に関する研究
課題番号
H18-医療-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
前田 正一(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 呉 正美(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故が発生した場合に適時適切な初期対応ができるように、初期対応のフローチャートを作成することを目的とした。
研究方法
まず、フローチャートを作成する上で基礎となるテンプレートの作成した。次に、医療事故情報収集等事業(平成16年9月21日、医療法施行規則の一部を改正する省令(平成16年厚生労働省令第133号))で報告された事案や過去の裁判例などを素材として、実際にフローチャートを作成する事案を決定した。その上で、医療事故初期対応のフローチャートを作成した。

結果と考察
100以上の具体事案を検討のうえ、フォローチャート実例を32例(下記)、それらと同様の対応を行う事例(裁判例)を約100例示した。なお、研究方法で示すテンプレートを作成するにあたり、フローチャートを作成する際には、今後の対応策検討型、生じた事態の事後検証型、臨床倫理類型の3つのタイプに分類し検討を進めることが望ましいことが明らかになった。          

1.造影剤キットの重複使用
2.注射穿刺時の痺れ(血液検査)
3.内視鏡検査による穿孔
4.定期健康診断時の異常所見の見落とし
5.硬膜外麻酔で実施した手術後の呼吸停止
6.胃全摘手術後に発覚したガーゼ遺残
7.未滅菌の手術材料の使用
8.冠動脈形成術(PTCA)時の穿孔
9.入院中に発生した転倒
10.入院中の褥創の悪化
11.抗がん剤の過剰投与
12.がん告知後の自殺
13.入浴中の死亡
14.院内で発生した暴行事件
15.血管造影剤検査安静後の突然の死
16.気管カニューレの逸脱による患者の死
17.院内の複数の患者からのMRSA菌検出
18.未確立の手術の実施
19.宗教上の理由による手術時の輸血拒否
20.個人情報の管理(盗難)
21.C型慢性肝炎患者における肝がん発生
22.使用期限切れの止血剤の使用
23.胃ろう再挿入後の死亡
24.外来診療中に発覚したガス壊疽菌感染
25.新生児脳性麻痺
26.抗痙攣剤に関する療養上の説明義務
27.口腔内への乳歯落下
28.吐物誤嚥による窒息死
29.歯科麻酔後の死亡
30.全身麻酔薬の誤投与
31.突然の背部痛により受診した患者の死亡
32.腹腔鏡下前立腺全摘出術実施後の死亡
結論
本研究班は、医療事故の初期対応策は複雑になることが多く、対応についての準備(訓練)がなされていなければ、実際に事故が発生した場合の対応が不十分になるとの結論に達した。このことから、各医療機関は、自院のインシデントレポートの内容等を参考にして、日々、本研究と同様の作業を行っておくことが望ましいと思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200732070B
報告書区分
総合
研究課題名
「医療事故対応100選:事故の確定・原因究明・患者への説明(ないしは和解)における具体的な作業手順」の作成に関する研究
課題番号
H18-医療-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
前田 正一(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 呉 正美(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 今日、医療事故・紛争の解決にむけて様々な取り組みが行われているが、医療事故が真に解決されか、あるいはそれが紛争・訴訟へと発展するかは、行った医療行為に過失があったか否かということよりも、現場保存・原因究明から患者への説明に至る一連の初期対応が適切に行われたかどうかに大きく影響される。また、現場保存等、初期対応が適切に行われていなければ、仮に事案が訴訟で争われることになった場合でも、原因究明が困難となり、訴訟が長期化することになる。
 そこで、本研究は、医療事故が発生した場合に適時適切な初期対応ができるように、関連する論点につき理論の検討を行った上で、初期対応のフローチャートを作成することを目的とした。
研究方法
1.理論の検討
 関連する既存の文献などをもとに、主任、分担、協力研究者により関連する論点につき検討を加えた。

2.フローチャートの作成
 医療事故情報収集等事業(平成16年9月21日、医療法施行規則の一部を改正する省令(平成16年厚生労働省令第133号))のもとで報告された事案や裁判例などを素材に、主任、分担、協力研究者が、理論的検討を踏まえ、約100例の事案につき、医療事故初期対応の具体的な方法について検討した。
結果と考察
1年目においては、初期対応に関する論点につき理論的検討を行った。2年目においては、まず、フローチャートを作成する上で基礎となるテンプレートの作成を行い、そのうえで、100以上の具体事案を検討のうえ、フォローチャート実例を32例、それらと同様の対応を行う事例(裁判例)を約100例示した(具体例は、報告書本文を参照されたい)。

なお、先のテンプレートを作成するにあたり、フローチャートを作成する際には、今後の対応策検討型、生じた事態の事後検証型、臨床倫理類型の3つのタイプに分類し検討を進めることが望ましいことが明らかになった。          
結論
 
本研究班は、医療事故の初期対応策は複雑になることが多く、対応についての準備(訓練)がなされていなければ、実際に事故が発生した場合の対応が不十分になるとの結論に達した。このことから、各医療機関は、自院のインシデントレポートの内容等を参考にして、日々、本研究と同様の作業を行っておくことが望ましいと思われた。

また、医療事故の初期対応においては、関連する論点(例えば、警察届出)につき、多くの基礎知識が必要となることから、医療機関の管理者は、日々、理論面での知識の習得に努めることが望ましいと思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732070C