利用者の視点に基づく医療連携・退院支援のアウトカム指標の開発-ケアの場の移行に伴って発生する患者・家族の療養生活上のニーズに焦点をあてて-

文献情報

文献番号
200732069A
報告書区分
総括
研究課題名
利用者の視点に基づく医療連携・退院支援のアウトカム指標の開発-ケアの場の移行に伴って発生する患者・家族の療養生活上のニーズに焦点をあてて-
課題番号
H18-医療-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智子(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 尚己(北海道大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
まず、新たに医療処置などが必要となった状態で退院する神経難病患者に対し、本人・家族が自覚する退院に向けてのニーズと、それに対する支援とその効果について検討した。また、がん患者とその家族から見た療養の場の移行に際してのニーズと、退院支援の経過などについて分析した。さらに病棟看護師に対する退院支援に関する教育プログラムを開発し、その効果を検証することを目的とした。
研究方法
神経難病患者調査においては、1週間以上入院しており、新たに医療処置などが必要となった患者を対象とした。がん患者調査においては、悪性疾患の診断を受けており、専門部署による退院支援を受け、退院の準備を進めている患者を対象とした。これらの調査においては、カルテ等からの情報収集、患者・家族への半構造的面接、病棟や支援部署のスタッフからの情報収集、可能な場合は退院後の訪問調査を行なった。教育プログラムにおいては、特定機能病院の内科病床の病棟看護師256名を対象とした准実験研究を行い、介入群には勉強会、定期カンファレンス、退院後の患者宅訪問からなるプログラムを実施した。
結果と考察
神経難病患者・家族は、医療処置、緊急時対応、サービス、今後の病状などに不安を抱いていた。入院期間や治療内容等の丁寧な説明と変更時の迅速な対応、医療処置の習得に向けた配慮、医療処置を行う上で見落としやすい注意点のフォロー、医療機器の入念な準備、在宅ケア提供者との密接な連携などが重要と考えられた。また、がん患者・家族においては、転院調整の場合、スムーズな転院ができずに支援途中で死亡するケースが多く、早期から、今後の療養方法や療養の場の確保に向けた患者・家族との話し合いが必要であることが示唆された。在宅療養への移行では、医療処置やケア指導、日常生活支援、急変時の対応などに対する支援の調整が不可欠であることが示唆された。
教育プログラムの評価については、介入群で訪問看護・難病対策・退院支援専門部署に関する知識の向上、病棟の退院支援に関する雰囲気や病棟からの支援提供の向上、退院支援への態度・スクリーニング実践の向上という効果が認められた。
結論
退院支援における丁寧な説明と迅速な対応、医療処置の習得に向けた教育、医療機器の入念な準備、在宅ケア提供者との密接な連携の重要性が再確認された。また、退院支援教育プログラムにより、看護師の知識や態度が向上し、病棟全体へも影響を与えられる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200732069B
報告書区分
総合
研究課題名
利用者の視点に基づく医療連携・退院支援のアウトカム指標の開発-ケアの場の移行に伴って発生する患者・家族の療養生活上のニーズに焦点をあてて-
課題番号
H18-医療-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永田 智子(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 尚己(北海道大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療連携に伴うケアの場の移行に当たって生じる患者・家族の療養生活上のニーズの変化を、入院前・入院中・退院後の時期ごとに把握し、医療連携・退院支援の患者・家族の視点からのアウトカム指標として活用できるよう整理することである。
研究方法
病状や治療に変化があった状態で自宅に退院する神経難病患者に焦点を当て、患者へのインタビュー調査と退院後の追跡調査を実施した。平成19年度には、対象をがん患者にも拡充し、患者・家族へのインタビュー調査を実施した。
また、特定機能病院に勤務する病棟看護師の退院支援の実践状況と課題を、グループインタビューにより調査した。それを踏まえ、病棟看護師への教育プログラムを作成し、介入群と対照群を設けて介入群にプログラムを実施し、その効果を検討した。
結果と考察
病状や治療に変化があった状態で自宅に退院することが予測される患者は、入院中も病状・介護等にさまざまな不安を抱えていた。また、予定の急な変更、誰に相談してよいのかわからない、などの状況がある場合には大きな不満を有していた。入院期間や治療内容等の丁寧な説明と変更時の迅速な対応、医療処置の習得に向けた配慮、医療処置を行う上で見落としやすい注意点のフォロー、医療機器の入念な準備、在宅ケア提供者との密接な連携などが重要と考えられた。がん患者の在宅療養への移行の場合は、患者の医療処置やケア指導、日常生活支援、急変時の対応などに対する支援の調整が患者・家族にとって不可欠な退院支援であることが示された。
看護師調査からは、病棟看護師や他の職種の知識や認識が不十分な実態が示された。新たな退院支援教育プログラムを作成し、その効果を見たところ、介入群では訪問看護、難病対策、退院支援専門部署に関する知識が増すと共に、病棟の退院支援に関する雰囲気、病棟からの支援提供への評価が向上し、スクリーニングの実践が向上するという効果が認められた。また、退院支援に対する態度についても介入群で改善が認められた。

結論
退院支援においては、早めの情報提供・十分な話し合い、特に、入院期間や治療内容等の丁寧な説明と変更時の迅速な対応、医療処置の習得に向けた配慮、医療処置を行う上で見落としやすい注意点のフォロー、医療機器の入念な準備、在宅ケア提供者との密接な連携などが重要と考えられた。一方、病棟看護師に対する教育プログラムは知識や態度・病棟の雰囲気の向上に効果があることが示され、活用可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732069C