不活化ワクチンの改良に関する研究

文献情報

文献番号
199700392A
報告書区分
総括
研究課題名
不活化ワクチンの改良に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
堺 春美(東海大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田代真人(国立感染症研究所)
  • 保井孝太郎(東京都神経科学総合研究所)
  • 五十嵐章(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 木村三生夫(東海大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 ワクチン・予防接種対策総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本脳炎ワクチンは製造に感染マウス脳乳剤を用いているので、その副反応としてのアレルギー性脳脊髄炎との関連が問題にされている。また、マウス脳由来の感染性粒子の混入も完全には否定できない。コストの問題、製造中にウイルスに直接接触するためのバイオハザードの問題もあり、製造におけるマウス脳使用からの脱却が急務である。本研究の目的は、日本脳炎ウイルスの国際レベルでの分子疫学的研究、日本脳炎ウイルスの外被膜糖蛋白質の中和活性に関する研究、組織培養による日本脳炎ワクチンの開発にある。
不活化インフルエンザHAワクチンの高齢者への接種が推奨されているが高齢者を対象とした研究はなされたことがないので、高齢者における抗体反応の検討を行うことを目的とした。
研究方法
タイ、マレイシアで採取した蚊から分離した日本脳炎ウイルス株の交叉中和試験と外被膜糖蛋白質(E)遺伝子の塩基配列解析、E蛋白質の構造構築解析、日本脳炎ワクチンの品質管理の検討、新ワクチン開発のための継代培養細胞における日本脳炎ウイルスの増殖性を検討しワクチン化の可能性を検討した。
老人保健施設における入所者および職員の希望者を対象に現行の不活化インフルエンザHAワクチンを接種し接種前後の抗体測定のために採血を行った。
結果と考察
1992-1994年のマレイシア分離株は遺伝子型I, II, IIIに分類された。1972-1993年タイ分離株は3亜型に分けられ、いずれも日本脳炎ワクチン製造株に属していなかった。E蛋白質の構造構築の解析によりエンベロープ粒子形成系を開発した。
マイクロキャリアーを用いた浮遊培養法で日本脳炎ウイルスの大量培養が可能であることが確認され、この方法で北京-1株を培養し、不活化精製した試作日本脳炎ワクチンの力価は現行日本脳炎ワクチンと同等以上であることが確認された。
現行日本脳炎ワクチンの力価試験であるマウスの抗体レスポンスをプラック減少法で見る方法を近代的かつ合理的な方法に変更することを検討し、Vero細胞を使用してWHO標準法により力価を算出するのが妥当であると結論した。
高齢者対象の不活化インフルエンザHAワクチンの接種試験は順調に終了した。
現行日本脳炎ワクチンについては東南アジアの流行地で分離された野外株の遺伝子解析を行って、ワクチン株である北京株とのずれを監視する必要がある。また日本脳炎ワクチンの検定法は長い間再検討されていないので、この機会に現在の技術レベルでの検定法の確立が望まれる。
結論
組織培養日本脳炎ワクチンは実用化に近いレベルまで研究が進められた。不活化インフルエンザHAワクチンについても検討が進められた。
以上、現行の不活化ワクチンの中での重要課題である日本脳炎ワクチンとインフルエンザワクチンに関する改良開発研究を行い、成果を収めた。

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研究報告書(紙媒体)