がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究

文献情報

文献番号
200732045A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療による副作用の緩和に関する統合医療の研究
課題番号
H18-医療-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
下山 直人(国立がんセンター中央病院手術部)
研究分担者(所属機関)
  • 花輪 壽彦(北里研究所 東洋医学総合研究所)
  • 津嘉山 洋(筑波技術大学保健科学部附属東西学統合医療センター)
  • 河野 勤(国立がんセンター中央病院 通院治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的な根拠に基づく統合医療の施行のための、緩和医療における統合医療の役割の現状調査、統合医療に置ける鍼灸、漢方薬治療の臨床治験による裏付けが主たる目的である。また、がん患者のQOL向上において鍼灸、漢方の果たす役割を検討する。
研究方法
1.がん患者の苦痛緩和に関する鍼灸治療の現状を検討するために以下の事を行っている。
①ガイドライン作成の基礎資料を作ると同時に、データベースの構築を目指す。②鍼灸のエキスパートの間で、がんと鍼灸治療に関わる情報交換を行い、連携をはかる。③地域での連携に関するアンケート調査を行った。
2.次年度に化学療法の副作用である末梢神経障害に対する鍼治療の臨床試験を国立がんセンター中央病院で実施することを予定しており、そのプロトコールを作成した。
3.がん患者の苦痛緩和における漢方医療の役割に関する研究を漢方薬の代表である疎経活血湯(そけいかっけつとう)の併用により、治療中や治療後に頻発する末梢神経障害が予防軽減されるかどうかを検討した。
4.化学療法の末梢神経障害に対しての予防効果をNSAIDs(COX-2 inhibitor)で検討するための研究を行った。
結果と考察
(結果)
1.乳がんに対しての鍼灸治療:
 ①乳がん患者の術後の痛みしびれが19例、抗がん剤による痛み、しびれが13例であった。術後痛 に関しては著効が9例(28%)、有効は37.5%であった。
 ②抗がん剤に関しては、痛みしびれが軽減した症例は16%であり、突発痛の軽減9%、家事が可能 となった9%、食欲の改善9%それぞれがみられた。
 ③乳房切断後痛に関しては、痛み、ひきつれ簡の軽減37%、胸苦しさの軽減16%にみられた。
2.肺がん
術後の痛みに関しては40%でVAS3/10以下の著効を示した。
その他は現在集計中である。
(考察)
 鍼灸の効果は、西洋薬との併用によるQOL改善効果が中心となっていることが判明した。成因から考えると、治療に伴う苦痛に対しての有効性が、鍼灸における現在のがんの苦痛緩和において中心となっていることがあらためて示唆された。
結論
鍼灸、漢方は、西洋医学との連携により、副作用対策、難治性の神経障害性疼痛など患者のQOLを向上させる役割を担っていると考えられる。臨床治験によって、それらを裏付ける必要がある。治療のみならず予防という観点も重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-06-12
更新日
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