国内外における医療事故・医事紛争処理に関する法制的研究

文献情報

文献番号
200732004A
報告書区分
総括
研究課題名
国内外における医療事故・医事紛争処理に関する法制的研究
課題番号
H17-医療-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 由和(静岡県立大学 経営情報学部公共政策系)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 榮明(新潟医療福祉大学)
  • 寺野 彰(独協医科大学)
  • 淡路 剛久(早稲田大学)
  • 西野 喜一(新潟大学大学院)
  • 我妻 学(首都大学東京)
  • 児玉 安司(三宅坂総合法律事務所・東京大学)
  • 神作 裕之(東京大学)
  • 岩田 太(上智大学)
  • 山口 斉昭(日本大学)
  • 山田 文(京都大学)
  • 平野 哲郎(龍谷大学)
  • 佐藤 雄一郎(神戸学院大学)
  • 前田 正一(東京大学)
  • ルークサトウ(Harvard Medical School)
  • 宮本 敦史(大阪大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故・医事紛争処理にかかわる政策的方向性を法制度にまで踏み込み検討することを目的とした。
研究方法
本研究は、①「国内外の医療事故情報の収集に関する法的・政策的論点」、②「国内外の医療従事者の免許・懲戒・専門医制度のあり方」、③「国内外の裁判外紛争処理(ADR)制度の現状とその方向性」、④「患者経験評価と医事紛争要因の実証研究」という論点を設定し、相互の関係性を加味した上で上記目的に関して、インタビュー、既存文献調査、およびアンケート調査により検討を行った。
結果と考察
上記①では、英国、米国での現地調査に基づく医療事故収集システムの論点や問題点、およびその他の国々に関する文献資料を基にした情報収集と分析、豪国のCoroner制度、仏国の新たな事故情収集およびその分析に関する制度に関する検討を行った。また、国内では約400の医療機関に対してアンケート調査を行いその実証的な把握を試みた。
 上記②では、諸外国における懲罰のあり方と再教育のあり方について医療従事者における自己規制という観点から検討を行った。また免許・懲戒・専門医制度などに関する近年の欧米諸国における潮流としてはたんにその手続き上の厳密化のみならず、個々の医療専門職らの業務・業績上のアウトカムに着目する方向性が示された。
上記③では、医療版裁判外紛争処理制度に求められる制度的基盤、法的整備の問題点、及び政策的な方向性に関しての論点整理を行い、医療版裁判外紛争処理制度の可能性を検討した。国外では、主に仏国および北欧、米国などにおける、医療分野における裁判外紛争処理なかでも補償制度に関する論点整理を行った。また理論的な検討として、裁判外紛争処理制度における複数の論点、および今後に日本において導入が検討されている、無過失補償制度に関する保険学的な観点からの論点整理と検討を行った。
上記④では、医療事故及び医療紛争にかかわる患者経験および広く国民一般における医療安全の認識に関する具体的な実証研究のプロトコルを検討し、データの確立を行なうとともに、それらに基づき意識調査を行った。今後、継続的にこうした調査スキームの確立によりある種の政策評価がなしうると考えられた。
結論
医療事故・医事紛争に関わる問題点を整理し、政策上の論点を明確化したうえで法制的な面にまで踏み込んだ検討の必要性が具体的に示された。今後は、医療事故・医事紛争処理を、国民が納得する形で制度設計を行うとともに、政策的なプライオリティをも明確化する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200732004B
報告書区分
総合
研究課題名
国内外における医療事故・医事紛争処理に関する法制的研究
課題番号
H17-医療-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 由和(静岡県立大学 経営情報学部公共政策系)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 榮明(新潟医療福祉大学)
  • 寺野 彰(独協医科大学)
  • 淡路 剛久(早稲田大学)
  • 西野 喜一(新潟大学)
  • 我妻 学(首都大学東京)
  • 児玉 安史(三宅坂総合法律事務所・東京大学 医学部)
  • 神作 裕之(東京大学)
  • 岩田 太(上智大学 )
  • 山口 斉昭(日本大学 )
  • 山田 文(京都大学)
  • 平野 哲郎(龍谷大学 )
  • 佐藤 雄一郎(神戸学院大学 )
  • 前田 正一(東京大学)
  • ルーク サトウ(Harvard Medical School)
  • 宮本 敦史(大阪大学)
  • パトリシアカツラー(ワシントン大学)
  • 加藤 久雄(慶応大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故・医事紛争処理にかかわる政策的方向性を法制度にまで踏み込み検討すること。
研究方法
本研究は①「国内外の医療事故情報の収集に関する法的・政策的論点」、②「国内外の医療従事者の免許・懲戒・専門医制度のあり方」、③「国内外の裁判外紛争処理(ADR)制度の現状とその方向性」、④「患者経験評価と医事紛争要因の実証研究」という論点を設定し、相互の関係性を加味した上で検討を行った。
結果と考察
①では、イギリス(National Patient Safety Agency, National Reporting and Leaning System)、アメリカ(マサチュウセッツ州厚生省事故報告システム、同州医師免許登録委員会有害事象報告システム)、オーストラリアにおけるCoroner制度による医療安全対策、フランスにおける新たな事故情収集及びその分析に関する制度(医療リスク監視所)の検討を行った。また、国内の医療機関に対して医療事故報告制度を中心とする調査と実証的な検証を試みた。
 ②では、諸外国における懲罰のあり方と再教育のあり方について「医療従事者の専門性」と医療従事者における「自己規制」という観点から検討を行った。さらに免許・懲戒・専門医制度などに関する近年の欧米諸国における潮流として、単に手続き上の厳密化のみならず、個々の医療専門職らの業務・業績上の複数のアウトカムに着目する方向性が示された。
③では、医療版裁判外紛争処理制度に求められる制度的基盤、法的整備の問題点、及び政策的な方向性に関しての論点整理を行い、医療版裁判外紛争処理制度の可能性を検討した。また国内における他領域紛争処理制度の概要と分析(鉄道航空機事故調査委員会、海難審判制度、労働委員会制度、公害紛争処理制度、交通事故紛争処理制度、建築紛争処理制度、公害健康被害補償制度等)を行った。さらに他の先進諸国の医療分野の裁判外紛争処理制度(ドイツ、フランス、アメリカ、イギリス、北欧(主にスウェーデン)、ニュージーランド)に関して検討を行い、日本における医療分野における裁判外紛争処理制度の法的基盤と政策的方向性を明確化した。
④では、医療事故及び医療紛争に関わる患者経験および広く国民一般における医療安全の認識に関する具体的な実証研究のプロトコルを検討し、その実証的なデータの確立を行った。
結論
医療事故・医事紛争に関する政策上の論点を明確化したうえで法制的な面にまで踏み込んだ検討の必要性が具体的に示された。今後は、こうした医療事故・医事紛争処理について、政策的なプライオリティを明確化する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究における専門的・学術的な側面としては、医療事故にかかわる紛争処理の諸側面に関して、理論的かつ実証的なデータを提示した点にある。なかでもフランス、ドイツ、アメリカ、ニュージーランド、スウェーデンなどにおける医療にかかわる無過失保障制度の最新情報を収集し、さらにそれを日本における適応可能性という点から理論的な検討をおこない、さらに医療事故報告制度、医療の質と安全に関して、政策評価に用いうる実証的データの構築は著しい成果と言える。
臨床的観点からの成果
研究成果においては直接的に臨床に寄与する知見は示されないが、間接的な知見としては、本研究班による様々な資料および情報の提供は、死因究明などの検討に活用されてきており、結果として今後の医療機関および医療従事者らの医療行為における活動に大きな影響を及ぼすものであると考えられる。たとえば、現在の死因究明制度に関しては、さまざまな制度が参考とされたが、中でもオーストラリアなどにおけるCoronerにおける医療安全への関与の仕組みが重要な論点とされた。
ガイドライン等の開発
主たるものは2006年7月ニュージーランドおよびスウェーデンにおける無過失保障について、2006年7・8月医療安全政策における補償問題、ドイツ・フランスのADR、オーストラリアにおける医療紛争処理:Victoria州Office of Health Service Commissioner の機能に焦点をあてて、2006年8月医療安全にかかわる海外コンタクト先、2006年9月諸外国医事紛争処理制度、2007年4月諸外国の死因究明の在り方について、諸外国の死因究明制度に係る予算、人員規模に関して。
その他行政的観点からの成果
本研究班により次の発表などがなされた。「諸外国における医事紛争処理制度(「無過失補償制度」など)の現状に関して」、自民党政務調査会・社会保障制度調査会/医療紛争処理のあり方検討会講演、2006年11月14日。「諸外国における医療に係わる紛争処理精度に関して」、公明党・医療事故に係る無過失補償制度等検討ワーキングチーム検討会講演、2006年10月12日。「諸外国における医療に係わる紛争処理制度に関して」、厚生労働省医政局会議講演、2006年9月12日。
その他のインパクト
本研究成果に関しては、研究成果など普及啓発事業(医療安全・医療技術評価研究推進事業)の一環として、研究成果発表プログラムを開催した。具体的には、「医療安全に関する研究発表会」として、平成18年11月22日に国立オリンピック記念青少年総合センターカルチャー棟大ホールにおいて開催されたものである。研究発表会は広く一般にも公開され(参加者596名)、本研究成果をふまえた議論を行ったものである。

発表件数

原著論文(和文)
31件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
13件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
濱野強、藤澤由和
米国における州医療事故報告制度の動向に関する研究
新潟医療福祉学会誌 , 6 (1) , 56-63  (2006)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-