産科領域における医療事故の解析と予防対策

文献情報

文献番号
200732003A
報告書区分
総括
研究課題名
産科領域における医療事故の解析と予防対策
課題番号
H17-医療-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 州博(東北大学医学部)
  • 平松 祐司(岡山大学医学部)
  • 金山 尚裕(浜松医科大学産婦人科)
  • 野田 洋一(滋賀医科大学産婦人科)
  • 齋藤 滋(富山大学産婦人科)
  • 田邊 清男(東京電力病院産婦人科)
  • 川端 正清(同愛記念病院産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産科医療事故防止策を検討するために、日本産婦人科医会「産婦人科偶発事例報告事業」において報告制度の枠組みを構築した。また、我が国の妊産婦死亡、分娩時に死に至る可能性のある重症管理妊産婦の約半数は大量出血に起因することから、分娩時異常出血に関する調査を行い、その定義の再考、臨床の現場に適したガイドラインの作成・確立・周知の必要性について検討した。また、妊産婦死亡となる可能性の高い大量出血症例に対するrFVIIaの有用性を検討した。さらに地域特性にあったオープンシステムを運営している自治体から、その成果と今後の課題をまとめ、産科医不足、分娩施設の減少への対応策を検討した。
研究方法
妊産婦死亡例、新生児・胎児死亡例、脳性麻痺例について偶発事例を集積し、その原因、背景、事故回避の可能性、医事紛争(可能性)の有無が集計できるように報告制度を改善した。また、日本産科婦人科学会周産期委員会で集積した5年間の全国周産期データベースを利用して分娩時出血量の現状を調査した。また学会報告されたrFVIIa使用の4例について検討した。
結果と考察
偶発事例報告は日本産婦人科医会会員の自主性に任せられており、時として報告されていないと推察される。今後は、守秘義務を担保した上での医療事故報告制度の一本化、情報の共有化などが今後の課題である。分娩時出血量の調査より、日本産科婦人科学会で定義された分娩時異常出血量(500ml)よりも、臨床の現状ははるかに出血量が多く、定義の再考、児数・分娩様式による正常値の区別が求められた。
結論
偶発事例の報告制度から、新生児脳性麻痺事例のうち「医事紛争あり」47.4%、「医事紛争不明」52.6%、「紛争無し」0%であった。紛争リスクの高い新生児脳性麻痺に対する無過失補償制度の適応と、更なる集積方法の改善が求められる。出血に関しては、分娩時異常出血の定義を児数・分娩様式別に再考し、臨床にあったガイドライン、指針の作成・確立・周知の必要性が明らかとなった。rFVIIaの使用については、血栓症などの問題点や使用上の注意が必要であり、今後の更なる症例の集積、解析が必要である。セミオープンシステムの導入により、産科医療の標準化、ハイリスク妊婦の早期発見・周産期センターへの集約化が促進され、医療事故の防止につながるものと期待される。これらの成果は今後、新たに参入する自治体の指針・提言となるだろう。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
200732003B
報告書区分
総合
研究課題名
産科領域における医療事故の解析と予防対策
課題番号
H17-医療-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 州博(東北大学医学部産婦人科)
  • 平松 祐司(岡山大学医学部産婦人科)
  • 金山 尚裕(浜松医科大学産婦人科)
  • 野田 洋一(滋賀医科大学産婦人科)
  • 斉藤 滋(富山大学産婦人科)
  • 田辺清男(東京電力病院産婦人科)
  • 川端正清(同愛記念病院産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産婦人科医療事故防止を検討するための報告制度の枠組みと調査結果を検討した。また、妊産婦死亡の原因と背景を調査した。さらに地域特性にあったオープンシステムを運営している自治体から、その成果と今後の課題をまとめた。
研究方法
日本産婦人科医会「産婦人科偶発事例報告事業」、日本産科婦人科学会「妊産婦死亡調査」、「妊産婦死亡を含めた重症管理妊産婦調査」を解析し、オープンシステムを運営している自治体の実施状況を調査した。
結果と考察
妊産婦死亡例、新生児・胎児死亡例、脳性麻痺例について偶発事例を集積し、その原因、背景、事故回避の可能性、医事紛争(可能性)の有無が集計できるように報告制度を改善した。胎児・新生児死亡、新生児脳性麻痺例の多くは医事紛争となっており、分娩時の胎児モニターと適切な時期の帝王切開の重要性が示唆された。偶発事例報告は日本産婦人科医会会員の自主性に任せられており、守秘義務を担保した上での医療事故報告制度の一本化、情報の共有化などが今後の課題である。
妊産婦死亡の背景には、その約73倍の分娩時に死に至る可能性のある重症管理妊産婦の存在が明らかとなり、年間約4,000-5,000人の重症管理妊産婦に対応可能な周産期システムの構築が必要である。我が国の妊産婦死亡、重症管理妊産婦の約半数は大量出血に起因するが、分娩時異常出血に関する調査の結果、日本産科婦人科学会で定義された分娩時異常出血量(500ml)よりも、臨床の現状ははるかに出血量が多く、定義の再考、児数・分娩様式による正常値の区別が求められた。また、妊産婦死亡となる可能性の高い大量出血症例に対するrFVIIa使用に関して、学会報告されている4例はrFVIIa投与後にすべて止血・改善しているが、血栓症などの問題点や使用上の注意が必要であり、今後の更なる症例の集積が求められた。
地域特性にあったオープンシステムの導入により、産科医療の標準化、ハイリスク妊婦の早期発見、周産期センターへの集約化、医療事故の防止が期待される。
結論
紛争リスクの高い新生児脳性麻痺に対する無過失補償制度の適応、重症管理妊産婦に対応可能な周産期システムの構築、分娩時異常出血の定義を児数・分娩様式別に再考し臨床にあったガイドラインの作成・確立・周知の必要性が明らかとなった。また、オープンシステムの成果は、今後新たに参入する自治体の指針・提言となるだろう。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200732003C