喫煙者の問題行動の解明に関する研究

文献情報

文献番号
199700386A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙者の問題行動の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
中原 俊隆(京都大学大学院医学研究科社会医学系専攻)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康増進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喫煙問題はWHOにても重要な問題となっている。日本においては他の先進国と比較して依然として喫煙率は高く、男性の喫煙率は減少傾向にあるが、女性、特に20歳代は増加傾向にある。また、職業別では看護婦の喫煙率が世界的に高いことが知られている。そこで、看護学校と女子大・短期大学 を比較し、看護婦の喫煙率の高さが就職後に生じるのか、看護学生時代からの問題であるのかを検討した。
研究方法
看護学校5校(関東及び九州地方の国公立看護学校それぞれ1校、近畿地方の準公立看護学校1校、近畿地方の私立の看護学校1校 、近畿地方の私立の進学コース(准看護婦免許所持者の正看護婦への学校)1校 )、女子大・短大2校(近畿地方の国公立女子大学1校、近畿地方の私学女子短期大学1校)に対し、アンケート調査を行った。アンケートは密封法で行った。また、たばこの価格による喫煙率のコントロールにつき、文献的検索を施行した。さらにインターネットによる禁煙指導の実状を検討した。
結果と考察
回収率は看護学校97.24%、女子大・短大90.86%であった。回答数は看護学校866回答、女子大・短大505回答であった。喫煙率(現在喫煙している者)は 、看護学校22.2%、女子大・短大10.9%であった。これはt検定危険率5%で有意に看護学校の方が喫煙率が高かった。喫煙率以外に有意に(危険率5%)に差があった項目は、年齢、居住形態 、喫煙の害に対する知識量であった。年齢は看護学校20.31±2.01歳、女子大・短大19.98±1.21歳であった。進学コースを除き、かつ女子短大にあわせるために第2学年までにして年齢を比較しても有意に(危険率5%)看護学校の方が年齢が高かった。看護学校の喫煙率の高さに年齢が関与していることが示唆された。居住形態は、看護学校では、女子大・短大と比較して「寮」が多く「下宿」が少なかった。これは、看護学校では全寮制に近い形態をとるところがあることによるものと考えられた。居住形態と 喫煙率の関係は看護学校と女子大・短大では違っており看護学校では「下宿」で喫煙率が高い傾向がみられたが、女子大・短大では「家族と同居」している方が喫煙率が高かった。寮が禁煙であるため喫煙者が寮をでるからか、監督者がいないため 下宿の方が喫煙するのかは今回の調査からは明らかにしえなかった。有意差のあった 喫煙の害に対する知識量であるが、喫煙者自身に対する害11項目、周囲に対する害5項目から知っている項目を複数選択させることによって調べた。喫煙者自信に対する害では、看護学校 6.56±2.88項目、女子大・短大 4.19±2.32項目 であった。周囲に対する害では看護学校 2.92±1.61、女子大・短大 2.07±1.22であった。よく知られている項目としては喫煙者に対しては「肺癌の増加」「咳、痰の増加」であり、周囲に対しては「副流煙の方が有害物質濃度が高い」であった。この知識量で有意差がでたことは、喫煙に対する 知識が増えることが必ずしも禁煙に結びつかないことを示していると考えられた。今回の調査からは看護婦の喫煙率が高いのは看護学生からであることが示唆された。しかし、その原因は、女子大・短大との比較ではあまり明確にされなかった。看護学校入学以前の喫煙についての 調査も必要であると考えられた。看護学校と女子大・短大の比較以外では、若年女性の喫煙行動に関して以下のことがわかった。
1.喫煙開始の動機としては「好奇心・興味本位」が多く、ついで「友人の影響(喫煙しているのをみたり、勧められたり)」が大きい。
2.「母親」「女性の友人」から喫煙の注意を受けることが多いが、禁煙にまで行動を起こさせるのは「男の友人」である。
3.たばこを吸う意味としては「精神安定・ストレス解消」が多い。
4.喫煙者でも禁煙を考えている人は多い。
5.たばこの価格は現在の3倍以上の値上げで喫煙者が減る可能性がある。
今後の禁煙教育に対しては以上のことを考慮する必要があると考えられた。
文献上、たばこの価格による喫煙率コントロールは可能性が示された。
インターネットによる禁煙指導は、禁煙外来による指導に比較しても効果に遜色はなかった。
結論
看護学生の喫煙率は当女子大・短大生より高い傾向がみられた。すなわち、看護婦の喫煙率の高さは看護学校当時からの問題であることが示唆された。しかし、その原因は 、年齢の問題以外は今回の調査では明確にできなかった。しかし、若年女性の喫煙に関して以下のことがわかった。
1.喫煙開始の動機としては「好奇心・興味本位」が多く、ついで「友人の影響(喫煙しているのをみたり、勧められたり)」が大きい。
2.「母親」「女性の友人」から喫煙の注意を受けることが多いが、禁煙にまで行動を起こさせるのは「男の友人」である。
3.たばこを吸う意味としては「精神安定・ストレス解消」が多い。
4.喫煙者でも禁煙を考えている人は多い。
5.たばこの価格は現在の3倍以上の値上げで喫煙者が減る可能性がある。
6.喫煙の害に関する知識量の多さが必ずしも禁煙に結びつかない。
アンケート以外の今回の研究から、たばこの価格による喫煙率のコントロールの可能性があること、インターネットによる禁煙指導も効果が期待できることが示された。

公開日・更新日

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