HLA多型が寄与する自己免疫疾患の発症機序の解明

文献情報

文献番号
200731057A
報告書区分
総括
研究課題名
HLA多型が寄与する自己免疫疾患の発症機序の解明
課題番号
H19-難治-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
反町 典子(国立国際医療センター 研究所・消化器疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 春巳(国立国際医療センター 研究所・臨床病理研究部)
  • 高木 智(国立国際医療センター 研究所・地域保健医療研究部)
  • 三森 明夫(国立国際医療センター 第一病棟・内科・リウマチ学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
34,113,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの免疫難病には、疾患横断的に特定のHLA遺伝子との高い相関が認められる。本研究では、疾患関連HLA分子が免疫応答制御に果たす役割とその分子機序を明らかにし、疾患関連HLA分子が免疫難病の病因病態に寄与するメカニズムを明らかにすることによって、新しい治療標的となりうる候補分子を同定することを目的とする。
研究方法
ベーチェット病、関節リウマチをモデル疾患として、HLAの病因病態における機能的関与を明らかにし、そこで得られた知見を炎症性腸疾患、I型糖尿病などの他の免疫難病で、横断的に検証していく。疾患関連アリルの機能を媒介する膜分子の同定、疾患関連HLAによる免疫細胞の機能制御、HLAによるTregおよびTh17細胞の制御の解析を通じて、疾患関連HLAによる新しい免疫制御機構を明らかにし、ヒト化型マウスを用いた検証、分子基盤の解明を通じて、治療標的となりうる候補分子を見出す。
結果と考察
MHCクラスIと受容体による新しい免疫制御機構が明らかになり、その分子機構の解明によって、MHCが受容体との相互作用を介して免疫制御異常に関与する可能性が考えられた。また、MHC受容体の機能を制御することにより、炎症性細胞の機能が制御できることから、MHCまたはその受容体、または受容体のシグナル関連分子の中に治療標的としての候補分子が存在する可能性が示唆された。今後疾患関連HLAを発現するヒト化型マウスを用いることによってHLAによる免疫制御異常の分子機構機能分子の検証を進める。また、疾患関連HLAを保有する自己免疫疾患患者の病態、合併症が疾患関連HLAを保有しない患者群と差異を示すかを検討するために有用な、自施設通院症例のデータベースが充実することにより、HLA多型と病態との相関をさらに詳細に解析するために有用な情報の提供が可能になりつつあることは高く評価される
結論
(1) MHCクラスIとその受容体の相互作用が、炎症性細胞の機能を多岐にわたって制御していることを見出し、その分子基盤の一部を明らかにした。これはMHCの新規免疫制御機構であり、MHCが抗原提示以外で免疫応答制御に影響を及ぼしていることを強く示唆する知見である。
(2) T細胞分化において負の選択とアゴニスト選択との間では、異なる細胞内機能分子が用いられていることをはじめて明らかにした。
(3) 自施設通院症例のデータベース作成を開始し、疾患関連HLAと自己免疫疾患患者の病態および合併症について詳細な再解析を開始した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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