喫煙構造の解明に関する総合的研究

文献情報

文献番号
199700385A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙構造の解明に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康増進研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国には、未成年喫煙禁止法があるにも関わらず、多くの未成年者がすでに喫煙しており、未成年のうきからの喫煙防止教育など未成年を対象とした喫煙対策が必要であるといわれている。中高生に焦点を当てた喫煙対策を推進するためには、中高生の喫煙行動を詳細に分析し、その関連要因を解明することが重要である。そこで中高生への効果的な喫煙対策を策定するために、中高生の喫煙行動に関連する要因を明らかにするための全国調査を行った。
研究方法
調査デザインは断面標本調査であった。調査は全国の中学校および高等学校(全日制の私立・公立高校)を対象とした。1995年5月1日現在の我が国の学校名簿である1996年全国学校総覧に登録されている中学校11,274校、高等学校5,501校のうち中学校122校、高等学校109校を抽出して調査を行った。調査時期は1996年12月~1997年1月末であった。抽出方法は層別1段クラスター抽出であった。調査内容は、喫煙行動の関連要因として、喫煙は体に悪いと思うかどうか、家族や友人の喫煙状況、親とのコミュニケーションの量(親とすごす時間の長さ、親に悩みを相談する方かどうか)、親に喫煙を勧められたかどうか、親にたばこを吸っているところを見つかったことがあるかどうか、朝食の摂取頻度、ジュース・炭酸飲料・コーヒーまたは紅茶の摂取頻度、クラブ活動への参加状況、学校が楽しいかどうか、将来の希望進路、飲酒状況を尋ねた。中学校は122校に依頼し、80校より回答があった(回答率65.6%)。高等学校は109校に依頼し、73校から回答があった(回答率67.0%)。調査票は117,325通回収され、性別が不明であった1通、学年が不明であった1通、および回答内容に矛盾のあった1,419通を除いた115,814通を解析対象とした。
結果と考察
父が以前吸っていたが今は吸っていないのは11~13%であった。父の喫煙状況別の生徒の喫煙率をみると父がたばこを吸っていないときの生徒の月喫煙者率を1とすると父がたばこを吸っているときの月喫煙者率比は中学男子で1.6、高校男子で1.5、中学女子で1.8、高校女子で1.5であった。父が喫煙していたが止めた場合は月喫煙者率比がやや高い程度であった。 母が以前吸っていたが今は吸っていないのは2~3%であった。母の喫煙状況別の生徒の喫煙率をみると母がたばこを吸っていないときの生徒の月喫煙者率を1とすると母がたばこを吸っているときの月喫煙者率比は中学男子で1.9、高校男子で1.5、中学女子で2.7、高校女子で2.2倍高かった。いずれも父親の場合よりも月喫煙者率比が高かった。また女子の方が男子よりも月喫煙者率比が高かった。母が喫煙していたが止めた場合の月喫煙者率比も高かった。 兄の喫煙状況と生徒の喫煙状況との関連をみると、喫煙する兄がいない場合の生徒の月喫煙者率を1とすると、吸う兄がいる場合の月喫煙者率比は、中学男子で3.1、高校男子で2.1、中学女子で3.2、高校女子で2.2であった。姉の喫煙状況と生徒の喫煙状況との関連をみると、喫煙する姉がいない場合の生徒の月喫煙者率を1とすると、吸う姉がいる場合の月喫煙者率比は、中学男子で3.0、高校男子で1.7、中学女子で4.8、高校女子で3.2であった。男子より女子の月喫煙者率が高く、高校より中学で比が高かった。男子の値は兄の場合と同様であったが、女子の値は兄での月喫煙者率比より大きかった。母の結果もあわせて考えると女子の喫煙は母や姉といった家庭内の同性の喫煙行動に男子よりも影響を受けやすいことが推察される。友人の喫煙状況と生徒の喫煙状況との関連をみると、喫煙する友人がいない場合の生徒の月喫煙者率を1とすると、吸う友人がいる場合の月喫煙者率比は、中学男子で7.9、高校男子で13.0、中学女子で13.0、高校女子で19.9であった。家族の喫煙状況とは逆に中学
より高校生で比が高かった。親に喫煙を勧められたことのない者の月喫煙者率を1とすると、勧められた経験を持つ者の月喫煙者率比は中学男子で3.1、高校男子で1.6、中学女子で4.4、高校女子で2.4であった。男子よりも女子で比が高く、高校より中学で比が高かった。すなわち喫煙率が低い集団では親の影響が大きいことが推察される。 害があると回答した者の月喫煙者率を1とすると害がないあるいは多少あると回答した者の月喫煙者率比は中学男子でそれぞれ2.7、3.9、高校男子で1.1、1.9、中学女子で4.1、5.6、高校女子で1.4、3.8であり、害がないと回答した者より多少あると回答した者の月喫煙者率比の方が高かった。特に高校生では害がないとした者の比が1に近かった。朝食をほとんど毎日食べると回答した者の月喫煙者率を1とした場合のほとんど食べない者の月喫煙者率比は中学男子で2.7、高校男子で2.0、中学女子で4.6、高校女子で3.1であった。健康的なライフスタイルをとらないことが未成年喫煙のリスクになっているという解釈もできる。牛乳をほとんど毎日飲む者の月喫煙者率を1とするとほとんど飲まない者の月喫煙者率比は中学男子で1.9、高校男子で1.8、中学女子で2.4、高校女子で2.0であった。コーヒーや紅茶をほとんど飲まない者の月喫煙者率を1とするとほとんど毎日飲む者の月喫煙者率比は中学男子で1.7、高校男子で1.4、中学女子で1.7、高校女子で1.3であった。炭酸飲料をほとんど飲まない者の月喫煙者率を1とするとほとんど毎日飲む者の月喫煙者率比は中学男子で2.6、高校男子で2.0、中学女子で4.5、高校女子で2.4であった。ジュースをほとんど飲まない者の月喫煙者率を1とするとほとんど毎日飲む者の月喫煙者率比は中学男子で2.2、高校男子で2.0、中学女子で2.3、高校女子で2.1であった。クラブに積極的に参加している者の月喫煙者率を1とすると不参加の者の月喫煙者率比は中学男子で1.9、高校男子で1.7、中学女子で2.6、高校女子で3.1であった。学校が楽しいと回答した者の月喫煙者率を1とすると楽しくないと回答した者の月喫煙者率比は中男子で2.7、高校男子で1.8、中学女子で3.5、高校女子で2.7であった。親と1時間以上過ごした者の月喫煙者率を1とするとほとんど過ごしていない者の月喫煙者率比は中学男子で3.1、高校男子で1.6、中学女子で5.8、高校女子で2.6であった。男子よりも女子で、高校よりも中学で比が高かった。親によく相談する者の月喫煙者率を1とすると相談しない者の月喫煙者率比は中学男子で1.9、高校男子で1.6、中学女子で2.5、高校女子で1.9であった。希望進路がわからないと回答した者の月喫煙者率を1とすると就職、大学及び専門学校と回答した者の月喫煙者率比は中学男子でそれぞれ3.1、0.5、1.1、高校男子で1.3、0.5、1.2、中学女子で3.6、0.3、1.0、高校女子で1.0、0.2、0.8であった。 この30日の喫煙日数が0日であった者の月飲酒率を1とすると毎日喫煙者の月飲酒率比は中学男子で2.9、高校男子で2.1、中学女子で4.0、高校女子で2.4であった。
結論
周囲の者の喫煙では友人の喫煙が関連が強かった。特に女子の喫煙は家族内の女性(母、姉)の喫煙に影響を受けていることが示唆された。食習慣では朝食を食べない、牛乳を飲まない、炭酸飲料をよく飲む等一般に健康的でないとされる生活習慣の者の喫煙率が高かった。親とのコミュニケーションが少ない者の喫煙率も高い傾向にあった。また喫煙行動は飲酒行動とも関連が認められた。

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