特定疾患患者の自立支援体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200731041A
報告書区分
総括
研究課題名
特定疾患患者の自立支援体制の確立に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-042
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今井 尚志(独立行政法人国立病院機構宮城病院)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(東北大学病院神経内科)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 神経病態内科学)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 岡本 幸市(群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学)
  • 荻野 美恵子(北里大学医学部神経内科学(北里大学東病院))
  • 梶 龍兒(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座神経情報医学分野)
  • 木村 格(独立行政法人国立病院機構宮城病院)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 南 尚哉(独立行政法人国立病院機構札幌南病院)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 中野 今治(自治医科大学神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所 臨床神経科学部門神経内科学分野)
  • 福永 秀敏(独立行政法人国立病院機構南九州病院)
  • 溝口 功一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 宮地 裕文(福井県立病院)
  • 湯浅 龍彦(国立精神・神経センター 国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療処置を必要とする特定疾患患者が、地域社会の中で生きがいをもち、“じりつ”(自立・自律)し、普通に生きていくための効率的な支援体制を構築するために、過去2年の研究で、①医療処置を有する患者の福祉施設利用の実態調査 ②全国の難病相談支援員に期待されている役割の調査と特定疾患患者就労モデル事業の開始 ③TV映像付携帯電話+モバイルシステムを使用した難病患者による遠隔地からのリアルタイム講演を行った。今年度はその結果を踏まえ、研究とシステムの構築を行った。
研究方法
①身体障害者療護施設の実態調査から、高度の医療処置を有する入所者も少なからず存在するが、施設職員の抱えている不安や問題も明らかとなった。今年度は、どのような医療・福祉のバックアップがあれば問題解決につながるか検討し、その結果を元に施設利用促進マニュアルの作成を行う。

②各県のセンターに寄せられた相談に支援員が適切に対応できるように、本研究班のホームページに統合難病相談支援センターを開設する。

③リアルタイム講演を種々の場面で行い、その有用性を検討する。
結果と考察
①実践的研究の結果、高度の医療処置を有する患者でも、福祉施設職員に入所前研修と入所後の継続研修、緊急時対応の準備があれば、一定期間福祉施設で安定した療養は可能であり、施設利用促進マニュアル原案を作成した。

②各地で対応困難な症例の相談が寄せられ、相談員にとって有用な支援方法であると検証できた。

③ピアサポーター養成講座・難病研修会・本班会議研究報告会などでリアルタイム講演を行った。患者の移動に伴う諸費用とリスクが軽減し、非常に有用であった。一部電波が途切れる地域もあり、問題点も明らかとなった。
結論
特定疾患患者が難病を持ちながらも真に自律した個人として生活するため、今年度は療養環境整備の項目では福祉施設利用マニュアル原案を作成した。難病相談支援センターの相談員の支援窓口として、統合難病相談支援センターを開設した。IT機器を使用した遠隔講演を行い、患者の社会参加の可能性を広げた。各項目に対し、一定の成果が得られた。今後研究結果を実践することは、患者の就労支援を含め、自立・自律をサポートし、社会的に意義深いことであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200731041B
報告書区分
総合
研究課題名
特定疾患患者の自立支援体制の確立に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-042
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今井 尚志(独立行政法人国立病院機構宮城病院)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 正志(東北大学病院神経内科)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 神経病態内科学)
  • 板井 孝壱郎(宮崎大学医学部)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学系研究科)
  • 岡本 幸市(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科学)
  • 荻野 美恵子(北里大学医学部神経内科学(北里大学東病院))
  • 梶 龍兒(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 感覚情報医学講座 神経情報医学分野)
  • 木村 格(独立行政法人国立病院機構宮城病院)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 後藤 公文(独立行政法人国立病院機構長崎神経医療センター)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 中野 今治(自治医科大学神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所 臨床神経科学部門 神経内科学分野)
  • 林 秀明(東京都立神経病院)
  • 福永 秀敏(独立行政法人国立病院機構南九州病院)
  • 溝口 功一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 南 尚哉(独立行政法人国立病院機構札幌南病院)
  • 宮地 裕文(福井県立病院)
  • 湯浅 龍彦(国立精神・神経センター国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日、従来は入院療養しか考えられなかった医療依存度の高い患者も、在宅療養を行う機会が増加して来た。特定疾患患者も、従来の保護される立場から、地域社会の一員として生きることが求められている。自立支援体制の自立とは、Independent Living(自立生活)とAutonomy(自律)の二つの意味を意識して使用している。医療処置を必要とする特定疾患患者が、地域社会のなかで生きがいを持ち、“じりつ”(自立・自律)し、普通に生きていくための効率的な支援体制の構築を行うことを目的とした。
研究方法
①身体障害者療護施設の実態調査を行い、どの程度の医療的処置であれば対応可能であるか調査し、その結果を元に施設利用促進マニュアルの作成を行う。

②IT技術を用いた就労のためのコミュニケーションツールを開発し、就労の支援をする。

③地域の特性をいかした難病相談支援センターが各県で展開されているが、難病相談支援センターに勤務する難病相談支援員の雇用形態も様々で、センターの組織自体の基盤が脆弱である場合もあった。各県の難病支援センターの相談機能を充実させるための支援方法を検討する。
結果と考察
①実践的研究の結果、医療的処置を有する患者でも、福祉施設に対する入所前研修、入所後の継続的勉強会と研修、緊急時対応の準備があれば、一定期間福祉施設で療養は可能であった。

②TV映像付機能を備えた携帯電話とモバイルスタジオを用いて、難病患者による遠隔地からのリアルタイム講演を行った。このシステムを利用することで、重症難病患者の社会参加の機会が増加することが期待できる。

③研究班ホームページに統合難病相談支援センターを開設し、各県のセンターに寄せられた相談に支援員が適切に対応できるようシステムを構築した。
結論
特定疾患患者が難病を持ちながらも真に自立した個人として生活するため、福祉施設を含めた療養環境整備、就労支援、特定疾患患者・家族の相談窓口としての難病相談支援センターの充実が重要である。3年間の研究で、上記項目に対していずれも一定の成果が得られた。今後、ピアサポートを含めたメンタルサポートの充実と更なる就労支援が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731041C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療依存度が高い特定疾患患者でも自立を促すことは社会的意義が大きい。生活の場として福祉施設を利用できるように、実態調査と実践的研究から施設利用可能な入所者の医療処置と支援方法について明らかにした。IT技術応用の研究を進め、社会参加を促進するツールを開発した。就業支援ガイドライン利用マニュアルを障害者職業綜合センターとの連携でまとめた。研究班のホームページ上に統合難病相談支援センターを創設し、難病相談支援センターの相談機能の充実を図った。
臨床的観点からの成果
医療的処置を必要とする重度の障害を持つ特定疾患患者でも、社会的資源・IT技術を駆使して社会との接点を持つことで、患者のQOLが向上することが確かめられた。特に患者がTV映像付機能を備えた携帯電話を用いて遠隔地での講演を行ったり、またピアサポーター養成講座での講師として活躍したことは、社会的・生産的活動であり、就労に繋がるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
患者の自立には就労は重点項目である。難病相談支援センターに寄せられる就労支援の在り方を検討するとともに、厚生労働省委託事業「難病の雇用管理のための調査・研究会」発行の難病のある人の雇用管理・就業支援ガイドライン作成に全面協力した。また平成18年11月から北海道・佐賀県・沖縄県の3箇所の難病相談支援センターで「難病就業支援モデル事業」を行っている。モデル事業を主導した独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構と協力して、難病のある人の雇用管理・就業支援ガイドライン利用マニュアルを作成予定である。
その他行政的観点からの成果
従来は人工呼吸器装着など医療依存度の高い特定疾患患者は、長期入院が可能な社会的環境であった。しかし在院日数短縮化の施策により、長期療養の場として病院は選択できなくなりつつある。本研究班ではそのような患者が生活の場として福祉施設を利用できるようにするための基礎的研究を行い、一定の成果を得た。この研究成果は医療費削減にも繋がり、厚生行政に大きな貢献をするものと考えられる。
その他のインパクト
医療依存度が高い特定疾患患者でも精神的に自立した個人として生活できるための支援として、各県の難病相談支援センターが果たすべき役割は大きいと思われる。研究班では、全国難病相談支援センター研究会を年2回ずつ実施し、センターの相談員の技能向上に努めた。また各難病相談支援センター相談員の相談を受けるため、研究班ホームページ上にcenter of centerの機能を持たせた統合難病相談支援センターを創設し、常時相談員への支援を可能にする体制を整備した。

発表件数

原著論文(和文)
196件
日本臨床、医学のあゆみ、脳と循環、神経内科、 Clinical Neuroscience、末梢神経、理学療法学他
原著論文(英文等)
125件
J Neurovirol、Mov Disord 、Neurology、Brain 、 Internal Medicine、NeuroRex、BRAIN and NERVE他
その他論文(和文)
102件
在宅医学、神経難病のすべて、内科学、心血管病学、老年医学 他
その他論文(英文等)
5件
Dementia and motor neuron disease、 Amyotrophic Lateral Sclerosis 他
学会発表(国内学会)
20件
国立病院総合医学会、日本神経学会、 日本医学会、日本神経治療学会、他
学会発表(国際学会等)
4件
international symposium on ALS/MND、 他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
17件
厚生労働省自立支援班ホームページ: http://nanbyo-jiritsushien.net/ 全国難病センター研究会第5~10回研究大会、神経疾患ケアシンポジウム(長野)他

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-