ウイリス動脈輪閉塞症における病態・治療に関する研究

文献情報

文献番号
200731018A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイリス動脈輪閉塞症における病態・治療に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-018
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 宝金清博(札幌医科大学院医学研究科神経病態学講座脳神経外科)
  • 冨永悌二(東北大学大学院医学系研究科神経外科学神経科学)
  • 宮本享(国立循環器病センター脳神経外科)
  • 永田泉(長崎大学医歯薬学総合研究科病態解析制御学)
  • 鈴木則宏(慶応義塾大学医学部神経内科学)
  • 野川茂(東京歯科大学市川総合病院内科学)
  • 北川一夫(大阪大学大学院循環器内科学医学系研究科)
  • 小泉昭夫(京都大学医学研究科社会医学系環境衛生学分野)
  • 中川原譲二(中村記念病院脳神経外科)
  • 黒田敏(北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座脳神経外科学)
  • 菊田健一郎(京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19年度は申請研究の最終年度にあたる。各施設および関連施設の症例を用いて研究班の大規模疫学データベース亢進を行った。類もやもや病、片側もやもや病、無症候性もやもや病について全国調査の結果を集計し疫学研究を行い、微小出血研究、JAM trialを進行させた。
研究方法
宝金は骨髄細胞を用いた脳梗塞に対する再生治療について基礎研究を行ってきたがいよいよ臨床応用に向かいつつある。本年度はもやもや病に対する再生治療についての基礎研究を進めた。富永らはこれまでにガイドライン作成に向け文献を整理しエビデンスレベル分類を行ってきた。本年は各班員を指揮してもやもや病診断治療ガイドラインを完成させた。本ガイドラインは世界初のもやもや病ガイドラインである。診断治療の標準化という政策医療上にも重要な役割を果たすだけはなく、Evidenced basedに作成された点で学術上も重要な成果と考える。宮本は出血型もやもや病に対する直接バイパス術の効果を検証する多施設間共同研究(JAM trial)を継続している。結論が待たれる。鈴木らはもやもや病疫学データベースを更新し集積症例数は本研究期間内に1000例を越えた。これらを元に内科的視点から疫学解析を行った。
結果と考察
野川はもやもや病の頭痛について日本頭痛学会会員にアンケートによる実態調査を行った。もやもや病患者の日常生活上の大きな課題として高次脳機能障害があり、ADLが保たれていてが高次脳機能障害により就労不可能な患者が多数存在する。中川原はIMZ-SPECTを用いた神経機能評価法を作成し、高次脳機能障害を評価する際に有用であることを報告している。もやもや病の病因を明らかにすることは研究者の悲願でもあるが、小泉は家族性もやもや病を対象に遺伝解析を行い、その遺伝形式(常染色体優勢遺伝)を明らかにした。29家系の解析において家族性もやもや病は17q25.3に強い相関を認めた。今後、感受性遺伝子が同定されれば病因解明の突破口となりうる。
結論
北川は類もやもや病の全国調査を行い、類もやもや病患者の脳循環状態を解析した。永田は片側もやもや病に関する昨年の全国疫学調査に引き続き本年度は2次調査を行った。黒田は無症候性もやもや病についてこれまで多数の報告を行い、対応に付きガイドラインにまとめた。菊田は脳微小出血がもやもや病患者に多発し、複数の微小出血の存在はもやもや病における出血の危険因子になりうることを指摘し、外科的に摘出した微小出血標本の病理組織解析を行った。

本年度は研究班からもやもや病診断・治療ガイドラインを作成した。本疾患の診断・治療の標準化がなされつつある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200731018B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイリス動脈輪閉塞症における病態・治療に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-018
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 信夫(京都大学大学院医学研究科脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 宝金 清博(札幌医科大学院医学研究科神経病態学講座脳神経外科)
  • 冨永 悌二(東北大学大学院医学系研究科神経外科学神経科学)
  • 宮本 享(国立循環器病センター脳神経外科)
  • 永田 泉(長崎大学医歯薬学総合研究科病態解析制御学)
  • 鈴木 則宏(慶応義塾大学医学部神経内科学)
  • 野川 茂(東京歯科大学市川総合病院内科学)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院循環器内科学医学系研究科)
  • 小泉 昭夫(京都大学医学研究科社会医学系環境衛生学分野)
  • 中川原 譲二(中村記念病院脳神経外科)
  • 黒田 敏(北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座脳神経外科学)
  • 菊田 健一郎(京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座脳神経外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2005年度より新たに申請した本班研究では重点課題として①診断基準の見直しと疫学調査、②病態整理と診断治療指針の確立および③出血発症機序の解明および治療指針の確立とした。
研究方法
近年の神経放射線学的診断法の進歩による低侵襲の新しい診断基準を検討した。研究班データベースを更に発展させ多数の症例を分析および追跡して研究を行うこととした。家族性もやもや病の遺伝子研究を病因解明の突破口とすることが計画された。これまでの「診断の手引き」および改訂版「診断・治療のてびき」はEvidenced based medicine (EBM)時代となった現在にもかかわらずいわゆるガイドライン(GL)は作成されていなかった。論文や過去の報告を検討しエビデンスレベルを分類し、公平に取捨選択した後にガイドライン作成を計画した。出血発症機序の解明および治療指針の確立については脳出血が本症の最大の予後不良因子であることを考慮して別項で扱った。2001年から開始された出血発症のもやもや病に対して外科的治療の再出血予防効果を明らかにするJAM trialを継承MRIによる微小出血による用いたもやもや病の解析を行うことにした。研究には本疾患を多数治療している施設を含めた全国組織を含めまた内科医の参加を行った。
結果と考察
疫学研究としては大規模疫学および画像データベースの作成を行い、類もやもや病、片側もやもや病、無症候性もやもや病については全国調査を行った。診断法についてMRAによる新たな診断基準を策定し、出血に関してはJAM trialを継続し微小出血研究をスタートさせた。蓄積されたエビデンスを元に2007年度にもやもや病診断治療ガイドラインを作成した。
結論
病態、病因の解明が一層進み、もやもや病診断治療ガイドラインが作成された

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
核磁気共鳴血管撮影法により新しいもやもや病期分類を作成した。高次脳機能障害の評価法としてIMZ-SPECTによる皮質神経細胞の脱落に関する判定方法を開発した。家族性もやもや病の遺伝解析を行い遺伝形式が浸透率の低い常染色体優性遺伝であることを示し、17q25に極めて高い連鎖を認めた。超高磁場MRIを用いた解析によりもやもや病患者において高頻度に脳微小出血が潜在すること、複数の微小出血がもやもや病の脳出血危険因子となりうることが示された。
臨床的観点からの成果
北海道地区の疫学調査から、1997 年の全国疫学調査に比して発生率、有病率、女性比率、家族歴を有する患者、成人比率の増加を認め従来の二峰性年齢分布が大きく変化していた。研究班データベースの解析から再発作が内科単独治療群に多いこと、血管所見の悪化症例に多いことが示された。頭痛型もやもや病がもやもや病の7.3%を占め脳虚血との相関が示唆された。類もやもや病・片側もやもや病の全国調査を行い結果を解析している。
ガイドライン等の開発
2006-2007 年にかけてこれまでの文献を整理しエビデンスレベル分類を行い2008 年1月にはもやもや病診断治療ガイドライン(暫定版)を完成させた。世界初のもやもや病に関するガイドラインであり従来の診断・治療の指針とは異なりEvidenced based に作成された重要な成果である。
その他行政的観点からの成果
2001年度から開始されたJAM trialは脳血管バイパス術が出血発症患者の再出血を予防できるかを明らかにするレベル1のRCTである。現時点では未だ統計学的有意差は認めないが手術群の方にevent発生率が低い傾向にある。
その他のインパクト
無症候性もやもや病の年間脳卒中発生率が3.2%、発作発生率が5.6%であり無症候型も発作予備群であることに注意を喚起した。もやもや病患者の会に参加、講演などを通じて患者サイドからの意見集約の機会を設けた。

発表件数

原著論文(和文)
74件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
77件
その他論文(英文等)
208件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kikuta K, Takagi Y, Fushimi Y, et al
"Target bypass": a method for preoperative targeting of a recipient artery in superficial temporal artery-to-middle cerebral artery anastomoses
Operative Neurosurgery , 59 (4) , 320-326  (2006)
原著論文2
Takagi Y, Kikuta K, Sadamasa N, et al
Caspase-3-dependent apoptosis in middle cerebral arteries in patients with moyamoya disease
Neurosurgery , 59 (4) , 894-900  (2006)
原著論文3
Mineharu Y, Takenaka K, Yamakawa H, et al
Inheritance pattern of familial moyamoya disease: autosomal dominant mode and genomic imprinting
J Neurol Neurosurg Psychiatry , 77 , 1025-1029  (2006)
原著論文4
Kikuta K, Takagi Y, Arakawa Y, et al
Absence epilepsy associated with moyamoya disease. Case report
J Neurosurg Pediatrics , 104 (4) , 265-268  (2006)
原著論文5
Fushimi Y, Miki Y, Kikuta K, et al
Comparison of 3.0- and 1.5-T three-dimensional time-of-flight MR angiography in moyamoya disease: preliminary experience
Radiology , 239 , 232-237  (2006)
原著論文6
Kikuta K, Takagi Y, Nozaki K, et al
Asymptomatic microbleeds in moyamoya disease: T2*-weighted gradient-echo magnetic resonance imaging study
J Neurosurg , 102 , 470-475  (2005)
原著論文7
Kuroda S, Hashimoto N, Yoshimoto T, et al
Radiological findings, clinical course, and outcome in asymptomatic moyamoya disease: results of multicenter survey in Japan
Stroke , 38 , 1430-1435  (2007)
原著論文8
Kikuta K, Takagi Y, Nozaki K, et al
The presence of multiple microbleeds as a predictor of subsequent cerebral hemorrhage in patients with moyamoya disease
Neurosurgery , 62 , 104-112  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-