アミロイドーシスに関する調査研究

文献情報

文献番号
200731012A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドーシスに関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 正仁(金沢大学大学院医学系研究科脳医科学専攻脳病態医学講座脳老化・神経病態学 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 下条 文武(新潟大学大学院医歯学総合研究科 内部環境医学講座(第二内科))
  • 池田 修一(信州大学医学部内科学、脳神経内科学、リウマチ・膠原病内科学)
  • 樋口 京一(信州大学大学院医学研究科加齢生物学分野・病態生化学)
  • 玉岡 晃(筑波大学大学院人間総合科学研究科病態制御医学専攻)
  • 高市 憲明(虎の門病院 腎センター 内科)
  • 山田 俊幸(自治医科大学臨床検査医学)
  • 前田 秀一郎(山梨大学大学院医学工学総合研究部 生化学講座第一教室)
  • 内木 宏延(福井大学医学部医学科病因病態学講座分子病理学領域病理学)
  • 今井 裕一(愛知医科大学医学部内科学講座 腎臓・膠原病内科)
  • 葛原 茂樹(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 島崎 千尋(京都府立医科大学 血液・腫瘍内科)
  • 吉崎 和幸(大阪大学保健センター)
  • 東海林 幹夫(弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設 脳神経内科学講座)
  • 麻奥 英毅(広島赤十字・原爆病院 検査部)
  • 石原 得博(山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系学域病理形態分野)
  • 河野 道生(山口大学大学院医学系研究科 細胞シグナル解析学分野)
  • 奥田 恭章(道後温泉病院リウマチセンター 内科)
  • 安東 由喜雄(熊本大学大学院医学薬学研究部病態情報解析学)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野)
  • 工藤 幸司(東北大学先進医工学研究機構高度情報通信分野)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アミロイドーシス病型ごとの戦略、および全病型に共通する基盤的研究により、アミロイドーシスの疫学解明、治療プロトコール確立、新規診断治療法開発を行うことを目的とした。
研究方法
1) アミロイドーシスの疫学:臨床調査個人票を用いFAPの疫学を調査した。
2) ALアミロイドーシス:メルファランによる寛解導入と自家末梢血幹細胞移植療法からなる新規治療プロトコールによる臨床試験、その他の治療法を検討した。
3) AAアミロイドーシス: 抗サイトカイン療法の有効性を検討しIL-6阻害療法の多施設臨床試験を計画した。
4) 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):肝移植治療の有効性や問題点を検討し、新規治療法開発を行った。
5) 透析アミロイドーシス:発症要因および治療効果の解析、実験系による発症機序の解明を行った。
6) 脳アミロイドーシス: Aβ沈着の分子病態解明、アルツハイマー病(AD)及び脳アミロイドアンギオパチー(CAA)診断治療法開発を行った。
7) アミロイドーシス共通の発症機構解明:アミロイド線維形成機構の解明、アミロイドイメージング開発を行った。

結果と考察
1) アミロイドーシスの疫学:石川県がFAPの新規集積地であることを発見した。
2) ALアミロイドーシス:新規治療プロトコールの有用性、他の治療オプションを報告した。
3) AAアミロイドーシス:抗IL-6受容体抗体による全国多施設共同臨床試験を開始した。
4) FAP:Val30Met型FAPでは加齢に伴い野生型TTRの沈着が増加すること、血中アルブミンがTTRのアミロイド形成に抑制的に働くことを示した。
5) 透析アミロイドーシス:腎移植が症状の改善や進行を抑制すること、アミロイド形成促進に遊離脂肪酸が関与することを示した。
6) 脳アミロイドーシス: TMP21によるγセクレターゼ活性調節、女性ホルモンの抗アミロイド作用の解明、Aβオリゴマー特異抗体の作成等を行った。
7) アミロイドーシス共通の発症機構解明:アミロイドーシス動物モデルでPETによるアミロイドイメージングに成功した。

結論
種々のアミロイドーシスについて、疫学研究、治療プロトコール策定と臨床試験の実施、新規診断法・予防治療法開発研究に成果をあげた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200731012B
報告書区分
総合
研究課題名
アミロイドーシスに関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 正仁(金沢大学大学院医学系研究科脳医科学専攻脳病態医学講座脳老化・神経病態学 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 下条 文武(新潟大学大学院医歯学総合研究科 内部環境医学講座(第二内科))
  • 池田 修一(信州大学医学部内科学、脳神経内科学、リウマチ・膠原病内科学)
  • 樋口 京一(信州大学大学院医学研究科加齢生物学分野・病態生化学)
  • 玉岡 晃(筑波大学大学院人間総合科学研究科病態制御医学専攻)
  • 高市 憲明(虎の門病院 腎センター 内科)
  • 山田 俊幸(自治医科大学臨床検査医学)
  • 前田 秀一郎(山梨大学大学院医学工学総合研究部 生化学講座第一教室)
  • 内木 宏延(福井大学医学部医学科病因病態学講座分子病理学領域病理学)
  • 今井 裕一(愛知医科大学医学部内科学講座 腎臓・膠原病内科)
  • 葛原 茂樹(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 島崎 千尋(京都府立医科大学 血液・腫瘍内科)
  • 吉崎 和幸(大阪大学保健センター)
  • 東海林 幹夫(弘前大学大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設 脳神経内科学講座)
  • 麻奥 英毅(広島赤十字・原爆病院 検査部)
  • 石原 得博(山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系学域病理形態分野)
  • 河野 道生(山口大学大学院医学系研究科 細胞シグナル解析学分野)
  • 奥田 恭章(道後温泉病院リウマチセンター 内科)
  • 安東 由喜雄(熊本大学大学院医学薬学研究部病態情報解析学)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野)
  • 工藤 幸司(東北大学先進医工学研究機構高度情報通信分野)
  • 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アミロイドーシス病型ごとの戦略及び全病型に共通する基盤的研究により、アミロイドーシスの疫学解明、治療プロトコール確立、新規診断治療法開発を行うことを目的とした。
研究方法
1) アミロイドーシスの疫学:臨床調査個人票を用い研究を行った。
2) ALアミロイドーシス:メルファランによる寛解導入と自家末梢血幹細胞移植療法からなる新規治療プロトコールによる全国多施設臨床試験他を行った。
3) AAアミロイドーシス: 関節リューマチに本症を合併する危険因子、抗サイトカイン療法の有効性を検討し、IL-6阻害療法の全国多施設臨床試験体制を構築した。
4) 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):肝移植の有効性と問題点を検討し、新規治療法開発を行った。
5) 透析アミロイドーシス:本症発症要因及び治療効果の解析、実験系による発症機序の解明を行った。
6) 脳アミロイドーシス: Aβ沈着の分子病態解明、アルツハイマー病(AD)及び脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の診断治療法開発を行った。
7) アミロイドーシス共通の発症機構解明:アミロイド線維形成機構の解明、アミロイドイメージング開発を行った。

結果と考察
1) アミロイドーシスの疫学:患者分布を報告し、石川県をFAP新規集積地と同定した。
2) ALアミロイドーシス:新規治療プロトコールの有用性を示し、他の治療オプションを報告した。
3) AAアミロイドーシス:抗IL-6受容体抗体療法の優越性を示し、同療法による全国多施設共同臨床試験を開始した。
4) FAP:ドミノ移植におけるFAP肝のレシーピエントがアミロイドニューロパチーを短期間に発症するなど肝移植の問題点を示し、移植以外の新規治療法開発を行った。
5) 透析アミロイドーシス:本症発症のリスク、腎移植の効果を明らかにし、アミロイド形成促進にリゾリン脂質と遊離脂肪酸が関与することを示した。
6) 脳アミロイドーシス:γセクレターゼ活性調節蛋白同定などAβ産生・凝集・沈着機構の解明を進めた。世界初のCAA全国調査によりCAA関連病態を明らかにした。
7) アミロイドーシス共通の発症機構解明:動物モデルでアミロイドイメージングに成功し、臨床応用段階に至った。

結論
アミロイドーシス各病型について、疫学研究、治療プロトコール策定と臨床試験の実施、新規診断法・予防治療法開発に成果をあげた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
AAアミロイドーシスに対するIL-6阻害の強力な効果の報告、TTRアミロイドーシスにおけるTTR変異に伴うTTR沈着メカニズムの解明、Aβアミロイドーシスにおけるγセクレターゼ活性調節新規蛋白の発見などに成果をあげ、これらは新規治療法開発・臨床試験実施への端緒となった。これらの成果は、Cell、Natureなどの雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。

臨床的観点からの成果
ALアミロイドーシスにおけるメルファランによる寛解導入と自家末梢血幹細胞移植療法からなる新規治療プロトコールによる臨床試験の実施とその有用性確認、AAアミロイドーシスにおける抗IL-6受容体抗体による全国多施設共同臨床試験体制の構築とその開始など、アミロイドーシスに対するエビデンスレベルの高い臨床研究に成果をあげた。特にIL-6阻害療法によりAAアミロイドーシスをほぼ制圧できる可能性があり、世界初の大規模臨床試験は国際的にも期待されている。
ガイドライン等の開発
エビデンスレベルの高い治療ガイドラインを開発するために、ALアミロイドーシスに対する新規治療プロトコール作成とそれに基づく全国多施設臨床試験、AAアミロイドーシスに対する抗IL-6受容体抗体による全国多施設共同臨床試験等を実施し、さらに家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)への肝移植療法の効果や問題点を明らかにした。最新のアミロイドーシス診療指針、医師向け診療支援ガイドを難病情報センターホームページに掲載した(2007年12月最終改訂)。
その他行政的観点からの成果
FAPの肝移植でドミノ移植におけるFAP肝のレシーピエントが医原性のアミロイドニューロパチーを短期間で発症したことを報告し(健康危険情報)、メディアにも報道された。臨床調査個人票を用いた疫学調査により、従来から知られていた長野、熊本に加え、石川がFAP集積地であること等を明らかにした。脳アミロイドアンギオパチーに関する世界初の全国調査を行い、患者数を推計した。これらは今後の難病対策の基礎資料となる成果である。
その他のインパクト
アミロイドイメージング(臓器沈着アミロイドの画像化)開発に成功し、その診断プローブに関する特許を出願した。その他では、脳アミロイドーシスに対する免疫療法に有用な抗体に関する特許、ALアミロイドーシス関連の治療薬に関する特許を出願した。一般国民及び患者向けの啓発活動として、患者向けの情報提供及び支援ガイドを難病情報センターホームページに掲載し、さらに研究成果を掲載するためのホームページを主任研究者所属施設に開設した。

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
166件
その他論文(和文)
154件
その他論文(英文等)
27件
学会発表(国内学会)
234件
学会発表(国際学会等)
91件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計16件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/004.htm http://web.kanazawa-u.ac.jp/~med19/report1/index.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tamaoki T, Tezuka H, Okada Y, et al.
Avoiding the effect of linked genes is crucial to elucidate the role of Apcs in autoimmunity
Nat Med , 11 (1) , 11-12  (2005)
原著論文2
Sekijima Y, Wiseman LR, Matteson J, et al.
The biological and chemical basis for tissue selective amyloid disease
Cell , 121 (1) , 73-85  (2005)
原著論文3
Suzuki T, Kiyoi H, Ozeki K, et al.
Clinical characteristics and prognostic implications of NPM1 mutations in acute myeloid leukemia
Blood , 106 (8) , 2854-2861  (2005)
原著論文4
Nishimoto N, Kanakura Y, Aozasa K, et al.
Humanized anti-interleukin-6 receptor antibody treatment of multicentric Castleman's disease
Blood , 106 (8) , 2627-2632  (2005)
原著論文5
Li F, Tsuyama N, Ishikawa H, et al.
A rapid translocation of CD45RO but not CD45RA to lipid rafts in IL-6-induced proliferation in Myeloma
Blood , 105 (8) , 3295-3302  (2005)
原著論文6
Ma Z, Otsuyama K, Liu S, et al.
Baicalein, a component of Scutellaria Radix, identified from Huang-Ling-Jie-Du-Tang (HLJDT), leads to suppression of proliferation and induction of apoptosis in human Myeloma cells
Blood , 105 (8) , 3312-3318  (2005)
原著論文7
Okamura N, Suemoto T, Furumoto S, et al.
Quinoline and benzimidazole derivatives. Candidate probes for in vivo imaging of tau pathology in Alzheimer's disease
J Neurosci , 25 (47) , 10857-10862  (2005)
原著論文8
Yamada M.
The first Japanese case of variant Creutzfeldt-Jakob disease showing periodic electroencephalogram
Lancet , 367 (9513) , 874-874  (2006)
原著論文9
Iwata K, Fujiwara T, Matsuki Y, et al.
3D structure of amyloid protofilaments of β2-microglobulin fragment probed by solid-state NMR
Proc Natl Acad Sci USA , 103 (48) , 18119-18124  (2006)
原著論文10
Okuda Y, Takasugi K.
Successful use of a humanized anti-interleulin-6 receptor antibody, Tocilizumab, to treat amyloid A amyloidosis
Arthritis Rheum , 54 (19) , 2997-3000  (2006)
原著論文11
Zhang H, Sawashita J, Fu X, et al.
Transmissibility of mouse AApoAII amyloid fibrils: inactivation by physical and chemical methods
FASEB J , 20 (7) , 1012-1014  (2006)
原著論文12
Kuwano R, Miyashita A, Arai H, et al.
Japanese Genetic Study Consortium for Alzeheimer's Disease: Dynamin-binding protein gene on chromosome 10q is associated with late-onset Alzheimer's disease
Hum Mol Genet , 15 (13) , 2170-2182  (2006)
原著論文13
Korenaga T, Yan J, Sawashita J, et al.
Transmission of amyloidosis in offspring of mice with AApoAII amyloidosis
Am J Pathol , 168 (3) , 898-906  (2006)
原著論文14
Murakami T, Paitel E, Kawarabayashi T, et al.
Cortical neuronal and glial pathology in TgTauP301L transgenic mice: neuronal degeneration, memory disturbance, and phenotypic variation
Am J Pathol , 169 (4) , 1365-1375  (2006)
原著論文15
Goto T, Yamashita T, Ueda M, et al.
Iatrogenic amyloid neuropathy in a Japanese patient after sequential liver transplantation
Am J Transplant , 6 (10) , 2512-2515  (2006)
原著論文16
Nagai Y, Inui T, Popiel HA, et al.
A toxic monomeric conformer of the polyglutamine protein
Nat Struct Mol Biol , 14 (4) , 332-340  (2007)
原著論文17
Sato T, Susuki S, Suico MA, et al.
Endoplasmic reticulum quality control regulates the fate of transthyretin variants in the cell
EMBO J , 26 (10) , 2501-2512  (2007)
原著論文18
Miyashita A, Arai H, Asada T, et al.
The Japanese Genetic Study Consortium for Alzheimer’s Disease, Consortium Information: Genetic association of CTNNA3 with late-onset Alzheimer’s disease in females
Hum Mol Genet , 16 (23) , 2854-2869  (2007)
原著論文19
Yazaki M, Mitsuhashi S, Tokuda T, et al.
Progressive wild-type transthyretin deposition after liver transplantation preferentially occurs onto myocardium in FAP patients
Am J Transplant , 7 (1) , 235-242  (2007)
原著論文20
Kato-Motozaki Y, Ono K, Shima K, et al.
Epidemiology of familial amyloid polyneuropathy in Japan: Identification of a novel endemic focus
J Neurol Sci , 270 , 133-140  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-