原発性高脂血症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200731011A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 康(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 及川 眞一(日本医科大学 内科学講座)
  • 島本 和明(札幌医科大学 医学部)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学 社会医学講座)
  • 白井 厚治(東邦大学 医療センター佐倉病院)
  • 石橋 俊(自治医科大学 医学部)
  • 太田 孝男(琉球大学病態解析医科学講座)
  • 武城 英明(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 山下 静也(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 島野 仁(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 後藤田 貴也(東京大学大学院医学系研究科)
  • 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院)
  • 林 登志雄(名古屋大学医学部付属病院)
  • 荒井 秀典(京都大学大学院医学研究科)
  • 小林 淳二(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 斯波 真理子(国立循環器病センター研究所 バイオサイエンス部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発性高脂血症のなかでもIIa型高脂血症は、LDLコレステロールの増加を主体として、動脈硬化症のハイリスク群として重要である。 特に家族性高コレステロール血症(FH)の多くはこれに属すが、まだ十分な診療ガイドラインが作成されていない。 日本におけるIIa型高脂血症の現況を把握し、FHの診療ガイドライン作成の参考とすることを目的とした。
研究方法
全体研究として、各班員が研究対象としているコーホートスタディや外来患者について、IIa型高脂血症の抽出してその特徴を検討した。 さらにIIa型高脂血症の診断ないし治療に関する個別研究を展開してもらった。 全体調査事項として、IIa型(TC>220 mg/dLあるいはLDLC>160 mg/dL かつ TG<150 mg/dL)高脂血症を調査した。さらに高脂血症がより重症なグループ(TC>260 mg/dLあるいはLDLC>200mg/dL かつ TG<150 mg/dL)をハイリスクIIa型として通常IIa群と比較した。それぞれのデータを総括する事により、IIa型高脂血症の国内における実数と現診断基準の問題点の把握を試み,家族性高コレステロール血症診療指針提言への基礎データとした。
結果と考察
各班員の結果を統合すると、IIa型高脂血症は、一般集団と外来患者、世代、男女を問わず,総じて女性が男性よりも約2倍多かった。 男性は、飲酒とメタボリックシンドロームが女性より多く、トリグリセリドが高いためと考えられる。 しかしLDLコレステロールが200 mg/dL以上のハイリスクIIa群は、男女差がなくなり、その他の動脈硬化リスクの増加によるハイリスクカテゴリーの増加が認められた。 IIa型の多くがスタチン治療を受け、コレステロール値の有効な減少を認めているが、女性が目標達成されている一方、男性のハイリスクIIa型は、治療に難渋している結果が得られた。 この群では、昨年解析したIIb型高脂血症と異なりメタボリックシンドロームによるハイリスク化の関与はなく、独自すなわち遺伝的素因が強いと考えられ、原発性高脂血症特に家族性高コレステロール血症(FH)の占める割合が高いと考えられた。 
結論
日本におけるIIa型高脂血症の現況を把握した。これを踏まえると、FHの診療の充実化が必要であり、FHの新規診療ガイドラインを提言した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200731011B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性高脂血症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 康(千葉大学・大学院医学研究院)
  • 及川 眞一(日本医科大学・第三内科)
  • 島本 和明(札幌医科大学・医学部)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学・社会医学講座)
  • 白井 厚治(東邦大学・医療センター佐倉病院)
  • 石橋 俊(自治医科大学・内科学講座)
  • 太田 孝男(琉球大学・医学部病態解析医科学講座)
  • 武城 英明(千葉大学・大学院医学研究院)
  • 山下 静也(大阪大学・大学院医学系研究科)
  • 島野 仁(筑波大学・大学院人間総合科学研究科)
  • 後藤田 貴也(東京大学・大学院医学系研究科)
  • 清原 裕(九州大学・大学院医学研究院)
  • 林 登志雄(名古屋大学・医学部付属病院)
  • 荒井 秀典(京都大学・大学院医学研究科)
  • 小林 淳二(金沢大学・大学院医学系研究科)
  • 斯波 真理子(国立循環器病センター研究所・バイオサイエンス部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、 特にハイリスク高脂血症を中心に原発性高脂血症研究を展開した。 
研究方法
重要なハイリスク群:メタボリックシンドローム(MetS)、複合型高脂血症、家族性高コレステロール血症の現況を本研究の班員らが研究対象としている複数の集団において、調査、解析した。
結果と考察
MetSは、男性は、30%と評価されたが、女性は、10%未満と海外に比して低頻度であった。女性のウエスト周囲径設定は再検討が必要と思われた。 ウエスト周囲径は、閾値を有することなく連続的に動脈硬化リスク数と相関しており、腹部肥満が動脈硬化リスクとして重要であることが確認される一方、動脈硬化症の既往を指標としたMetS群、非MetS群間での比較では、本症候群の有無は動脈硬化症のマーカーとしてあまり有用とは言えなかった。 
 原発性複合型高脂血症を反映するIIb型高脂血症の解析を展開した。 IIb型高脂血症は、総じて高脂血症に加えて他の動脈硬化症リスク重積の傾向が強く,特に男性では肥満やMetSや虚血性心疾患が多い傾向にあった。 女性の場合は,遺伝的素因の関与も推測された。 今後,IIb型高脂血症は、メタボリックシンドロームや動脈硬化症に対するハイリスク予備軍として,高脂血症治療に加えて他のリスク管理も重要である。 また従来のLDLコレステロールに加えて、高トリグリセリド血症のリスクを加味したnonHDLコレステロールが優れた指標であることがわかった。  
IIa型高脂血症の調査では、総じて女性が男性よりも約2倍多かった。男性は、飲酒とMetSが女性より多く、トリグリセリドが高いためと考えられる。 しかしLDLコレステロールが200 mg/dL以上のハイリスクIIa群は、男女差がなくなり、その他の動脈硬化リスクの増加によるハイリスクカテゴリーの増加が認められた。 IIa型の多くがスタチン治療を受け、コレステロール値の有効な減少を認めているが、女性が目標達成されている一方、男性のハイリスクIIa型は、治療に難渋している結果が得られた。 この群では、独自すなわち遺伝的素因が強いと考えられ、原発性高脂血症特に家族性高コレステロール血症(FH)の占める割合が高いと考えられた。

結論
高トリグリセライド血症ならびにFHの診療の充実化が必要であり、nonHDLコレステロールを2次指標にした高トリグリセライド血症の診療ガイドラインならびにFHの新規診療ガイドラインを提言した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原発性高脂血症病態の研究を、遺伝分子生物学的と生活習慣病としての両面から展開した。 メタボリックシンドロームや複合型高脂血症の研究は、日本人におけるハイリスク高脂血症の現状把握に貢献した。またIIa型高脂血症研究は、家族性高コレステロール血症診療ガイドラインの作製の基礎データとなった。 班員はそれぞれのコホートや外来患者として、年齢(小児、思春期、高齢者も含む)、都市と農村部、島など地域性、」様々な特性を有する研究対象集団を有しており、成果は日本人全体の現状をよく反映していると思われる。
臨床的観点からの成果
原発性高脂血症研究の臨床的目的は、その管理による動脈硬化性疾患の予防にある。
高脂血症の中でも動脈硬化性疾患を進行させるリスクが重積したハイリスク群を重点的に管理予防することが重要であり、本研究ではハイリスク群を重点的に研究対象とした。 その結果、メタボリックシンドロームやハイリスクIIa, IIb型高脂血症を重点的に調査し、日本の現状とどのような原発性高脂血症をより注意して管理すべきかを明らかにした。

ガイドライン等の開発
ハイリスク高脂血症の調査、研究の結果、2005年に作成されたわが国のメタボリックシンドロームの診断基準に基づいた日本における現状と問題点を明らかにした。 ハイリスクIIb型高脂血症(複合型高脂血症)の研究成果として、わが国としてはじめて高トリグリセライド血症の診療ガイドラインをnonHDLコレステロールをLDLコレステロールに次ぐ2次標的に置いて提唱した。 ハイリスクIIa型高脂血症の調査では家族性コレステロール血症(FH)を多く含み、これをふまえてFHの診療ガイドラインを提唱した。
その他行政的観点からの成果
上記の様に提唱した高トリグリセライド血症の診療ガイドライン、家族性コレステロール血症(FH)の診療ガイドラインは、高脂血症診療日常診療に重要な指針を提示している。 原発性高脂血症研究の専門家集団である本研究班が提唱しているこれらのガイドラインが当該学会等で今後ガイドラインを作製する際の参考になることが期待される。
その他のインパクト
高トリグリセライド血症の診療ガイドラインの提唱内容は、2007年日本動脈硬化学会シンポジウムにおいて発表した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
79件
学会発表(国内学会)
107件
学会発表(国際学会等)
48件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimano H, Arai,H, Harada-Shiba M,et al
PROPOSED GUIDELINES FOR HYPERTRIGLYCERIDEMIA IN JAPAN WITH NON-HDL CHOLESTEROL AS THE SECONDARY TARGET.
J Atheroscl erosis and Thrombosis , 15 (3) , 116-121  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-