ベーチェット病に関する調査研究

文献情報

文献番号
200731006A
報告書区分
総括
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 史男(公立大学法人福島県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 磯貝 恵美子(北海道医療大学歯学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学)
  • 石ヶ坪 良明(公立大学法人横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 水木 信久(公立大学法人横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 川島 秀俊(さいたま赤十字病院)
  • 小熊 惠二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山本 俊幸(公立大学法人福島県立医科大学医学部)
  • 小林 浩子(公立大学法人福島県立医科大学医学部)
  • 稲葉 裕(順天堂大学医学部)
  • 太田 正穂(信州大学医学部)
  • 内藤 真理子(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベーチェット病(以下BDと略す)の発症に関与する疾患感受性遺伝子(内因子)と発症の引き金になる環境因子(外因子)との関連について検討するともに、病態の解明と疫学調査を行う。また、従来、特殊型と分類されていた腸管型、血管型、神経型BDの診断基準の見直しと治療ガイドラインの作成を行い、新しい治療法の確立を行うことを目的とした。
研究方法
1)発症内因子としての疾患責任遺伝子の検索
2) 発症外因子の検索:BD患者口腔内では、KTH-1血清タイプのStreptococcus(S.) sanguinis(以下S.Sと略す)が検出される。細菌由来の分子量65kDaのheat shock protein (HSP)-65と生体側の反応性に出現するヒトHSP-60の構造塩基配列における相同性の有無と病態に及ぼす意義について検討した。
3) 疾患責任遺伝子(内因子)と免疫異常
4) 新しい治療法への検討
5) 腸管型BDの診断と治療ガイドラインの作成
結果と考察
以下の結果が得られ、徐々にBDの病因・病態が明らかになってきた。
1)発症内因子:BD患者のHLA-B51拘束性細胞傷害性リンパ球はストレスを受けた細胞を傷害する。
2) 発症外因子について:a) S.S由来のBes-1 DNAは皮膚・粘膜病変部の炎症性浸潤細胞核内に検出された。b) Toll-like receptor (TLR)-2, -4が発現されており、細菌由来とその反応性のヒトHSP-65/60発現とは相関していることから自然免疫機序が病変出現に関与している。
3) 新しい治療開発へのアプローチ:抗TNFα抗体治療は重症ぶどう膜炎患者に適応され、有効であった。
4) 腸管型、血管型, 神経型BDの診療ガイドライン:腸管型BDはクローン病、潰瘍性大腸炎など、他の炎症性腸疾患との鑑別が必要である。血管型、神経型BDの診療ガイドラインは検討中である。
結論
1)HLA-B51拘束性T細胞はストレス細胞を標的に傷害する。
2)BD病変部にS.S関連成分が存在し、浸潤細胞にTLR-2,-4が表現され、自然免疫機序が亢進している。
3)新しい治療への挑戦:ヒトキメラ型TNFα抗体の腸管型、血管型、神経型BDへの治療適応拡大と、その治療ガイドラインの作成が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200731006B
報告書区分
総合
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 史男(公立大学法人福島県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 磯貝 恵美子(北海道医療大学歯学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学)
  • 石ヶ坪 良明(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 水木 信久(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 川島 秀俊(さいたま赤十字病院)
  • 小熊 惠二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中村 晃一郎(福島県立医科大学医学部)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学医学部)
  • 佐藤 由紀夫(福島県立医科大学医学部)
  • 小林 浩子(福島県立医科大学医学部)
  • 稲葉 裕(順天堂大学医学部)
  • 太田 正穂(信州大学医学部)
  • 内藤 真理子(名古屋大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ベーチェット病(以下BDと略す)の発症に関与する疾患感受性遺伝子(内因子)と発症の引き金になる環境因子(外因子)との関連について検討するともに、病態の解明と疫学調査を行う。また、従来、特殊型と分類されていた腸管型、血管型、神経型BDの診断基準の見直しと治療ガイドラインの作成を行い、新しい治療法の確立を行うことを目的とした。
研究方法
1)発症内因子としての疾患責任遺伝子の検索
2) 発症外因子の検索:BD患者口腔内では、KTH-1血清タイプのStreptococcus(S.) sanguinis(以下S.Sと略す)が検出される。細菌由来の分子量65kDaのheat shock protein (HSP)-65と生体側の反応性に出現するヒトHSP-60の構造塩基配列における相同性の有無と病態に及ぼす意義について検討した。
3) 疾患責任遺伝子(内因子)と免疫異常
4) 疫学調査とQOLに関する検討
5) 腸管型BDの診断と治療ガイドラインの作成
結果と考察
1)発症内因子:BD患者のHLA-B51陽性でHLA-A*2601は完全型で眼症状が多く、陰性では皮膚症状が多い。HLA-B遺伝子近傍のHLA-F,HLA-Gにも相関の可能性が示された。
2)発症外因子について:Toll-like receptor (TLR)-2,-4,-9が発現されており、細菌由来とその反応性のヒトHSP-65/60発現とは相関していることから自然免疫機序が病変出現に関与している。
3)新しい治療開発へのアプローチ:抗TNFα抗体治療は重症ぶどう膜炎患者に適応され、有効であった。神経型BDにも適応がありそうである。
4)疫学調査とQOL:BD患者のQOLは国民標準値に比較して低く、口腔アフタ出現時は口腔衛生が悪く、QOLが低い。
5)腸管型、血管型、神経型BDの診療ガイドライン:腸管型BDはクローン病、潰瘍性大腸炎など、他の炎症性腸疾患との鑑別が必要である。血管型、神経型BDの診療ガイドラインは検討中である。
結論
1)HLA-B51拘束性T細胞はストレス細胞を標的に傷害する。
2)BD病変部にS.S関連成分が存在し、浸潤細胞にTLR-2,-4-9が表現され、自然免疫機序が亢進している。
3)新しい治療への挑戦:ヒトキメラ型TNFα抗体の腸管型、血管型、神経型BDへの治療適応拡大と、その治療ガイドラインの作成が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ベーチェット病の発症には疾患感受性遺伝子(HLA-B51近傍)の内因子と引き金になる外因子が関与する。外因子の一つとして、患者の口腔内のStreptococcus sanguinisは増殖しており、それに対して過敏反応を獲得している。病変部には菌関連の65kDa熱ショック蛋白(HSP-65)と反応性ヒトHSP-60および菌由来Bes-1 DNAが存在し、眼網膜蛋白Brn3bの構造と相同性がある。Toll-like receptor-2,4,9が発現し、自然免疫機序が関与している。
臨床的観点からの成果
HLA-B51陽性でHLA-A*2601を有する患者は完全型で眼症状が多、HLA-B51陰性でHLA-A*2601を有する患者は皮膚・粘膜症状が多い。病変部では、主にTh1型サイトカインによる炎症症状であり、特に重症ぶどう膜炎を起こした患者の眼症状に従来コルヒチン、シクロスポリン併用療法であったが、ヒトキメラ型抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)治療は有効である。神経型BDの治療にも応用可能である。
ガイドライン等の開発
腸管ベーチェット病診療作製プロジェクトが開始され、2006年11月18日会議が開催されて難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(主任研究者 慶應義塾大学 日比紀文教授)の「炎症性腸疾患の診療ガイドライン開発と診療オプションの策定」の中で討議された。今後、同様に血管型,神経型BDの診療ガイドラインも作成すべく準備を開始した。
その他行政的観点からの成果
毎年、年2回の研究班会議は患者会ベーチェット病友の会の方々並びに関係製薬会社の方々に対して参加を呼びかけ、また班会議終了後は、患者会の方々の勉強会としての時間を設けて班員の研究成果を解説して理解を求めている。
その他のインパクト
2008年2月8日付け、Japan Medicine Vol. 11 「ベーチェット病―高まるインフリキシマブへの期待 さらなる適応拡大も 診断と治療ガイドラインも改定へ」が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
22件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
31件
その他論文(英文等)
177件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yanagihori H, Oyama N, Nakamura K, et al.
Role of IL12B promoter polymorphism in Adamantiades-Behcet’s disease susceptibility: an involvement of Th1 immunoreactivity against Streptococcus sanguinis antigen.
Journal of Investigative Dermatology , 126 (7) , 1534-1540  (2006)
原著論文2
Chen X, Katoh Y, Nakamura K, et al.
Single nucleotide polymorphisms of Ficolin 2 gene in Behcet's disease.
Journal of Dermatological Science , 43 (3) , 201-205  (2006)
原著論文3
Takeno M, Ishigatsubo Y.
Behcet's disease and familial Mediterranean fever.
Intern Med , 45 (13) , 805-806  (2006)
原著論文4
Takamoto M, Kaburaki T, Numaga J, et al.
Long-term infliximab treatment for Behcet's disease.
Japanese Journal of Ophthalmology , 51 (3) , 239-240  (2007)
原著論文5
Ito A, Ota M, Katsuyama Y, et al.
Lack of association of Toll-like receptor 9 gene polymorphism with Behcet’s disease in Japanese patients.
Tissue Antigens , 70 (5) , 423-426  (2007)
原著論文6
Mizuki N, Meguro A, Tohnai I, et al.
Association of MICA and HLA-B Alleles with Behcet’s Disease in Turkey.
Jpn J Ophthalmol , 51 (6) , 431-436  (2007)
原著論文7
Katsuyama Y, Ota M, Mizuki N,et al.
MDR1 polymorphisms effect cyclosporine AUC0-4 in Behcet’s disease patients.
Clinical Opthalmol , 1 (3) , 297-303  (2007)
原著論文8
Namba K, Sonoda K.H, Kitamei H, et al.
Granuloctapheresis in patients with refractory ocular Behcet’s disease.
J Clin Apher , 21 (2) , 121-128  (2006)
原著論文9
Itoh Y, Inoko H, Nakamura K, et al.
Four-digit allele genotyping of the HLA-A and HLA-B genes in Japanese patients with Behcet’s disease by a PCR-SSOP-Luminex method.
Tissue Antigens , 67 (5) , 390-394  (2006)
原著論文10
Naito M, Suzukamo Y, Nakaqyama T, et al.
The impact of recurrent aphthous stomatitis on quality of life in Behcet’s disease patients.
Qual Life Res , 14 , 2024-  (2005)
原著論文11
Wang H, Nakamura K, Inoue T, et al.
Mannose-binding lectin polymorphisms in patients with Behcet’s disease.
J Dermatol Sci , 36 (2) , 115-117  (2004)
原著論文12
Yasuoka H, Okazaki Kawakami Y, et al.
Autoreactive CD8+cytotoxic T lymphocytes to major histocompatibility complex I chain-related molecule A in patients with Behcet’s disease.
Arthritis Rheum , 50 (11) , 3658-3662  (2004)
原著論文13
Takeno M, Ishigatsubo H
Behcet’s disease and inflammatory bowel disease.
Intern Med , 43 (3) , 172-173  (2004)
原著論文14
金子史男、尾山徳孝
ベーチェット病、DATAで読み解く内科疾患
綜合臨床、2007増刊 , 56 , 687-694  (2007)
原著論文15
金子史男、尾山徳孝、磯貝恵美子
ここまでわかった遺伝子異常―口内炎、ベーチェット病―
Johns , 22 (12) , 1757-1763  (2006)
原著論文16
金子史男
最終講義―Behcet病と口腔内レンサ球菌について―
皮膚臨床 , 48 (12) , 1653-1660  (2006)
原著論文17
鈴木 登、鈴木智子
ベーチェット病とToll-like receptor
医学のあゆみ , 215 (1) , 23-27  (2005)
原著論文18
中村 聡、堀 貞夫、島川真知子、他
ベーチェット病患者を対象とした抗TNF-α抗体前期第二相臨床試験成績
臨床眼科 , 59 (10) , 1685-1689  (2005)
原著論文19
水木信久
ベーチェット病患者に対するシクロスポリンのテーラーメイド医療の検討
今日の移植 , 18 (6) , 713-716  (2005)
原著論文20
岳野光洋、石ヶ坪良明
Behcet病におけるヘムオキシゲナーゼ1の役割
医学のあゆみ , 215 (1) , 33-37  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
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