原発性免疫不全症候群に関する調査研究

文献情報

文献番号
200731003A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 利男(国立大学法人富山大学大学院医学薬学研究部小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀 正(北海道大学大学院医学研究科小児科学分野)
  • 土屋 滋(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校医学研究科小児科学)
  • 上松 一永(信州大学大学院医学研究科臓器移植細胞工学医科学系専攻 移植免疫感染症学)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学分野)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達学)
  • 岩田 力(東京家政大学家政学部児童学科)
  • 中畑 龍俊(京都大学大学院医学研究科・発生発達医学講座発達小児科学)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発達病態小児科学分野)
  • 小林 正夫(広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態情報医科学講座小児科学)
  • 烏山 一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生体環境応答学系専攻免疫アレルギー学分野)
  • 千住 覚(熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学分野)
  • 谷内江昭宏(金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻病態検査学講座)
  • 蒲池 吉朗(名古屋大学大学院医学系研究科・健康社会医学専攻発育加齢医学講座小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性免疫不全症群に含まれる各種の疾患を有する患者のQOLの向上に一層寄与することを目的として、重点目標として、1) 疫学調査研究、2) 簡易診断法の開発と遺伝子解析、3) 責任遺伝子,発症機構,病態の解明、4) 治療法の改良と遺伝子治療、5) ホームページの充実と患者QOLの改善を掲げ、国際的動向を十分に視野に入れ調査・研究を推進した。
研究方法
 原発性免疫不全症候群に含まれる各種の疾患を対象に、臨床調査個人表を活用した新規登録および疫学調査、簡易診断と遺伝子解析を併用した遺伝子診断、臨床的観察や基礎的研究に基づいた病態解析、責任遺伝子の同定のための新たな手法の開発、患者のQOLの向上につながる治療法の改良、遺伝子治療の臨床的基礎的研究の推進などを分担して施行し、これらを総合的に解析・評価することにより、原発性免疫不全症候群の新たな概念、病態、診断や治療法の開発を目指した。
結果と考察
 平成19年度では、以下の結果が得られた。1)疫学調査研究:全国登録の推進に努め、新規に10例(男8例、女2例)が登録された。延べ登録数は1,297名、内訳は男性942名(72.6%)、女性355名(27.4%)となった。2)簡易診断の開発と遺伝子解析:責任遺伝子の明らかとなっている疾患に加え、自己炎症性症候群などの新たな疾患についても遺伝子解析を進め、102家系で遺伝子診断を行なった。3)責任遺伝子、発症機構、病態の解明:各種疾患の基礎的・臨床的解析を行い、新規責任遺伝子として世界に先駆けて1型高IgE症候群の責任遺伝子STAT3を発見した。4)治療法の改良と遺伝子治療研究:抗体産生不全症で必要となる免疫グロブリン補充療法の用量見直しに協力し、全国実態調査に基づき慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞移植の統一したガイドラインを作成した。5)ホームページの充実と患者QOLの改善:ホームページや電話を通して患者・家族からの問合せに親身に答え、遺伝子解析や遺伝カウンセリングに誠意をもって対応するとともに、患者・家族会では講演や医療相談に参画した。
結論
 本調査研究では、原発性免疫不全症候群に含まれる疾患の診断や治療に結びつく臨床的基礎的調査研究を、分担研究者間の連携を密に実施した。得られた成果を生かした今後の調査研究の活用や展開が求められる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200731003B
報告書区分
総合
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 利男(国立大学法人富山大学大学院医学薬学研究部小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀 正(北海道大学大学院医学研究科小児科学分野)
  • 土屋 滋(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校医学研究科小児科学)
  • 上松 一永(信州大学大学院医学研究科臓器移植細胞工学医科学系専攻 移植免疫感染症学)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学分野)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達学)
  • 岩田 力(東京家政大学家政学部児童学科)
  • 中畑 龍俊(京都大学大学院医学研究科・発生発達医学講座発達小児科学)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発達病態小児科学分野)
  • 小林 正夫(広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態情報医科学講座小児科学)
  • 烏山 一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生体環境応答学系専攻免疫アレルギー学分野)
  • 千住 覚(熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学分野)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻病態検査学講座)
  • 蒲池 吉朗(名古屋大学大学院医学系研究科・健康社会医学専攻発育加齢医学講座小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性免疫不全症群に含まれる各種の疾患を有する患者のQOLの向上に一層寄与することを目的として、重点目標として、1) 疫学調査研究、2) 簡易診断法の開発と遺伝子解析、3) 責任遺伝子,発症機構,病態の解明、4) 治療法の改良と遺伝子治療、5) ホームページの充実と患者QOLの改善を掲げ、平成17年より3年間にわたり国際的動向を十分に視野に入れ調査・研究を推進した。
研究方法
 原発性免疫不全症候群に含まれる各種の疾患を対象に、臨床調査個人表を活用した新規登録および疫学調査、簡易診断と遺伝子解析を併用した遺伝子診断、臨床的観察や基礎的研究に基づいた病態解析、責任遺伝子の同定のための新たな手法の開発、患者のQOLの向上につながる治療法の改良、遺伝子治療の臨床的基礎的研究の推進などを分担して施行し、これらを総合的に解析・評価することにより、原発性免疫不全症候群の新たな概念、病態、診断や治療法の開発を目指した。
結果と考察
 3年間の調査研究より、以下の結果が得られた。1)疫学調査研究:臨床調査個人票を活用した全国登録に努め、登録総数は1,297名となった。2)簡易診断の開発と遺伝子解析:責任遺伝子の明らかとなっている疾患の遺伝子解析を進め、新規責任遺伝子を含め新たに223家系で遺伝子解析による確定診断を行なった。3)責任遺伝子、発症機構、病態の解明:各種疾患の基礎的・臨床的解析を行い、新規責任遺伝子として世界に先駆けて1型高IgE症候群の責任遺伝子STAT3及び2型高IgE症候群の責任遺伝子Tyk2を同定した。4)治療法の改良と遺伝子治療研究:抗体産生不全症で必要となる免疫グロブリン補充療法の用量見直しに協力し、全国実態調査に基づき重症複合免疫不全症、Wiskott-Aldrich症候群、慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞移植の統一したガイドライン案を作成した。5)ホームページの充実と患者QOLの改善:ホームページや電話を通して患者・家族からの問合せに親身に答え、遺伝子解析や遺伝カウンセリングに誠意をもって対応するとともに、患者・家族会では講演や医療相談に積極的に参画した。
結論
 本調査研究では、原発性免疫不全症候群に含まれる疾患の診断や治療に結びつく臨床的基礎的調査研究を、分担研究者間の連携を密に実施した。得られた成果を生かした今後の調査研究の活用や展開が求められる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
疫学調査研究では、臨床調査個人票を活用した全国登録に努め、登録総数は1,297名となった。簡易診断法の開発と遺伝子解析では、責任遺伝子の明らかとなっている疾患の遺伝子解析を進め、新規責任遺伝子を含め新たに223家系で遺伝子解析による確定診断を行なった。各種疾患の基礎的・臨床的解析を行い、新規責任遺伝子として世界に先駆けて1型高IgE症候群の責任遺伝子STAT3及び2型高IgE症候群の責任遺伝子Tyk2を同定した。
臨床的観点からの成果
単クローン抗体を用いたフローサイトメトリー法をXSCID、XCGD、WAS、XLPについて開発し、遺伝子診断のスクリーニングに活用。ADA欠損症、IPEX症候群、NEMO欠損症、Artemis遺伝子変異、XIAP欠損症、IRAK4欠損症についても、保因者同定、幹細胞移植後モニタリングに有用な手段を提供した。SCIDを生後早期にスクリーングする為、T細胞受容体の環状DNA を定量する方法を確立した。新生児マススクリーニングに用いる乾燥濾紙血で実施可能で、埼玉県、東京都でパイロット的研究を開始した。
ガイドライン等の開発
抗体産生不全症で必要となる無/低γグロブリン血症における静注用免疫グロブリン製剤補充療法の用量見直しに協力し、全国実態調査に基づき重症複合免疫不全症、Wiskott-Aldrich症候群、慢性肉芽腫症に対する造血幹細胞移植の統一したガイドライン案を作成した。
その他行政的観点からの成果
患者・家族会の恒久的な活動の運営のためにNPO法人化へ向けの助言をし、平成20年中のNPO法人化へ向けての患者・家族会への援助を行った。原発性免疫不全症候群は比較的まれな疾患であることより、患者・家族にとって安心して治療に専念できる専門病院情報に対する要望が強いので、全国の66施設を原発性免疫不全症候群の専門病院として担当医と連絡先をホームページに掲示した。さらに、個々の疾患の確定診断に必要となる遺伝子診断の可能な29施設をホームページに載せた。
その他のインパクト
本調査研究班の責務の一つに、臨床個人調査票を活用した患者登録事業があるが、登録については遺伝子診断例も含め主治医に登録を促すという形で行われてきた。しかし、遺伝子診断例が登録例を大きく越えている。この問題点を解決するため、本邦における原発性免疫不全症候群の真の発生状況を明らかにするためにも、インターネットを介した登録の実施、疫学調査担当者と遺伝子解析担当者との円滑な連携プレー、臨床個人調査票との対比作業など、新たな登録システムを作成中である。

発表件数

原著論文(和文)
84件
原著論文(英文等)
307件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
630件
学会発表(国際学会等)
126件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計9件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Uchiyama T., Kumaki S.,Tsuchiya S. et al.
Application of HSVtk suicide gene to X-SCID gene therapy: Ganciclovir treatment offsets gene corrected X-SCID B cells.
Biochem Biophys Res Commun , 341 , 391-398  (2006)
原著論文2
Minegishi Y.,Morio T.,Karasuyama H. et al.
Human tyrosine kinase 2 deficiency reveals its requisite roles in multiple cytokine signals involved in innate and acquired immunity.
Immunity , 25 , 754-755  (2006)
原著論文3
Takada H., Yoshikawa H., Hara T. et al.
Delayed separation of the umbilical cord in two siblings with interleukin-1 receptor-associated kinase 4 deficiency: rapid screening by flow cytometer.
J Pediatr , 148 , 546-548  (2006)
原著論文4
Tone Y., Wada T., Yachie A. et al.
Somatic revertant mosaicism in a patient with leukocyte adhesion deficiency type 1. 
Blood , 109 , 1182-1184  (2007)
原著論文5
Fuchizawa T.,Kamachi Y.,Miyawaki T. et al.
Developmental changes of FOXP3-expressing CD4+CD25+ regulatory T cells and their impairment in patients with FOXP3 gene mutations
Clin Immunol , 125 , 237-246  (2007)
原著論文6
Kanegane H., Agematsu K., Miyawaki T. et al.
Novel mutation in a Japanese patient with CD19 deficiency.
Genes Immun , 8 , 663-670  (2007)
原著論文7
Okada S., Ishikawa N., Kobayashi M.et al.
The novel IFNGR1 mutation 774del4 produces a truncated form of interferon- γreceptor 1 and has a dominant-negative effect on interferon-γ signal transduction
J Med Genet , 44 , 485-491  (2007)
原著論文8
Minegishi Y., Saito M., Karasuyama H.
Dominant-negative mutations in the DNA-binding domain of STAT3 cause Hyper-IgE syndrome.
Nature , 448 , 1058-1062  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-