特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
200731001A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 卓(京都大学大学院)
  • 岡本真一郎(慶應義塾大学医学部)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部)
  • 朝長万左男(長崎大学原爆後障害医療研究施設)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院)
  • 中畑 龍俊(京都大学大学院)
  • 原田 実根(九州大学大学院)
  • 村手 隆(名古屋大学医学部)
  • 杉田 稔(東邦大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血(骨髄異形成症候群MDS)、骨髄線維症を対象疾患とした全国規模の調査研究を、疫学・病因・病態・診断・予後などの幅広い領域にわたって実施した。
研究方法
主任研究者1名、分担研究者10名、研究協力者20名の計31名より構成され、それぞれの疾患領域で研究を立案実施した。
結果と考察
1.再生不良性貧血:(1)臨床調査個人票を使って我が国の特徴を解析した。(2)日本血液学会と連携し、血液疾患全例登録を継続した。(3)至適治療方針を確立するため、共通免疫抑制療法プロトコールを継続した。(4)PNH型血球の出現機序を解明するため、PIG-A遺伝子を解析した。(5)ファンコニ貧血の分子病態解析を行った。(6)慢性赤芽球癆に関する調査を実施し、寛解維持に長期維持療法が必要であることを示した。
2.溶血性貧血: 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)については、新規治療薬エクリズマブの導入を背景に、患者向けPNH解説書の日本語訳を作成した。自己免疫性溶血性貧血では、赤血球結合IgG量測定がクームス陰性例の診断に有用であることを示した。
3.不応性貧血: (1)前方視的症例登録、セントラルレビュー、追跡調査研究を継続した。(2)診断標準化のためにMDS診断確度区分の策定および形態アトラスを作成し、全国の診療現場に配布した。(3)5q-を有するMDSの全国集計を進め、芽球増加などが生存率の危険因子であることを示した。(4)日本小児血液学会と提携して小児MDSのセントラルレビューを推進し、診断標準化作業を進めた。(5)移植前フェリチン値が移植後の成績に相関していることを確認した。しかし、HCT-CIスコアを凌駕するほどの優位性は認められなかった。(6)MDS患者においてSPHK1の発現レベルは抗癌剤感受性のよい指標となり、新規分子標的となりうることが示唆された。
4.骨髄線維症: 1999年から2007年の8年間に、374例の新規患者登録を得た。サリドマイドが投与された10例中5例で貧血の改善が確認され、その有用性が示唆された。
5.その他: 輸血後鉄過剰症の全国実態調査の結果を踏まえ、我が国初となる輸血後鉄過剰症の診療ガイドを策定した。

結論
特発性造血障害に関する調査研究が、広範囲に計画・実施され、大きな成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200731001B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 卓(京都大学大学院)
  • 岡本真一郎(慶應義塾大学医学部)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部)
  • 朝長万左男(長崎大学原爆後障害医療研究施設)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院)
  • 中畑 龍俊(京都大学大学院)
  • 原田 実根(九州大学大学院)
  • 村手 隆(名古屋大学医学部)
  • 杉田 稔(東邦大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血(骨髄異形成症候群MDS)、骨髄線維症を対象疾患とした全国規模の調査研究を、疫学・病因・病態・診断・予後などの幅広い領域にわたって実施した。
研究方法
班員が中核となり、さらにMDS重点研究班や横断的基盤研究班と連携し、また関連学会や全国主要病院等の協力を得て、各疾患の調査研究を実施した。
結果と考察
1.再生不良性貧血:(1)臨床調査個人票を使い、我が国の疫学調査を行った。(2)日本血液学会と連携し、血液疾患全例登録の活動を進めた。(3)PNH型血球や抗モエシン抗体等が免疫抑制療法への反応性を予測するのに有用であることを示した。(4)至適治療方針を確立するため、共通免疫抑制療法プロトコールを作成し、患者の前方視的登録を行った。(5)ファンコニ貧血の分子病態解析を行った。(6)慢性赤芽球癆に関する調査を実施し、シクロスポリン(CsA)が標準的治療薬として有用であることを示した。
2.溶血性貧血: 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)については、新規治療薬エクリズマブの導入を背景に日米欧共同研究を推進し、また患者向けPNH解説書の日本語訳を作成した。自己免疫性溶血性貧血では、赤血球結合IgG量測定がクームス陰性例の診断に有用であることを示した。
3.不応性貧血: (1)前方視的症例登録、セントラルレビュー、追跡調査研究を行い、CsAの有効性を示した。(2)診断標準化のためにMDS診断確度区分の策定および形態アトラスを作成し、全国の診療現場に配布した。(3)中国とドイツにおけるMDS臨床像が我が国と異なる点を明らかにした。(4)5q-を有するMDSの全国集計を進め、年間推定発症数10名前後、芽球増加などが生存率の危険因子であることを示した。(5)日本小児血液学会と提携して小児MDSの診断標準化作業を進めた。(6)造血幹細胞移植の適応・移植法に関する指針を策定するため、成績および予後因子の調査を行った。(7)WT1やSPHK1の意義を調べた。
4.骨髄線維症: 1999年から2007年の8年間に、374例の新規患者登録を得た。蛋白同化ホルモンとサリドマイドの有用性を確認した。
5.その他: 輸血後鉄過剰症の全国実態調査を行い、さらに輸血後鉄過剰症の診療ガイドを策定した。

結論
特発性造血障害に関する調査研究を広範囲に計画・実施し、大きな成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
再生不良性貧血において抗モエシン抗体、微少PNH型血球、抗DRS-1抗体の存在が免疫抑制療法に対する反応性の予測因子であることを明らかにした。また、HMGA2遺伝子の異常がPNHにおける異常クローン拡大に関与している可能性を見出した。骨髄異形成症候群では病型進展とスフィンゴシンキナーゼの発現量が相関していることを明らかにした。その他、原発性骨髄線維症の発症機序を解明するため、JAK2遺伝子変異マウスの作成に成功するなど様々な成果を上げた。
臨床的観点からの成果
再生不良性貧血における免疫病態マーカーの意義を明らかにするため、共通治療プロトコールによる臨床研究を開始した。特発性慢性赤芽球癆ではシクロスポリンがステロイドより有効であること、原発性骨髄線維症には蛋白同化ホルモン、サリドマイドが有効であることを明らかにした。再生不良性貧血と不応性貧血(MDS)の鑑別のため、骨髄異形成の形態学的診断基準を作成した。PNHに対するエクリズマブ、5q-MDSに対するレナリドマイドなどの新規治療薬の治験に備えた臨床調査を実施した。
ガイドライン等の開発
平成16年度に策定された各特発性造血障害疾患の診療ガイドの見直しと一部改定を行った。「不応性貧血(骨髄異形成症候群)の形態学的異形成に基づく診断確度区分と形態診断アトラス」という小冊子を作成し、班員ならびに全国の血液内科医に広く配布した。また、経口鉄キレート剤が我が国にも導入されることから、特発性造血障害疾患患者での輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法の全国実態調査を実施し、その結果を踏まえ、輸血後鉄過剰症の診療ガイドを策定した。
その他行政的観点からの成果
再生不良性貧血の発症動向を把握するため、特定疾患の疫学に関する研究班と連携して臨床調査個人票を解析し、疫学調査を行った。厚生労働省より使用許可を得た上で電子化データを入手して解析を行ったが、その結果、我が国において再生不良性貧血はやや女性に多いこと、男女とも60歳?74歳と高齢者に発症のピークがあること、9割以上が特発性であるなどの特徴が明らかとなった。これらのデータは今後の難病対策行政にとって貴重なものであり、行政的観点から重要な成果と考えられる。
その他のインパクト
年2回の班会議総会は一般に公開されており、また、研究班のホームページを立ち上げ、研究成果を広く社会に発信・還元することができた。平成18年度には特発性造血障害調査研究班30周年記念国際シンポジウムを開催し、この分野の欧米の研究者との交流を深めた。平成19年度には、日本学術会議・日本鉄バイオサイエンス学会と共催でBioIron2007京都フォローアップシンポジウムを開催し、多数の研究者や市民の参加を得ることができ、極めて高い評価を得た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
112件
その他論文(和文)
70件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
特発性造血障害調査研究班30周年記念国際シンポジウム(2007年) BioIron2007京都フォローアップシンポジウム(2008年)など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirokawa,M.,Sawada,K., Ozawa, K. et al
Long-Term response and outcome following immunosuppressive therapy in thymoma-associated pure red cell aplasia: a nationwide cohort study in Japan for the PRCA collaborative study group.
Haematologica , 93 (1) , 27-33  (2008)
原著論文2
Ishikawa, T.,Tohyama, K., Omine, M. et al
A prospective study of cyclosporine A treatment of patients with low-risk myelodysplastic syndrome: presence of CD55(-) CD59(-) blood cells predicts platelet response.
Int J Hematol. , 86 , 150-157  (2007)
原著論文3
Fukunaga, A., Ishikawa, T.,Uchiyama. T. et al
Altered homeostasis of CD4 memory T cells in allogeneic hematopoietic stem cell transplant recipients: chronic graft-versus-host disease enhances T cell differentiation and exhausts central memory T cell pool
Biol. Blood Marrow Transplant , 13 , 1176-1184  (2007)
原著論文4
Oda, T., Hayano, T., Yamashita, T. et al
Hsp90 regulates the Fanconi anemia DNA damage response pathway
Blood , 109 (11) , 5016-5026  (2007)
原著論文5
Sugimori, C., Yamazaki, H., Nakao, S. et al
Roles of DRB1 *1501 and DRB1*1502 in the pathogenesis of aplastic anemia.
Exp. Hematol. , 35 , 13-20  (2007)
原著論文6
Sawada, K.,Hirokawa, M.,Ozawa, K. et al
Long-term outcome of patients with acquired primary idiopathic pure red cell aplasia receiving cyclosporine A. A nationwide cohort study in Japan for the PRCA collaborative study group.
Haematologica , 92 , 1021-1028  (2007)
原著論文7
Yamazaki, H., Sugimori, C., Nakao, S. et al
Cyclosporine therapy for acquired aplastic anemia: predictive factors for the responseand long-term prognosis.
Int J Hematol. , 85 , 186-190  (2007)
原著論文8
Shimoda, K., Shide, K.,Harada, M. et al
The effect of anabolic steroids on anemia in myelofibrosis with myeloid metaplasia: retrospective analysis of 39 patients in Japan.
Int. J. Hematol. , 85 , 338-343  (2007)
原著論文9
Teramura, M.,Kimura, A., Mizoguchi, H. et al
Treatment of severe aplastic anemia with antithymocyte globulin and cyclosporin A with or without G-CSF in adults: a multicenter randomized study in Japan.
Blood , 110 (6) , 1756-1761  (2007)
原著論文10
Takamatsu, H.,Feng, X., Nakao, S. et al
Specific antibodies to moesin, a membrane-cytoskeleton linker protein, are frequently detected in patients with acquired aplastic anemia.
Blood , 109 (6) , 2514-2520  (2007)
原著論文11
Takatoku M., Uchiyama T.,Ozawa K. et al
Retrospective nationwide survey of Japanese patients with transfusion-dependent MDS and aplastic anaemia highlights the negative impact of iron overload on morbidity/mortality.
Eur. J. Hematol. , 78 , 487-494  (2007)
原著論文12
Yamazaki, H., Sugimori, C.,Nakao, S. et al
Cyclosporine therapy for acquired aplastic anemia: predictive factors for the responseand long-term prognosis.
Int J Hematol. , 85 , 186-190  (2007)
原著論文13
Sato, K., Ozaki, K., Ozawa, K. et al
Nitric oxide plays a critical role in suppression of T cell proliferation by mesenchymal stem cells.
Blood , 109 (1) , 228-234  (2007)
原著論文14
Sugimori, C.,Chuhjo, T.,Nakao, S et al
Minor population of CD55-CD59- blood cells predicts response to immunosuppressive therapy and prognosis in patients with aplastic anemia
Blood , 107 (4) , 1308-1314  (2006)
原著論文15
Sobue, S., Iwasaki, T., Murate, T. et al
Quantitative RT-PCR analysis of sphingolipid metabolic enzymes in acuteleukemia and myelodys plastic syndromes
Leukemia , 20 , 2042-2046  (2006)
原著論文16
Komastuda, A., Kawabata, Y., Sawada, K. et al
Successful autologous peripheral blood stem cell transplantation using thiotepa in a patient with systemic sclerosis and cardiac involvement.
Tohoku J. Exp. Med. , 209 , 61-67  (2006)
原著論文17
Saito, K.,Hirokawa, M.,Sawada, K. et al
Phagocytosis of co-developing megakaryocytic progenitors by dendritic cells in culture with thrombopoietin and tumor necrosis factor-{alpha} and its possible role in hemophagocytic syndrome.
Blood , 107 (4) , 1366-1374  (2006)
原著論文18
Inoue, N.,Izui-Sarumaru, T.,Kinoshita, T. et al
Molecular basis of clonal expansion of hematopoiesis in 2 patients with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria (PNH).
Blood , 108 (13) , 4232-4236  (2006)
原著論文19
Kamae, T., Shiraga, M.,Kanakura, Y. et al
Critical role of ADP interaction with P2Y12 receptor in the maintenance of aIIbb3 activation: association with Rap1B activation.
J. Thromb. Haemost. , 4 , 1379-1387  (2006)
原著論文20
Ishikawa, F., Yasukawa, M.,Harada, M. et al
Development of functional human blood and immune systems in NOD/SCID/IL2 receptor γ hainnuU mice.
Blood , 106 (5) , 1565-1573  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-