候補遺伝子DISC1の機能解析による統合失調症の病態理解と治療戦略の構築

文献情報

文献番号
200730073A
報告書区分
総括
研究課題名
候補遺伝子DISC1の機能解析による統合失調症の病態理解と治療戦略の構築
課題番号
H19-こころ-若手-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
久保 健一郎(慶應義塾大学医学部解剖学教室2)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,548,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DISC1は精神疾患多発家系から発見された最初の統合失調症候補遺伝子の一つで、世界的に注目されている。本研究では、DISC1の脳の発生における機能の解析を進めることで、精神疾患の病態理解に役立てる。更に抗精神病薬の標的カスケードとの関連を解明し、新たな薬剤標的を明らかにすることを目的とする。
研究方法
統合失調症候補分子DISC1の分子カスケードを明らかにすることを目的として、新たな結合分子の同定を試みた。結合分子の候補として統合失調症および双極性感情障害に連鎖を示すpericentpericentriolar material-1(PCM1)、さらにDISC1に結合するp150gluedが結合するBardet-Biedl syndromeの原因遺伝子であるBardet-Biedl syndrome-4 protein (BBS4)に注目した。当研究室で開発したれらの分子に対するsiRNA、これらの分子に対するsiRNAを発生中のマウス大脳皮質に導入し、それぞれの分子をノックダウンしたときの移動神経細胞への影響を観察した。また、DISC1上の薬剤によって調節される部位であるアミノ酸配列を利用して、DISC1がどのように薬剤によって機能調節を受ける可能性があるのかを解析した。



結果と考察
当研究室で開発した子宮内胎児電気穿孔法を用いて、これらの分子に対するsiRNAを発生中のマウス大脳皮質に導入し、それぞれの分子をノックダウンしたときの移動神経細胞への影響を観察したところ、ノックダウンにより、神経細胞の移動に遅れを生じることが判明した。しかも、DISC1とBBS4については、それらのノックダウンを同時に行うと、単独で行った場合よりもより大きな遅れが観察され、これらの分子が相補的に神経細胞移動に働いていることが判明した。また、DISC1上の薬剤によって調節される部位であるアミノ酸配列に変異をいれた変異体は、ノックダウンの形質を回復する効果が変異を入れないものに対して小さかった。
結論
 これまでに、DISC1に結合する分子としてpericentriolar material-1(PCM1)およびBardet-Biedl syndrome-4 protein (BBS4)を同定した。また、DISC1がどのように薬剤によって機能調節を受ける可能性があるのかを解析した。
 今後、現在の解析を進めるとともに、発見された結合分子の機能解析をさらに進める。すでに知られている抗精神病薬の標的カスケードとの関連に着目し、向精神薬・抗精神病薬の薬理作用について解明を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-