プリオン病における免疫反応の解明とそれに基づく診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200730072A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病における免疫反応の解明とそれに基づく診断・治療法の開発
課題番号
H19-こころ-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
片峰 茂(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 教行(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 調 漸(長崎大学医学部・歯学部附属病院)
  • 坂口 末廣(徳島大学疾患酵素学研究センター)
  • 杉村 和久(鹿児島大学工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プリオン病分子機構の解明に基づく診断・治療法の開発が急務である。本研究では、これまでほとんど顧みられることのなかった免疫系を利用したプリオン病予防・治療法の確立を目指す。
研究方法
具体的には本研究では以下のことを行い、自然免疫賦活物質と抗体の臨床応用へ向けた基盤を確立する。
(1)干渉現象における自然免疫系の関与を解明し、インターフェロンなど自然免疫賦活物質の抗プリオン効果を検討し臨床応用につなげる。
(2)各種プリオン株や自然免疫(とくにRIG1-IRF3系)を賦活化する既知のRNAウイルスの抗プリオン効果を検討し、効果のあるものに関しては弱毒化を試みる。
(3)種々の組み換え型PrP抗体をクローニングし、さらに異常型PrP立体構造特異的抗体を選別し、結合特異性を解析する。
(4)これら抗体の診断的有用性を確立するとともに治療への応用を検討する。
(5)ミクログリアや骨髄系培養細胞を用いて抗体の効果的脳内送達・発現法を開発する。
結果と考察
(1)各種自然免疫関連分子の感染細胞における発現量と挙動を検討し、自然免疫系の機能が低下していること、自然免系のうちRIGI-IRF3シグナル伝達系の賦活化がPrPの異常化を阻止できることが明らかになった。
(2)ヒト抗体を提示したファージディスプレイライブラリをβシート型プリオン蛋白に直接反応させる方法で単離したヒトscFv抗体 (#7 scFv抗体および#30 scFv抗体)は、プリオン蛋白のβ構造を特異的に識別する抗体であることが示唆された。
(3)mycタグを付加したSh3.9scFv cDNAを挿入したlentivirus発現vectorにおり293T細胞で発現する抗体がrecombinant PrPに特異的に結合し、プリオン株種には依存せず抗プリオン活性を発揮し、プリオン感染細胞のPrPScの産生を抑制することが示された。
結論
プリオン持続感染細胞では自然免疫系の機能が低下していること、および自然免疫系のうちRIGI-IRF3シグナル伝達系の賦活化がプリオン持続感染細胞におけるPrPの異常化を阻止できることが判った。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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