パーキン蛋白の機能解析と治療法の開発

文献情報

文献番号
200730069A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキン蛋白の機能解析と治療法の開発
課題番号
H19-こころ-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
服部 信孝(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)
  • 高橋 良輔(京都大学 医学部)
  • 澤田 誠(名古屋大学 環境医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
常染色体劣性若年性パーキンソニズム(AR-JP)の原因遺伝子であるパーキン遺伝子とその遺伝子産物パーキン蛋白の機能解析を推進し、本症における黒質神経細胞死の機序を分子レベルで解明することを目的とする。
研究方法
研究課題を遂行するために、次の4名よりなる研究グループを組織した。
服部信孝:パーキン遺伝子と既知の遺伝子産物の機能解析。田中啓二:PACノックアウトマウスの作成。部位特異的プロテアソーム欠損マウスの作成。正常parkinの局在。高橋良輔:パエル受容体の機能解析。澤田誠:神経変性疾患でのマイクログリアの毒性転換のメカニズムに関する研究。

結果と考察
1) 既にparkin KO miceでは行動学的変化は存在しないが、in vivo voltametryではドパミンの遊離低下が観察された。一方、Tg miceでは、脳に高発現すると海馬の神経脱落が観察された。
2) parkinの存在下では、PINK1の安定性が増すことがpulse chaseで分かった。変異型では、安定性は消失することが示された。
3)プロテアソームの形成に必須な分子集合因子PAC1を中枢神経特異的に欠損したマウスを作製したところ小脳の構造異常が起こり、プロテアソームの機能不全が神経変性疾患の発症に関与することが初めて判明した。
4) Pael-Rを過剰発現するトランスジェニックマウスとPael-Rノックアウトマウスを作製し、それぞれ脳内ドーパミンとその代謝産物が増加、減少したことから、Pael-Rは生理的にはドーパミン代謝に関与していると考えられた。
5) ミクログリアの毒性転換モデルの解析から毒性転換にかかわる細胞表面上のタンパク質に絞りSST-REX法を行ってTREM-2b遺伝子を単離した。
7) ミクログリアがNOを産生してグリオーマ細胞にオートファジー細胞死を誘導することを見出した。

結論
ParkinがPINK1の安定性に関与している可能性が示された。パエル受容体に関しては、生理的にはドパミン代謝に関与していると考えられた。グリアの機能解析については、前段階として脳内における機能について検討した。マイクログリアは神経保護的であったり神経毒性を示したりと二面性がある。その毒性転化に関わる候補としてTREM-2b遺伝子を同定した。またグリアの細胞死にオートファジー死が関与している可能性も示された。今後は、FPDにおけるマイクログリアの関与について検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-06-06
更新日
-