新規リードスルー惹起物質によるナンセンス変異型筋疾患治療のための前臨床試験

文献情報

文献番号
200730068A
報告書区分
総括
研究課題名
新規リードスルー惹起物質によるナンセンス変異型筋疾患治療のための前臨床試験
課題番号
H19-こころ-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田大四郎((財)微生物化学研究会 微生物化学研究センター)
  • 高橋良和((財)微生物化学研究会 微生物化学研究センター)
  • 松尾雅文(神戸大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 点変異により生じた未熟終止コドン(PTC)を薬物によって翻訳を進行【リードスルー】させ,機能的な全長タンパク質を合成させることでナンセンス変異型筋疾患を克服する試みは,有効かつ迅速な治療法として期待されている。本研究の目的は,独自のリードスルー活性解析系であるデュアルレポータートランスジェニック(Tg)マウス系統を用いて,リードスルー惹起薬物候補の特定とその投与経路や投与量の最適化を行い,ナンセンス変異型筋疾患に対する治療効果を検証することである。
研究方法
 生体内でのリードスルー活性解析における薬効評価を定量化かつ効率化するため,3種類のPTCをそれぞれ挿入したTgマウス系統を作出し,全身切片のX-gal染色から発現部位を特定した。薬物候補をTgマウスに投与し,組織抽出液のルシフェラーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性からリードスルー効率を定量した。またmdxマウスやDMD患者様由来筋細胞株を用い薬効を評価した。
結果と考察
 新規リードスルー惹起薬物候補としてネガマイシン構造類似物質から5種,擬二糖類や4-アミノ-2-ヒドロキシブチリル基で修飾されたアミノグリコシド類,カナマイシン類を特定することができた。5種の新規リードスルー惹起物質とリードスルー解析系となるTgマウスについてはPCTに基づく国際特許出願中である。化合物#2はゲンタマイシンやネガマイシンよりもリードスルー効率が高く濃度依存的な活性をもち経口投与可能である。またmdxマウスを用いた解析においても免疫染色によるジストロフィンの蓄積やCK活性の低下を認めた。安全性では体重・聴力・血清生化学検査において異常は認められず,患者様由来培養細胞を用いた効果検定においてもジストロフィン発現の促進作用を示した。
結論
 当該事業年度において,Tgマウスの確立・リードスルー惹起化合物の探索とその投与方法の検討・薬効検証を行った結果,未承認アミノグリコシド系抗性物質3種と新規リードスルー惹起薬物候補を5種特定し,そのうちの1種については経口投与が可能であること,亜急性毒性が見られないこと,mdxマウスにおいてジストロフィンの回復が見られること,DMD患者様由来培養細胞におけるリードスルー誘導効果等を確認した。今後化合物#2の安全性試験を含む有効性についての検討を進めながらリードスルー惹起薬物候補物質を可能な限り増やし新規リードスルー惹起物質の前臨床のProof-of-Conceptを確立する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-