重症筋無力症の病態解明と診断法および治療法の開発

文献情報

文献番号
200730066A
報告書区分
総括
研究課題名
重症筋無力症の病態解明と診断法および治療法の開発
課題番号
H19-こころ-一般-018
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
重本 和宏(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 老化ゲノムバイオマーカー研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 光熙(神戸薬科大学 病態生化学研究室)
  • 小西 哲郎(国立病院機構 宇多野病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗MuSK抗体の重症筋無力症の発症動物モデル解析と臨床研究から、病態メカニズムを解明して診断,治療,そして予防の研究開発を進めていく. 抗体の正確な定量アッセイシステムを開発して国内大学病院や一般病院で確定診断として結果を提供しているが、さらに病態の把握と治療、予防を目的とした診断システムを開発する. 原因不明の重症筋無力の患者群が存在することが明確になり、この病因、診断の研究も行う.
研究方法
本課題は動物発症モデルを作成して生命科学からの基盤研究と患者を対象とした臨床研究から構成される. マウス, ヒトMuSKの細胞外ドメインの分泌リコンビナント蛋白を作成した.  MuSK蛋白をウサギ、マウスに免疫して発症するのを待った. 発症したウサギの筋電図測定、筋組織形態の解析、神経筋シナプスをのAChR凝集の定量を行った. 次に抗MuSK抗体の特異性、MuSKに対する機能解析をC2C12筋細胞を使って検討した. MGの患者(SNMGとSPMG)、MG以外の患者、健常者の血清中の抗MuSK抗体値および抗AP(アルカリフォスファターゼ)抗体価をRIA法で測定と解析をした.
結果と考察
高感度かつ簡便な抗MuSK抗体測定系を確立した. SNMGの 27 %が陽性で高い力価を示した. 特異性が高く, SNMG患者MGの治療方針や予後の推定に有用に有用な血清診断学的マーカーである.  抗MuSK抗体陽性患者は、女性に多い,球麻痺,および呼吸筋麻痺がSPMGと比較して多い、クリーゼになりやすく症状も重症、胸腺腫は合併しない、といった特徴を示した. また抗MuSK自己抗体で重症筋無力症が発症することを世界で初めて動物モデルで示した. シナプスのAChR凝集は減少し、筋電図も重症筋無力症と同じパターンを示した. 患者抗MuSK抗体は圧倒的にIgG4であった.発症動物モデルの自己抗体の機能解析から、補体が関与しない 発症機構のモデルを提唱した.さらにSPMG患者で特異的に検出される新しい自己抗原(抗体)を発見してその解析を行った.
結論
我々の抗MuSK抗体測定方法はMGの臨床的予後や治療方針を立てる指標として有用である.抗MuSK抗体の重症筋無力症を発症する動物モデルの作成に成功し、その発症メカニズムのモデルを提唱した.SPMG患者で特異的に検出される新しい自己抗原(抗体)は 重症の全身型MG症で有意に検出臨床的重症化の指標となる可能性が示唆された.

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
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