文献情報
文献番号
200730059A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的問題による、精神疾患や引きこもり、自殺等の精神健康危機の実態と回復に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H19-こころ-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
- 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
- 松本 俊彦(国立精神・神経センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター)
- 中島 聡美(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
- 鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
- 松岡 豊(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
犯罪や虐待、災害、経済危機など、深刻な社会的な問題によって、精神疾患、自殺念慮などの精神健康の危機的な悪化が生じ、自力での回復や社会資源の活用、再適応が不可能となる。その実態を網羅的に調査研究する。
研究方法
World Mental Health調査データの再解析を行った。少年鑑別所に入所した男女少年と一般高校生男女について、トラウマ歴等を比較検討した。新潟県中越地震約3年後の被災認定地域在住高齢者の精神健康についての訪問調査を実施した。国立病院機構災害医療センターICUに交通外傷で入院した患者の精神健康の全数追跡調査を行った。国内外の文献から、産婦人科を中心に一般医療における性暴力被害者への支援体制を調査し、韓国等のトラウマ医療の現場を視察した。久留米大学病院で過去10年間のPTSD患者例を対象に生活状況や支援の現状を含めて調査した。
結果と考察
児童・幼児虐待、ストーカーの経験、親しい者の急死が大うつ病の発症と関連している可能性が示された。少年施設男性入所者において、9.3%に性行為を強要された体験が認められ、これは一般男子高校生の0.6%よりもはるかに高い割合であった。中越地震3年後時点の大うつ病、PTSDの有病率は、他国の自然災害による被災地域住民の有病率よりも低値であった。サブクリニカルな精神不健康状態のものは相当の割合で見られ、公衆衛生的アプローチの必要性が示唆された。交通事故で三次救急に搬送された者のうち、事故後4-6週時点において31名が何らかの精神疾患の診断基準を満たし、大うつ病(16名)とPTSD(8名)の頻度が高かった。久留米大学病院で過去10年間のPTSD患者例を調査したところ、もっとも多い出来事は交通事故であった。今後は、産婦人科や救急医療など一般医療関係者との連携が必要である。
結論
一般人口中および触法青少年におけるトラウマと、それによるうつ病症状との関連が認められた。関連新潟中越地震後の高齢者の精神医学的診断の実態が明らかとなり、今後の地域精神保健医療活動に有益な指標となり、新潟県小千谷市の健康保健センターなどを通じて成果を地域に還元している。交通事故被害者のうち、精神疾患の発症率が一般人口よりも遙かに高く、3割に上ることを見いだした。交通事故の負傷者は増加しており、精神保健医療上の重要課題であり、今後は予防的早期医療活動につなげたい。
公開日・更新日
公開日
2008-11-05
更新日
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