分子イメージングによる精神科治療法の科学的評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200730052A
報告書区分
総括
研究課題名
分子イメージングによる精神科治療法の科学的評価法の確立に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 善朗(日本医科大学精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 須原 哲也(放射線医学総合研究所分子イメージングセンター)
  • 松浦 雅人(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 加藤 元一郎(慶応大学医学部精神神経科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子イメージングの技術を用いて、①抗精神病薬・抗うつ薬の作用・副作用と受容体やトランスポーター占有率の関連を調べ、薬効の科学的評価法を確立する。②各種精神科治療法の効果と神経伝達系を含む脳機能の変化との関連を調べ、精神科治療法の奏功機転の神経基盤を明らかにする。③以上の結果から、各向精神薬について科学的な用量設定や投与回数の設定を行うことによって、より科学的な精神科治療法の開発に役立てることを目指した。
研究方法
1)新規ノルエピネフリントランスポーター測定用リガンドの定量法の開発、2)新規ドーパミンD2受容体測定用アゴニストリガンドの定量法の開発、3)下垂体D2受容体占有率と高プロラクチン血症に関する研究、4)機能的磁気共鳴撮像法(fMRI)検査用認知課題の作成と妥当性の検証、5)社会認知の神経基盤に関する研究、6)線条体外ドーパミンD2受容体と認知機能の関連に関する研究を行った。
結果と考察
1)新規リガンド(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いて、ルエピネフリントランスポーターの測定が可能になった。2)新規リガンド[11C]MNPAによってD2受容体高親和性部位の測定が可能になった。3)抗精神病薬治療中の統合失調症患者に対して、[11C]FLB457を用いて、側頭皮質および下垂体のD2受容体結合能を測定し、下垂体D2受容体占有率と血中プロラクチン値が相関することを明らかにした。今後、下垂体D2受容体占有率を指標に薬剤性高プロラクチン血症を回避することができる。4)数十ミリ秒の刺激呈示(バックワード・マスキング法)を用いて、非侵襲的に情動反応に伴う扁桃体活動の評価が可能になった。5)上側頭溝後部、前部帯状回、前頭眼窩部が社会認知に関連する神経回路であることを明らかにした。6)海馬のD2受容体が遂行機能や前頭葉機能と関連することを明らかにした。
結論
分子イメージングを用いて、抗精神病薬の下垂体D2受容体占有率を測定することによって、薬剤性高プロラクチン血症を回避するための科学的な治療法の開発が可能であることを明らかにした。また、ノルルエピネフィリントランスポーターとD2アゴニストに関する新規リガンドの開発に成功した。さらに、バックワードマスキングによる非侵襲的な情動反応測定法を確立するとともに、社会認知に伴う神経回路を特定し、海馬のD2受容体が遂行機能や前頭葉機能と関連することを明らかにした。このような測定技術を活用することによって向精神薬の薬効の科学的な評価が可能になると思われた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-