精神疾患脆弱性遺伝子と中間表現型に基づく新しい診断法・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200730050A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患脆弱性遺伝子と中間表現型に基づく新しい診断法・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 岩田仲生(藤田保健衛生大学医学部)
  • 岡本長久(国立精神神経センター武蔵病院)
  • 橋本亮太(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、統合失調症およびうつ病の脆弱性遺伝子と中間表現型という成因理論に基づく診断法・治療法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
 本研究ではゲノム付の中間表現型(神経生物学的な表現型で精神疾患のリスクに関連するもの)データの収集が最も重要な点となるが、本年度は認知機能について統合失調症100例と健常者300例、性格検査であるTCIを統合失調症100例と健常者130例、脳画像として3次元構造画像や拡散テンソル画像を統合失調症80例と健常者120例、神経生理学的指標としてプレパルス抑制テストと近赤外分光法を用いた前頭葉賦活について統合失調症80例と健常者100例を大阪大学、名古屋大学、藤田保健衛生大学で協力して収集した。これは一年目の計画を上回るものであり、大きな成果をあげたと考えられる。
結果と考察
 治療法の開発には、分子標的となる脆弱性遺伝子の同定が不可欠であるが、国外で統合失調症脆弱性遺伝子の候補と言われているG72遺伝子についての検討を行い、日本人サンプルでも統合失調症と関連することを初めて見出した。今後、この遺伝子の機能に基づく創薬に結び付けたいと考えている。
 診断法の開発においては、まず2005年にAndreasenらが提唱した統合失調症の新しい寛解の定義を用いて、収集した中間表現型で寛解と関連する因子を検討し、寛解した統合失調症患者では性格検査における協調性が高いことを見出した。次に、統合失調症患者末梢血を用いた診断法の検討においては、末梢血からBリンパ芽球を株化しその発現mRNAを遺伝子チップを用いて網羅的に解析し、4つの遺伝子発現を組み合わせる方法で、患者群のある1群については明確に判別でき、患者群の約80%を判別できることを見いだした。今後は中間表現型を加味した方法でより精度のよい方法を確立することを検討する。SPECT及び定量的心理検査を用いたリチウム反応性の予測に関する研究を倫理委員会に申請し承認を得たため、平成20年3月より開始したところである。
結論
 このように本研究は、当初の予定よりも早いペースで進んでおり、まだ予備的であるが、新たな診断・治療法のシーズとなるものが見出されている。本研究は、医療行政上、大変有意義であり、国民の保健・精神医療において多大なる貢献ができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-15
更新日
-