自己免疫疾患に伴う中枢神経障害に関連する抗神経抗体の検索と抗原機能の解析:病態の解明から治療法確立に向けて

文献情報

文献番号
200730048A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫疾患に伴う中枢神経障害に関連する抗神経抗体の検索と抗原機能の解析:病態の解明から治療法確立に向けて
課題番号
H18-こころ-若手-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
木村 暁夫(岐阜大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中枢神経障害を合併した全身性自己免疫疾患患者に対し、疾患特異的抗神経抗体の検出ならびに認識抗原の同定を行い、得られた抗原情報をもとに新たな診断および治療法を開発する。
研究方法
ラット大脳をサンプルとした二次元免疫ブロット法を用いて中枢神経障害を合併した全身性自己免疫疾患患者と健常者の血清中より抗神経抗体を検出し、高感度ナノLC-MS/MSシステムを用いてその認識抗原蛋白を同定した。さらにその抗原情報をもとにwestern blotおよびELISA解析を施行した。
結果と考察
1)広範な大脳白質病変を呈したCNSループス患者より抗Hsp60抗体を同定した。健常者と各種神経疾患患者を含む119名に対しELISAにより抗体価を測定した。Fazekas' rating scale (FRS)を用いて大脳深部白質病変を評価し抗体価との関連性を検討した。神経症状を合併した全身性自己免疫疾患患者のうち高度の大脳深部白質病変を有する群(FRS=2,3)の抗体価が、健常者群および非炎症性神経疾患患者群(FRS=0,1)の抗体価と比較し有意に高値であった。Hsp60は血管内皮細胞に発現することが知られており抗Hsp60抗体が大脳微小血管内皮細胞障害をもたらす可能性が示唆された。
2)健常者12名とCNSループス患者6名の血清を用い二次元免疫ブロットを施行した。健常者血清に反応せずCNSループス患者血清に反応したスポットを抽出し質量分析を施行した結果、合計6種類の抗原蛋白を同定した。この中のRab GDP dissociation inhibitor alpha (αGDI) に関してヒトリコンビナント蛋白を用いたwestern blotを行った。感染性髄膜脳炎患者12名、健常者12名、Psychosisのない CNSループス患者9名では抗αGDI抗体は検出されずPsychosisを呈した2名のCNSループス患者にのみ検出した。αGDIは神経シナプスに局在し小胞輸送に必要なG蛋白Rab3aのリサイクリングに関与することが知られている。今後更に同抗体とCNSループスにおけるpshychosisとの関連性を検討する必要がある。
結論
1)全身性自己免疫疾患患者において高度の大脳深部白質病変合併例では、抗Hsp60抗体価が高値である。
2)2名のpshychosisを呈したCNSループス患者血清中より、抗αGDI抗体を検出した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
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