筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子を用いた画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200730047A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子を用いた画期的治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部 )
  • 船越 洋(大阪大学医学部)
  • 加藤 信介(鳥取大学医学部)
  • 中村 雅也(慶応義塾大学医学部)
  • 青木 正志(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
34,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は神経難病でも最も苛酷な筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して肝細胞増殖因子(HGF)を用いた画期的治療法を開発することとそれに関わる基盤研究を進めることにある。
研究方法
ALSの病因研究および治療研究には変異Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)遺伝子導入ALSラットが重要な役割を果している。私共はこのALSラットを用いて運動ニューロンに対し神経栄養因子作用を有するrecombinant human HGF(rhHGF)の髄腔内持続投与でALSに対する有効性を示してきた。多くの神経栄養因子のなかでもこの様に変異SOD1トランスジェニック動物によるALSモデルに対して明確な治療効果を示したものは少なく、この有効性をALS患者に臨床応用する意義と必要性がある。しかも、臨床応用の最も可能性の高いルートとしての髄腔内投与での効果がALSラットで確認されたので、霊長類に(マーモセット)対する髄腔内投与での安全試験および容量設定を開始した。マーモセットによるALSモデルは確立されていないので、rhHGFの安全試験および臨床用量決定には慶応大学の岡野らが確立したマーモセットによる脊髄損傷モデルを用いる。
結果と考察
成体SDラットの胸髄圧座損傷モデルに損傷直後よりALSラットで有効性が確認された容量にてrhHGFを2週間にわたり持続投与したところ有意に良好な下肢運動機能回復を認めた。またrhHGF群では損傷中心部においても白質有髄線維が著明に保たれており、空洞形成も著明に抑制されていることが明らかとなった。さらにはマーモセット頸髄圧挫損傷を作製し、直後より同様にALSおよび脊髄損傷ラットモデルでの有効容量から換算したrhHGFを4週間持続投与したところ、Bar grip testおよびopen field scoring共に有意に良好な運動機能回復を認めた。さらには損傷後12週目のMRI像(T2WI)より、空洞形成ならびに異常高信号領域が左右および頭尾側、腹側背側いずれの方向にもrhHGF群で著明に縮小していることが明らかとなった。
結論
霊長類脊髄損傷に対してもラットと同じ体重比の容量で有効性が確認され、また腫瘍形成や異常行動が認められなかったことから、本治療法がヒトALSに対し有効かつ安全な治療法となり得る可能性が大きく示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
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