MR1拘束性T細胞(MAIT細胞)を介した多発性硬化症の予防と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200730045A
報告書区分
総括
研究課題名
MR1拘束性T細胞(MAIT細胞)を介した多発性硬化症の予防と治療に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 幸子(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 荒浪 利昌(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 大木 伸司(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
  • 島村 道夫(三菱化学生命科学研究所)
  • 松本 満(徳島大学疾患酵素学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MR1分子に拘束された非ペプチド抗原を認識するMAIT細胞は、消化管粘膜に集族し、腸内細菌に依存性のユニークな細胞である。MAIT細胞には多発性硬化症(MS)の動物モデルEAEの発症を抑制する作用があり(Nature Immunol 7:987, 2006)、腸内細菌、消化管免疫、自己免疫との密接な関連が明らかになって来た。近年、我が国においMSの顕著な増加傾向が見られるが、我々は、それが「生活習慣の欧米化」による「腸内細菌の偏倚」と免疫制御機構の変調に基づくものであるという仮説を提唱している。この仮説を検証することを目的とする。
研究方法
B6マウスおよびB6バックグラウンドのβ2-microglobulinノックアウトマウスを用いた。抗生物質投与実験では、腸管非吸収性の抗生物質3種類(カナマイシン 1 mg/ml、コリスチン2000 U/ml、バンコマイシン 0.1 mg/ml)を溶解した水を、7日間マウスに与えた。その後、糞便、腸間膜リンパ節(MLN)及び脾臓(SPL)を採取。糞便からはゲノムDNAを抽出し、ゲノムライブラリを作製。それをもとにアレイ(フローラアレイ)を作製し、腸内細菌叢の変化を解析した。MLNおよびSPLからリンパ球を分離し、固相化した抗CD3抗体で72時間刺激した後、培養上清中のサイトカイン量をcytometric bead array及びELISA法を用いて測定した。また細胞増殖反応は3H-チミジンの取り込みによって評価した。
結果と考察
腸管非吸収性の抗生物質をマウスに1ないし2週間経口投与すると、1)腸内細菌叢の有意な偏倚、2)腸間膜リンパ球のIL-17産生能の顕著な低下、3)糞便抗原成分のリンパ球刺激によるIL-17誘導活性の低下、4)EAEの軽症化が見られた。以上の結果から、腸内細菌偏倚によるTh17細胞の抑制が、EAEの抑制につながっている可能性が示唆された。さらに、同じ実験をβ2-microglobulin欠損マウスで行ったところ、抗生物質投与の効果は見られなかった。抗生物質投与による自己免疫疾患の修飾において、MHCクラスIb依存性T細胞(NKT細胞、MAIT細胞を含む)が、必須であることが推測された。MAIT細胞の基盤研究として、関節炎モデルに対するMAIT細胞の役割の解明、MAIT細胞のサイトカイン産生に関する研究、MAIT細胞特異的モノクローナル抗体の樹立も進めたが、成果は最終年度にまとめる。
結論
腸内細菌の変化が自己免疫疾患の発病に影響を与えることが、実験的に証明された。MSの発症増加と生活習慣の関連を考える上で意義深い。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-