骨髄間質由来筋前駆細胞と筋ジストロフィー犬を用いた筋ジストロフィーに対する細胞移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200730041A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄間質由来筋前駆細胞と筋ジストロフィー犬を用いた筋ジストロフィーに対する細胞移植治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-019
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 友子(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 中村 昭則(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 岡田 尚巳(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 出沢 真理(京都大学大学院医学研究科)
  • 鍋島 陽一(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症の遺伝性筋疾患であるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)では、原因遺伝子と分子病態の解明を受けて、治療法の開発が求められている。最近我々はNotch遺伝子とサイトカイン刺激の組み合わせによりラットおよびヒトの骨髄間質細胞を高効率に骨格筋系譜細胞へ誘導することに成功した。この細胞をDMDモデル動物であるmdx nudeマウスに移植することにより、ジストロフィンの発現が回復した。骨髄間質細胞はES細胞とは異なり患者本人から採取でき倫理的問題が少なく自家移植が可能である。また骨格筋由来の幹細胞と比べて細胞数確保が容易であること、増殖力が旺盛であることから、現時点では最も現実的な細胞移植治療と考えられる。
研究方法
ラット及びヒトで開発したNotch遺伝子とサイトカインを用いて、骨髄間質細胞から筋細胞を誘導する方法を、最も優れた筋ジストロフィーモデル動物である筋ジストロフィー犬に応用して、その有効性と安全性を検討すると共に、骨髄細胞から間葉系幹細胞を選択的に増殖させる新たな技術、間葉系幹細胞から筋前駆細胞への新たな誘導法、イヌにおける免疫抑制法、レンチウィルスベクターを用いたex vivo遺伝子治療法を確立する。
結果と考察
1)抗CD271抗体とFACSを用いて、骨髄細胞から増殖性に富む間葉系幹細胞を採取することが可能になった 2)MyoD遺伝子とアデノウィルスベクターを用いて、正常犬の骨髄間質細胞から筋前駆細胞を誘導することができた 3)治療用のマイクロ・ジストロフィン遺伝子を組み換えた幹細胞へも導入可能なレンチウィルスベクターを確立し、筋ジストロフィー・マウスモデルにおいてその有効性を検証した 4)cyclosporinとmycophenolate mofetileを用いたイヌに対する免疫抑制法を確立した 5)Dog leukocyte antigen(DLA)の検出法を樹立し、更に検討を進めた結果、DLAのmatchした実験犬を見い出した 6)DLAのmatchした正常犬骨格筋に対する間葉系幹細胞の移植実験を行ない、移植細胞の定着を確認した。
結論
最近、ES細胞、iPS細胞を用いた研究が目覚ましい進歩を遂げている。今後、本研究を進めることにより、骨格筋細胞の誘導技術、レンチウィルスベクターを用いたex vivo遺伝子治療技術、DLAが一致している場合の免疫抑制法を確立することが、ES細胞、iPS細胞を再生医療に応用する上でも極めて重要と考える。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
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