筋萎縮性側索硬化症に対する特異治療法の開発

文献情報

文献番号
200730039A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症に対する特異治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-017
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
郭 伸(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 仁志(旭川医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の運動ニューロンの細胞死の原因は、グルタミン酸受容体であるAMPA受容体のGluR2サブユニットでRNA編集が低下したことによる興奮性細胞死であると考えられる。この分子変化は編集酵素ADAR2活性の低下によると考えられるので、ADAR2活性を賦活することによる孤発性ALSの特異治療法の可能性を探る。
研究方法
1)ADAR2 活性測定のための培養細胞系の開発:ADAR2に触媒されるQ/R編集部位を含むGluR2ミニ遺伝子をヒト由来のHeLa細胞に遺伝子導入する。この細胞系(TetHeLaG2m)のADAR2 活性測定系としての有用性を、ADAR2の導入およびノックダウンにより検討する。2)ADAR2賦活物質のスクリーニング:様々な薬物を暴露後にGluR2 ミニ遺伝子転写物のQ/R部位編集率を算出し、ADAR2活性の変化を測定する。更に、GluR2 ミニ遺伝子転写物、ADAR2 mRNAを定量し、その変化の有無を検討する。3)in vivoにおける効果のスクリーニング系の開発: ADAR2の新たな基質をADAR2の免疫沈降法により探索する。モデル動物としてADAR2を運動ニューロン選択的にノックアウトする変異マウスを作成し、GluR2 Q/R 部位の編集異常、運動ニューロン死の有無を検討する。
結果と考察
1) Tet-HeLaG2m細胞が発現するGluR2ミニ遺伝子転写物のQ/R部位編集率はほぼ50%で一定であり、ADAR2遺伝子の導入、ノックダウンと平行して増減することが確かめられ、ADAR2 活性測定系として有用であることを確認した。2)20種類以上の薬物の検討から、複数の薬物にADAR2 活性賦活作用があることが明らかになり、その分子メカニズムが、ADAR2 mRNA対GluR2 ミニ遺伝子転写物比(酵素対基質量比)依存的であることを明らかにした。3)中枢神経系に豊富に発現するCYFIP2 mRNAのK/E部位がADAR2の特異的基質であることを明らかにし、ADAR2 活性をin vivoで測定するツールを開発した。コンディショナルADAR2ノックアウトマウスを開発しin vivo効果の評価システムを開発し、神経細胞死抑制作用を検討するための実験系を確立した。
結論
孤発性ALSでは、ADAR2活性が何らかの原因で低下していると考えられ、この分子異常を正常化することは特異治療法の標的になる。ADAR2 活性測定のためのin vitro及びin vivoのアッセイ系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-06
更新日
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