肢帯型筋ジストロフィー1B型の社会医学的・分子細胞生物学的研究

文献情報

文献番号
200730036A
報告書区分
総括
研究課題名
肢帯型筋ジストロフィー1B型の社会医学的・分子細胞生物学的研究
課題番号
H18-こころ-一般-014
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
林 由起子(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 野口 悟(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 松田 知栄(独立行政法人産業技術総合研究所脳神経研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
26,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肢帯型筋ジストロフィー1B型(LGMD1B)は、Emery-Dreifuss 型筋ジストロフィー(AD-EDMD)とともに、核膜蛋白質ラミンA/C遺伝子(LMNA)変異による疾患で、筋ジストロフィーに加え、心合併症によって高率に突然死をきたす臨床的に極めて重要な疾患である。ラミンA/Cは、核の維持、ゲノム情報の制御という生命現象で最も重要な役割を担うことが予測される反面、その具体的な機能は明らかでない。本研究は、LMNA変異によって生じる核の変化およびゲノム情報の破綻を明らかにし、臨床社会医学的、分子細胞生物学的にその病態を明らかにするとともに、治療法開発への手がかりを得ることを目的とする。
研究方法
LGMD1B/EDMD患者およびモデルマウス骨格筋において核の微細構造を含めた詳細な病理変化を検討するとともに、マウス骨格筋におけるgene doseの変化をarray CGH法を用いて解析した。培養細胞を用いた実験では、核の形態及び関連タンパク質の局在変化を免疫細胞染色で検討し、またヒト変異ラミンAとBAFとの親和性の差をCOS-7細胞への共発現・免疫沈降法を用いて解析した。
結果と考察
LGMD1B/AD-EDMD患者骨格筋の筋病理所見を検討した結果、筋核数の増加、大小不同の鎖状核、核の変形、クロマチンの変化、核内・核近傍の空胞形成を認めた。筋原線維の構築は変化の強い核周辺に比較的限局しており、本疾患の筋変性における核の変化の重要性を示唆した。また筋衛星細胞も筋核同様の強いクロマチン異常を呈しており、筋再生能の低下を強く示唆した。マウス培養細胞でも核形態の著しい異常とともに、核質の核外への噴出が認められた。また、これらの結果を裏付けるようにarray CGH法を用いた解析ではモデルマウス骨格筋でのクロマチンの不安定性が明らかとなった。また培養細胞で見いだされたBAFの局在異常に注目し、ヒト変異ラミンAおよびBAFをCOS-7に共発現させ、BAFとの結合能を検討した。その結果、遺伝子変異の違いによりBAFとの結合能に差のあることを明らかにした。
結論
LGMD1Bでは核膜の脆弱性に伴う核および筋衛星細胞の形態異常、クロマチンの変化、ならびに関連タンパク質の局在異常や親和性の変化が生じ、それが筋原繊維変性、筋細胞死、そして筋再生能の低下を引き起こすことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-