糖鎖の関連するニューロパチーの分子病態の解析

文献情報

文献番号
200730035A
報告書区分
総括
研究課題名
糖鎖の関連するニューロパチーの分子病態の解析
課題番号
H18-こころ-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水潤(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ニューロパチーの病態と複合糖質の関連を検討し、とくに糖鎖を標的とする免疫反応を解析した。(1)抗GQ1b抗体が高頻度にみられるMiller Fisher症候群(MFS)および眼球運動麻痺を伴うGBS (GBS-OP+)について、抗ガングリオシド複合体(GSCs)抗体に関する検討を行った。(2)同じく抗GQ1b抗体関連疾患であるBickerstaff型脳幹脳炎(BBE)について、MFSやGBS-OP+と異なり中枢神経障害をきたす要因として血清学的に何らかの特徴があるかどうかを検討した。(3)レプトスピラ症における抗ガングリオシド抗体上昇をしらべた。
研究方法
(1)MFS、GBS-OP+、眼球運動麻痺を伴わないGBS(GBS-OP-)を対象として抗ガングリオシド抗体および抗GSCs抗体を測定した。(2)抗GQ1b IgG抗体陽性のBBE、MFS、GBSにつき、PAとGQ1bの混合抗原に対する抗体測定、および抗GSCs抗体測定を行った。(3)抗ガングリオシド抗体陽性のGBS血清につき、レプトスピラ感染の血清学的検査を施行した。またレプトスピラ感染患者血清中の抗ガングリオシド抗体を測定した。研究は各施設の倫理委員会の承認を受けた。血中抗体測定では患者本人へ十分に説明を行い、文書で同意を得た。プライバシーの保護には十分に配慮した。
結果と考察
(1) MFSおよびGBS-OP+は、抗体活性にもとづき、(a)GQ1bあるいはGT1a単独に特異性をもつ抗体陽性、(b)GQ1b/GM1などの複合体(糖鎖末端のシアル酸が2個)に対する抗体陽性、(c)GQ1b/GD1aなどの複合体(糖鎖末端のシアル酸が3個)に対する抗体陽性、の3群に分類できた。また抗体の反応特異性が臨床症状とも関連することが示唆された。(2)BBEでは、PA添加で抗体活性の増強する症例の比率および抗GSCs抗体陽性率が、GBSやMFSと比較して低かった。BBEにおける抗GQ1b抗体は、GQ1bそのものに強く反応しGQ1bの糖鎖に対する特異性が強い抗体であると考えられた。(3)抗ガングリオシド抗体陽性のGBS血清はMCAT法で陽性例が多かった。またレプトスピラ感染血清で抗ガングリオシド抗体が高率に検出された。レプトスピラ菌体内に抗ガングリオシド抗体と交差反応する抗原の存在が示唆された。
結論
MFSおよびGBS-OP+は、GQ1bおよびそれを含むGSCsに対する血清の反応性から3群に大別される。GQ1bに対する特異性の高い抗体の上昇が、BBEの発症に必要である。レプトスピラ感染の病態に、抗ガングリオシド抗体の関与の可能性が考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
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