難治性うつ病の治療反応性予測と客観的診断法に関する生物・心理・社会的統合研究

文献情報

文献番号
200730028A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性うつ病の治療反応性予測と客観的診断法に関する生物・心理・社会的統合研究
課題番号
H18-こころ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山脇 成人(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森信 繁(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
  • 岡本 泰昌(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
  • 稲垣 正俊(国立精神・神経センター精神保健研究所 自殺予防総合対策センター)
  • 竹林 実(国立病院機構呉医療センター )
  • 中村 純(産業医科大学)
  • 小澤 寛樹(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 久住 一郎(北海道大学 大学院医学研究科神経病態学講座)
  • 寺尾 岳(大分大学 医学部)
  • 三村 將(昭和大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 うつ病の難治化予測と客観的診断法を確立することを目的に、多施設共同研究として、未治療大うつ病患者を対象に、難治化因子と想定される心理社会的要因、生物学的マーカー測定、海馬機能などの脳画像解析を実施し、標準的薬物治療への反応性を前方視的に評価し、難治化に関連する因子を抽出した。後方視研究として、難治性うつ病患者に関する心理社会的、生物学的、脳器質的要因を解析するとともに、治療抵抗性うつ病に対する治療法を検討した。また、難治性うつ病の病態に関する生物学的検討も行った。
研究方法
 多施設共同前方視研究として、平成19年12月までに登録された48例のうち、脱落例10例を除き、現在までの抗うつ薬による反応性が同定された25例を対象に、NEO-FFIによる性格傾向とETIによる幼少期トラウマ体験の解析を行った。後方視研究として、異なった種類の抗うつ薬2剤以上の治療にて反応の得られなかった難治性うつ病45症例を対象に、難治化要因について解析した。また、難治性うつ病患者の神経栄養因子 (BDNF,GDNF)の血中濃度およびfMRIを用いた脳機能画像解析を行い、難治性うつ病の病態に関して検討した。
結果と考察
 前方視研究では、1)脱落群ではNEO-FFIによる神経症傾向の亢進・外向性の低下が認められ、2)幼児期のトラウマ体験は脱落群では多く、非反応群では少ないなどの中間結果が得られた。さらに未治療うつ病症例を増加し、統計解析に必要な症例数を集積中である。後方視研究では、1) 潜在的双極性障害の存在が、うつ病の難治化予測因子となりうる可能性が示唆された。2) 精神病像を伴う難治性うつ病に対して、非定型抗精神病薬追加により39%が治療反応を示した。3) 精神運動抑制を主とする難治性うつ病に対して、ドパミン作動薬追加により50%の治療反応を示し、大脳基底核機能障害との関連性が示唆された。4) 難治性を示す脳血管性うつ病のアパシーは、大脳基底核の脳血管病変と相関していた。5) うつ病のアパシーに報酬予測機能異常が想定され、脳内ドパミン・セロトニン機能の関与が示唆された。病態研究では、うつ病の難治化に中枢のBDNF機能やドパミン機能の異常が関与し、再発脆弱性には前部帯状回の機能異常の関与が示唆された。
結論
 うつ病の難治化に関連する因子として、幼少期のトラウマ体験、潜在的双極性障害、脳血管病変、ドパミン機能やBDNF機能の異常などが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
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