司法精神医療の適正な実施と普及のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200730027A
報告書区分
総括
研究課題名
司法精神医療の適正な実施と普及のあり方に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小山 司(北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学)
  • 角野 文彦(滋賀県東近江保健所)
  • 岩波 明(埼玉医科大学精神医学教室)
  • 松原 三郎(医療法人松原愛育会松原病院)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構 東尾張病院)
  • 山本 輝之(明治学院大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は司法精神医療の適正な執行と普及にある。心神喪失者等医療観察法(以下、医療観察法)が施行され、司法精神医療がわが国で本格的に展開され始めた現在、その適正な運用のための方策と全国的な普及のあり方を基礎的及び実践的観点から継続的に研究する必要性は極めて高い。医療観察法はわが国独自のシステムでもあり、その土台となる基盤整備を、わが国実情に照らして早急かつ精密に行う必要がある。
研究方法
今年度は昨年度の結果を踏まえ、以下の分担研究を行った。①司法精神医学に関する一般精神科医の意識と参画の実態の把握。②医療観察法の運用に関連した市町村の関わりと役割・課題の検討。③司法精神医療の一般国民への理解と普及の問題点をジャーナリズムも含めて検討。④通院処遇者に対する治療プログラムの開発および通院事例の検討、指定通院医療機関からみた運営実施上の問題点に関する検討。⑤精神保健判定等養成研修会の改善点の提言および不処遇事例の考察。⑥わが国と共通点の多いドイツ刑法の改善保安処分の学際的検討。それぞれアンケート調査、文献調査、視察などの方法による実態把握を行い、さらに研究会やシンポジウム、パネルディスカッション等の開催を通じて個別の事例検討や問題点の議論を行った。これらにより、課題の抽出と今後の具体的提言およびその方策を考察した
結果と考察
それぞれを集約すると、第一に、司法精神医療に携わる人材の育成が大きな課題であることがあげられる。卒前・卒後教育から、司法精神医療専門医の養成に至るまで一貫した教育・研修プログラムによって、一般の精神科医がより司法医療に携わりやすいようにしていく配慮が必要と考えられる。第二に、通院医療に必要な基盤の未整備があげられる。治療プログラムの構築や社会復帰施設との連携のあり方など様々な具体的課題を運用改善に反映させるとともに、リスク評価の方法に関してもさらに検証し、洗練する必要が考えられる。また、そのためには単に社会資源や制度の充実だけでなく、地域を構成する一般市民や行政機関の意識変革や役割の明確化も必要である。
結論
以上を踏まえ、今後さらに司法精神医療の質を高め、より有機的な連携が行えるよう、各関係者・機関に対する研修システムを強化し、啓発啓蒙を進めるための具体的方策・仕組み作りへの提言を行っていく必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
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